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魔術学校の糸使い  作者: タカノ
入学編
12/43

vs.シリウス Ⅱ 虹色の弓兵

 

 降り注ぐ矢を、舞台から飛び退いて躱す。

 矢は舞台に突き刺さると同時に破裂。

 爆発し、周囲に炎やら何やらが撒き散らされる。


「何だこれ……」


 俺がそれをぼけ~っと見ていると、シリウスの馬鹿が笑う。

 距離があるからなのか、俺に聞こえる様に気持ち大きめで笑ってる。

 健気な奴だ。


「これが俺の固有魔術(オリジナルズ)だ! 」


 自慢気に言うシリウスの周囲には6色の矢が、俺に矢先を向けて浮かんでいる。

 色は赤、橙、黄、緑、青、紫。

 虹だな。


「赤はマグマ、橙は炎、黄は雷、緑は酸、青は水、紫は毒。それらを纏った矢を生み出す。それが能力だ! 」


 ベラベラと手の内を明かすシリウス。

 まぁ、わざわざ説明されなくても見れば大体分かるがな。


「塵すら残さず消えろ! 」


 周囲に従えていた矢を一斉に射出。

 俺は赤糸を展開し、1本残らず叩き斬る。


「当たるかよ、馬~鹿」

「舐めんなっ! 」


 シリウスが叫ぶと、再び矢が出現する。

 しかし、今までとは数が違う。

 さっきの2回は10本くらいだったが、今のは50本くらいある。


「何本出せるんだ? 」

「何本でもだ! 」


 50本近い矢が一斉に飛んでくる。

 俺は腕を数回振り、赤糸で叩き斬る。


「いつまで、持つかなぁ! 」


 シリウスは次々に矢を生成し、放ってくる。


「埒が明かねえ」


 俺は青糸を10本展開。

 それで飛来してくる矢を絡め取る。


「返すぜ! 」

「あ? 」


 そのまま、矢をシリウスに投げ返す。


「―っ! 」


 シリウスは俺に向けて放つ予定だっただろう矢を、俺が投げ返した矢にぶつけ、相殺する。

 矢同士が衝突し、爆発が起きる。

 俺はそれに隠れるようにして、シリウスに青糸を伸ばし、


「ぐえっ!? 」


 再び、首に巻き付けた。


「で、でめぇっ……! 」


 ゆっくりと、持ち上げる。

 シリウスは顔を歪める。


「どうした? その状態じゃ、矢出せねえのか? 」


 挑発すると、すぐさま矢を生成して飛ばしてくる。

 それを避け、腕を引っ張る。


「おらよっ! 」

「ぐっ!? 」


 俺は糸を引っ張りながら回転。

 それによってシリウスも、観客席の椅子に身体をぶつけ、椅子を破壊しながら回る。


「がっ! て、てめっ! やめっ! やめろぉ……がっ! 」


 ズガガガガッ! って音を出しながら、シリウスは観客席を1周。

 青糸を首から離し、地面に叩きつけた。


「がっ……ふっ……! 」


 よろよろと立ち上がるシリウス。

 制服は至るところが破れ、身体も傷だらけだ。


「く……そ……がっ! 」

「意外とタフだな」


 口笛を吹いて言うと、シリウスはキッと俺を睨む。


「てめぇは……マジで……マジで殺す……」

「そんな状態で良く言えるな」


 溜め息混じりに答える俺。

 しかしシリウスは何も言わず、弓矢を構えるようなポーズを取る。


「何だ? 」

「俺の最強の技をお見舞いしてやる」


 そう言うシリウスの手に、虹色の弓と矢が出現する。

 きりきりっと弓を引き、今にも俺を射殺そうとするようだ。


「面白ぇ。来いよ」


 俺は赤糸を大量に出し、束ねる。

 極細の糸も、無数に束ねられる事ではっきりと見える様になる。


「俺のは最強の技でも何でも無えけど。まぁ、ちょうど良いだろ」

「舐め腐りやがって……」


 俺は束ねた糸を、シリウスは虹色の弓を構え、静止する。

 シリウスの荒い息遣いが聞こえる。

 強がっちゃいるが、さっきのダメージはやっぱり大きいみたいだ。

 これが、最後の1撃になるだろう。

 シリウスがゆっくりと、弓を引く。


「死ね」


 冷たい声で、シリウスが呟く。

 その瞬間、同時に攻撃を放つ。


天の弓兵・虹の裁き(アルクエル・イリデメント)

「おらぁっ! 」


 虹の矢と、赤い糸の斬撃が衝突する。

 凄まじい轟音が響き、暴風が巻き起こる。

 俺にダメージは無い。

 虹の矢は、俺には届かなかった。

 俺の糸は……


「はぁっ! はぁっ! はっ……ぐふっ……! 」


 届いていた。

 シリウスの右肩は、派手に切り裂け、血が流れている。

 そこを左手で押さえ、痛みに耐えているみたいだ。


「勝負ありだ」

「クソっ! てめぇは……何もんなんだよっ……! 」

「何もん? 双子の兄貴も忘れちまったか? シリウス」


 シリウスは目を見開く。

 口がわなわなと震えてる。


「お前……まさか、ニコラス……か? 」

「そうだ」

「な、何でここに……」

「学校に通っててもおかしくは無いだろ」

「お前はっ! お前は魔術が使えないだろっ! あの糸は何だっ! 」


 肩を押さえるのも忘れて、叫ぶシリウス。

 俺は右手の甲を、シリウスに見せる。


「何だ……それは……」

「アリアドネ――お前が殺した俺の友達が、俺にくれた力だ」

「は……はっ! あの蜘蛛が? あり得ない! ただの蜘蛛だ! 」

「違う。アリアドネはただの蜘蛛じゃない。人間の言葉を理解し喋れる」

「それはお前の妄想だ! お前以外誰も、あの蜘蛛の声なんか聞いてない! 妄想だ! お前が孤独のあまり作り出したなぁ! 」

「じゃあ、この糸は何だよ。これも妄想か? お前の首を絞めるこの糸も」

「がっ! ぐっ……えっ! 」


 青糸でシリウスの首を絞め、持ち上げる。


「何でアリアドネを殺した? 」


 俺の問いに、シリウスは答えない。

 良く見たら、気を失ってる。


「ちっ。軟弱が! 」


 吐き捨て、シリウスを落とす。

 すると、急に疲労が襲いかかってくる。

 もう帰って寝よう。

 そう思うが、こんだけ派手に暴れといて誰にも気づかれてない訳が無かった。


「何だこれは! 」


 闘技場の入口付近から男の声が聞こえる。

 振り向くと、そこにいたのはスーツを着た、金髪オールバックの男。

 あれは確か……A組――つまり、シリウス達のクラスの担任だ。

 名前は忘れた。

 その後ろには、フェルガス先生もいる。

 先に、気絶して倒れてるヴラディミール達を見つけた先生は「良かった。俺のクラスの生徒じゃない」みたいな感じで安堵の表情を浮かべていた。

 だが次の瞬間、倒れているシリウスの前に立つ俺を見ると、一転して絶望的な表情を浮かべ、膝から崩れ落ちた。


 あぁ……。

 何だか凄く、面倒な事になりそうだ。

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