対戦者を選んでください(選べるとは言っていない)
「じゃ、折角だし、対戦してみようか。」
「対戦しましょう、そうしましょう!」
ノリノリなナタさんが同意してくれた。そうい えば、不可思議なことが起こり過ぎて、ナタさん自体を気にするのを忘れていた。なんだろう 、電脳世界のオペレーターといわれればしっくり来ることは間違いない。なんて言えばいいのかな… 生体的な部品に機械的なエフェクトをつけたような…こういうアバター的要素もあるのだろうか。それにしても表情も豊かだし、服装を着こなすスタイルの持ち主、というのが感想だった。モブ キャラではないのだろうけれど。キャラクターにしては気合が入りすぎな気もする。NPCが全員このレベルだとしたら、キャラ好き出続けている人とかもいていいな。そういう意味でも 、このソーシャルなゲームは人気を得ていると いうことだろう。
「どうしたんですか?私を見て…まさか!惚れてしまいました?」
むふー!とドヤ顔するオペレーター。なんだろう、凄いおちょくりたい。
「うん、そう。大好きです、ナタさん。」
「えっ?!」
「冗談です、ごめんない。」
「…」
ごぉぁ!無言でナタさんが何かを投げつけてきた。常人の反射神経しか持たないオレは無様に直撃してしまう。顔が赤いですよ、ナタさん。まんざらでもなかったのでしょうかね。こんなことするから、友達は出来ても彼女は出来ないとか言われるんだよ!何度も失敗してるじゃん !とりあえずまじめに?謝ってみる。いでよ、社会人必殺技2平謝り!
「ごめんごめん、ごめんなさい。」
「もう!次はありませんからね!」
意外と早く許してくれた。顔ほど怒ってはいないのかな?どうも女性の機微には疎いよ。とりあえず、さっきの検索コンソールとは違う場所へ手招きされる。そこには、大きな画面と操作部からなる対戦用コンソールであろうものがあった。
「それでは!最終説明をしましょう。ここで、戦闘相手を検索するのですが…実は、4000万人イベント発生まで2週間前となっています。この2週間で、カードの強化と、運営的には違反者の排除ですね!」
「そんなことまでしてるんだ、大変…って、あれ?つまり、それはオレもその排除に借り出される流れ…?」
しかも、このタイミングということは、ほぼ間違いなく対戦での決着と言うことだ。
「えっと、つまりチートキャラクターとたたかえ、ということ?それって、普通に勝てなくないですか?」
「えっと、それは戦ってみればわかりますよ?フフ、自信を持ってください、クロック様は現時点でチート公認キャラだ、ということを!」
いやそれってどうだろう、いいのかな…まぁ、負けても実害はないのであれば…とつぶやくと、それはもう!と喰い気味に言ってきた。負けても今回排除できないだけ、相手はどの敵に負けてもログイン不可とアカウント停止のバッドエンドテロップという筋書きになっているらしい。わざわざそういう専用テロップまで用意している事で、実は捨てアカウントを作ってわざとアカウント停止になるひとが少なからずいるようだ。実際動画サイトにも非公式でアップロードされていますよ?とナタさん。
「まぁ、別に今回の対戦相手セレクションは、カード自体を強化している訳ではないので!」
「そうなの?」
「はい!今回はあれです外部の通貨や円で希少カードをやり取りするえーっと…」
「RMT?」
「さすがお詳しい!」
「いや、そういうのはいいから。」
「誉めがいないですねー。まぁそのRMAをやっている人達になります。」
なるほど。カードの質は良いけれど『良い』止まりと言うわけだ。なんとかはなりそうに聞こえる。
対戦者リストを選んでいく。RMAならレベルは参考にならないか。けれどレベルが高い人なら戦闘もこなせる人の可能性がある。手頃にあまり勝ち星の少ない相手を選ぼう。最低勝ち星は3勝の『レアカード買います』という名前。運営を見下すネーミング。戦闘決定ボタンを押す。
「さぁ!終わらない戦闘の円舞を貴方が踊れますように!御武運を!!」
もう、この光にもなれたな、と思いながら光にのみこまれる…。