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魔術学校の糸使い  作者: タカノ
入学編
20/43

vs.エプスタイン Ⅰ 鋼化帝国の襲来

 

 ヴラドさんが言うと同時に、青糸を展開。

 エプスタインの出方を待つが、奴は棒立ちのまま動かない。


「こねえのか? 」

「初手は譲ろう」


 笑みを浮かべたまま奴は言う。

 舐められたもんだぜ。


「んじゃ、遠慮無く」


 俺は青糸に魔力を注入する。

 俺の糸は魔力を与える事で、強度や硬度、射程などの性能が上昇する。

 俺は魔術を使えないから、魔力を惜しみ無く糸の強化に使える訳だ。


「おらよっ! 」


 束ねた青糸を降り下ろす。

 エプスタインは横っ飛びで躱し、俺に手をかざす。


魔術教典(グリモワール)99章《岩狼(フェルゼン・ヴォルフ)》」


 空中に岩が出現。

 それはボコボコと音を立てながら巨大化し、狼の形になった。


「行け」


 エプスタインの言葉で、狼が俺に 向かってくる。

 俺は赤糸を出し、腕を振る。


「失せろ。犬っころ」


 岩の狼は真っ二つ。

 形が崩れた事で、岩は消え失せる。


「ヒル・ピストリウスの言っていた通り、貴様の力は糸か」


 俺は青糸を鞭の様に振り回し、エプスタインに叩きつける。

 しかしそれは、奴の周りに発生した風に遮られた。

 風属性か。

 俺は糸を引っ込め、駆け出す。

 肉弾戦と行くぜ!


「おらぁっ! 」

「ちっ! 」


 渦巻く風を突き破り、飛び蹴りをかます。

 奴はそれを片腕でガード……出来ると思ってんのか?


「ぐっ!? 」


 奴は素早く、飛び退く。

 顔を歪め、俺の蹴りを受けた左腕を押さえている。


「もうちょっと退くのが遅かったら、折れてたぜ」

「貴様ぁ! 」


 奴は右手の人差し指を空に向ける。


魔術教典(グリモワール)210章《降雷(サンダーボルト)》!」


 空に雷雲が現れ、雷が落ちてきた。


「ちっ! 」


 飛び退いて回避。

 奴は風の刃を飛ばし、追撃を仕掛けてくる。


「喰らうかよ! 」


 青糸で振り払い、そのまま奴にぶつける。


「がっ! 」


 舞台の下にぶっ飛ぶエプスタイン。

 追撃しても良いが、俺は動かず奴が立ち上がるのを待つ。


「どういうつもりだ? 」

「あ? 何がだよ? 」

「何故、追撃しない? 」


 スーツについた砂埃を払いながら言うエプスタイン。

 顔を不愉快そうにしかめている。


「別に。いつでも倒せるからな」


 舌を出して挑発する。

 すると奴は、眉間に深く皺を刻み、右手を俺にかざす。


「静寂は永眠への子守唄

 囲われ 覆われ 息絶えろ

 魔術教典(グリモワール)584章《真空領域(ヴォート・スパーツィオ)》」


 奴が魔術を発動するのと同時に、闘技場が静まりかえる。

 何だ?

 観客席を見回す。

 ベイを見たら、口を大きく開いて何かを叫んでる。

 だが、何も聞こえない。

 どうなってる?


「お前の周囲は真空状態になっている」


 エプスタインの言葉が聞こえる。

 いや、聞こえるというより脳内に響いてる様な感じだ。


「その中にいる間、声は通じない。術者である私を除いてな」


 エプスタインを見ると、勝ち誇った顔をしてる。

 これが何だってんだよ?


「真空空間では体内の血液中の窒息が気化し、呼吸困難など様々な障害を引き起こす! 持って1、2分だ! 右手を挙げれば降参と見なし、解除してやる! 」


 俺はその言葉を聞き、両手で喉を押さえ、跪く。

 脳内にエプスタインの高笑いが響く。


「どうした? 右手を挙げろ! 」


 催促する様に言うエプスタイン。

 心なしか、焦りの感情が見える。

 真空空間とやらに閉じ込められて、1分程。

 俺はずっと跪いている。

 すると、エプスタインは舌打ち。


「往生際の悪い奴だ」


 吐き捨てる様に言うと、音が戻ってきた。

 術が解除されたみたいだ。

 ベイの馬鹿デカイ声が聞こえる。


「ふん! さっさと右手を挙げれば良いものを……。まぁ、良い。終わりだ」


 エプスタインがゆっくりと近づいてくる。

 俺はまだ跪き、顔を伏せてるから見えないが、きっとニヤニヤしてるんだろう。


「さようなら、ニコラス・ギルクリスト」


 エプスタインが目と鼻の先まで来る。

 今だ!


「キェェェェェェェェェェッ!! 」

「がっ……はっ!? 」


 気合いの掛け声をあげ、どでっ腹に拳を打ち込む。

 さらに、驚愕に染まっている顔面を、


「どっせい! 」

「ぶ!? 」


 右足で蹴り飛ばした。

 エプスタインは舞台の外へ吹っ飛び、地面を転がる。


「良いぞ~ニコ~! 」

「ニコラス君~! 」


 ベイとセリーンの声が聞こえたので振り向き、親指を立てる。


「ぐっ……く……くそっ! 」


 ゆっくりと立ち上がるエプスタイン。

 垂れてきた前髪を整えながら、俺を睨みつけてくる。


「どうなっている!? 何故、真空空間で平気なんだ! 」

「あ? 知るかよ。大体、真空空間って何? 」

「このっ! どこまでもふざけた奴だ! 」


 エプスタインが手をかざすと、竜巻が発生。

 それは砂を巻き込み、砂嵐と化して俺に襲いかかる。


「けっ」


 俺はポケットに手を入れ、意思のみで赤糸を動かす。

 四方八方から砂嵐に斬撃をいれて霧散させた。


「おのれぇ! 」


 お次は無数の風の砲弾。

 俺は青糸を丸め、全て防ぐ。

 手はポケットに入れたままだ。


「ポケットから手を出せ! 」

「出させてみなよ」


 冷ややかな笑みを浮かべて俺が言うと、エプスタインは怒りで顔を赤く染める。


「そうか……。そこまで無惨に散りたいかニコラス・ギルクリストォ! 」


 エプスタインは両手をバッと広げ、空を仰ぐ。


固有魔術発動(オリジナルズインヴォーク)――鋼化帝国の襲来(メイー・フォルティッシムス・インペリウム)


 奴が術を発動させるのと同時に、地面と舞台が銀色に染まる。

 そして俺の足元からは、


「吹き飛べ! 」


 巨大な鉄柱が飛び出してきた。

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