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魔術学校の糸使い  作者: タカノ
入学編
10/43

vs.ヴラディミール

 

 俺が指を動かすと、それと同時にマッチョが浮かぶ。


「なん……!? 」


 驚愕し目を見開くシリウス達。

 俺は右手をぐいっと引く。

 それによりマッチョは舞台に引っ張られる。


「何を……した……? 」


 聞き取り辛い声でマッチョが言う。

 がたい良いくせにぼそぼそ喋るんじゃねえよ。


「さぁな」


 誰が教えるか馬~鹿。

 マッチョはそれ以上は何も言わず立ち上がる。

 そして、右手をかざす。


「くら……え……」


 そこから土の砲弾が発射される。


「けっ」


 俺はそれを思いっきり蹴り砕く。


「こんなん効くと思ってんのか?あ? 」


 挑発するが、反応しない。

 こいつ見た目と性格に差がありすぎる。


「ヴラディミール! 手加減する必要はねえぞ。叩き潰してやれ」


 シリウスの馬鹿が言う。

 ヴラディミールってこのマッチョか。

 手加減してくれてるらしい。

 笑えるぜ。

 ヴラディミールとやらはシリウスに頷きを返し、浅く息を吐く。

 そして、


固有魔術発動(オリジナルズインヴォーク)―――獰悪牛皇(マイノーター)


 そう小さく呟いた。


「何じゃそりゃ……」


 思わず呆ける。

 術を発動した途端、奴の身体はぼこぼこと膨れ上がった。

 顔は完全に人間のソレから逸脱し、頭には2本の角。

 1言で言えば、2足歩行の牛だ。

 顔はえらく凶悪だが……。


「ブルルァァァァッッ!! 」

「うおっ!? 」


 いきなり咆哮しやがるもんだから、ビクッとなっちまった。

 身体だけじゃなく声も大きくなってるらしい。


「ブルァ! 」

「おっと」


 猛スピードで距離を詰め、右ストレートを繰り出してくる。

 それを半身で躱し、


「おらっ! 」


 右の脇腹に蹴りを入れる。


「グッ……ラァァァッッ! 」

「おいおい」


 怒ったのか、太い腕を無軌道に振り回してくる。

 様子を見ようと、距離を取ると、デカイ斧を取り出しやがった。


「どこから出した? 」


 ヴラディミールは答えない。

 とゆうか、こいつ喋れんのか?


「その斧はなぁ、不治の傷を負わせる。かすり傷でも血が止まらず、致命傷になるぜ! 」


 何故かシリウスが自慢気に言う。


「ご丁寧にどうも。当たらなきゃ良い話だ」


 斧を持ったヴラディミールが斬りかかってくる。

 あらゆる角度、方向から何度も斧を振るってくるが、俺には当たらない。


「スピード落ちてんぞ? 」

「ブルァ! 」


 水平に繰り出される斧を、素手で受け止める。

 驚愕の声をあげるヴラディミール。

 隙だらけの腹に、すかさず蹴りを叩き込む。


「ブラァァァァァッッ! 」


 吹き飛ぶヴラディミール。

 斧は手から離れ、観客席まで飛んでいった。


「ヴラディミール! しっかりしろ! 」


 シリウスに怒鳴られ、すぐ立ち上がる。

 従順な奴だ。


「ハァ……ハァ……」


 ヴラディミールは息を整えると、頭を下げる。

 何だ?

 今更謝っても許さんぞ。

 そんな事を思ってたら、2本の角の間に赤い球体状の光が発生。

 あれって、まさか……


「ブルルァァッッ! 」


 球体状の光は極太の光線に変わり、俺に射出される。


「ちぃっ! 」


 右手を突きだし、何とか止める。


「ビームはねえだろ! ビームはぁぁ! 」


 そして、そのまま握り潰す。

 その瞬間、爆発。

 轟音が鳴り響き、煙が発生する。


「あ、アレを素手で防いだだと……? 」


 煙の外から、シリウスの震えた声が聞こえる。


「ブルルァァ! 」


 ヴラディミールは自棄になったのか、煙もまだ晴れない状況で突っ込んでくる。

 2本の角を突きだし、4足歩行でだ。


「はっ! やっと牛らしくなったなぁ! 」


 俺もヴラディミールに向かい走り、2本の角を掴む。

 そして、その勢いのままに観客席にぶん投げた。


「ブルァッッ! 」


 派手に突っ込むヴラディミール。

 しかし、すぐさま立ち上がり舞台に復帰してくる。


「ハァハァハァ……ハァ……」


 酷く息が上がっている。

 そろそろ限界みたいだ。

 後、1、2発ブチ込みゃ終わりだな。

 そう思い見ていると、ヴラディミールはブルブルと震えだす。


「何だよ? 小便か? 」


 からかい気味に言うが、答えない。

 まぁ、それは分かってる事だが。


「馬鹿が。もうお前は終わりだ」


 ヴラディミールの代わりにシリウスが答える。

 これも分かってる事だ。


「そりゃ良いね。俺も飽きてきたとこだ」

「ふんっ」


 シリウスは不愉快そうに鼻を鳴らす。

 だが、その顔にはどこか余裕がある。

 奴の視線はヴラディミールへ。

 俺はそれを追う。

 そこには……


「は? 」

「ブルルッ……ッッアッ……ブルルルルルァァァァァァッッ! 」


 どんどん巨大化していくヴラディミールがいた。


「おいおい……」


 ヴラディミールの巨大化は高さ10メートルくらいでストップした。

 首を上げる。

 痛い。


「ブルルァ……」


 ヴラディミールの口からは蒸気みたいな息が漏れる。


「不治の傷を負わせる斧にビームに、最後は巨大化か。盛りすぎだろお前」


 溜め息混じりに言うが、あいつの耳はこっから10メートルくらい上にある。

 聞こえちゃいないだろう。

 まぁ、聞こえてても会話は成り立たないんだけど。


「ブルッちまったかぁ? おい? こうなったらもうお終いだぞ! やれ! ヴラディミール! 」

「ブルルァァッッ! 」

「ハハハハッ。潰れろ! ハハハハ……」


 はぁ。

 俺は浅く息を吐き、遥か上から降り下ろされる拳を見つめる。

 それが今にも俺を潰してしまいそうな所にまで来る。

 その瞬間、俺は鋭く右足を振り上げた。

 俺の右足と、奴の右の拳が激突。

 その結果、奴――――ヴラディミールは上空に吹き飛んだ。


「ハハハハ……ハァァァァァァァァァァァッッ!? 」


 高笑いを一転、驚愕の叫び声に変えるシリウス。

 口をあんぐりと開け、空に浮かぶ巨大な牛人を見つめている。

 しかし、いつまでも浮いてはいない。

 重力に従い、下降する。

 シリウスに向けて。


「うぉぉぉぉぉっ!? 」


 自分の所目掛けて真っ逆さまに落下してくるヴラディミールに焦るシリウス。

 俺がそれをニヤニヤと眺めていると、奴はそれに気づいたのか、取り乱すのをやめて平静を装いだす。

 もう遅いわ馬鹿め。

 奴は右手を上空にかざし、


魔術教典(グリモワール)第3章《衝風(チョケ・ベンダバル)》」


 突風を発生させる。

 それにより、ヴラディミールは再び上昇。

 術が消えると、再び落下を始めるが、さっきより速度が落ちている。

 シリウスはそこから更に魔力で生成した風を使い、ゆっくりとヴラディミールを下ろす。

 気絶してんのか、魔術は解けて人間の姿に戻ってる。


「器用だねぇ」


 ヴラディミールを地面に下ろしたシリウスに、口笛を吹きながら言う。

 奴は睨むだけで、何も言わない。


「後はお前だけだぞ、大将」

「上等だ、てめぇ……」


 シリウスがゆっくりと舞台に上がってくる。

 しばしの静寂。

 奴がゆっくりと、右手の人差し指を向けてくる。


「……消えろ! 」


 そこから、熱線が放たれた。

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