番外編~とある王子の日記
○月×日
今日は父が皆の反対を押し切って異世界人を召喚してしまった
仕方ないので僕も一応儀式に立ち会ったのだけど…
その…召喚された異世界人を見て、思わず、父にこの時だけ感謝をしてしまった
召喚された人はエルフだった
僕はエルフは初めてみたけど…美しかった…
窓から入ってくる風に吹かれサラサラと流れる銀糸の髪
見ていると吸い込まれそうになる蒼い瞳
中性的でありながらどこか女性らしさを感じる顔
服からのぞくまるで焼ける事を知らない白い肌…
はっきり言って僕は彼女に見とれた
彼女は召喚された後、閉じていた目を開けて周囲をゆっくりと見た後、父を見た
まるで父を見定めるように
父に言葉がわかると答えた時の声は、男にしては高く、女にしては低い
そう、心地よい高さの声だった
女性で高くない声を聞く事なんてめったにないから思わず聞き惚れてしまった
とりあえず彼女を一度客室へ案内するように兵士に言いつけた後、暫くして、父が彼女を呼びつけた
彼女は兵士に連れられてやってきた時
部屋へ入って父を見て僅かに目を細めた
ああ、父の醜い考えがわかってしまったのか
その証拠に父が話す間彼女は一言も言葉を発しなかった
ああ、兄と父を見る瞳には嫌悪が込められている
僕まで彼らと一緒だと思わないで欲しい…
父達が部屋からいなくなった後、僕と母、妹の三人で彼女に頭を下げた
彼女は僕達の事は嫌っていないのか、自己紹介を求めてきた
いつもより緊張しつつ自己紹介をすると、彼女は頬笑みつつ名乗ってくれた
お互いに自己紹介をして、楽に話して貰うように母が言った後、彼女は言った
この国の…今回の召喚の本当の理由を…彼女は知っていたのだ
情報源を聞いてみると、どうやらすでに精霊と契約を果たしたと言うではないですか
精霊と契約をするのは、まず第一に精霊に気にいられなければならないのに…
さすがミストさんです
彼女は精霊の事を考えているのか顔には穏やかな笑みを浮かべている
どうやったらその笑顔を僕に向けてくれるのだろうか…
どうやら母は僕のこの気持に気付いたようで、僕にチャンスをくれた
それは彼女の専属の護衛であり、旅の仲間になる…と言う事
母には感謝してもしきれない
その上2人だけで話す時間までくれるなんて…
ああ、僕の母上が母上で良かった…
彼女と2人で話すために部屋を移動して、とりあえず、お茶を入れてみた
彼女はおいしいと微笑んで飲んでくれた
ああ…幸せだ…
メイドがお菓子を用意すると部屋を出て行った
僕が緊張していると彼女は僕の緊張をほぐすかのように気さくな感じで話しかけてくれた
どうやら歳は同じらしい
エルフは長生きなので年上かと思っていたのに
同じ年と言う事を聞いてほっとした
ミストと呼んで欲しいと言われてちょっとどきっとした
ミストに質問されて答えると、ミストが知らない事を僕が知っている事で彼女のためになる
それがたまらなく嬉しく感じてしまうのは何故だろう…
ミストは異種族間の恋は本人が良ければいいと思うと答えてくれた
よし、頑張ろう!!
ミストがお菓子を幸せそうに食べている姿を見ていると
幸せを感じる
僕はこの笑顔を守ろう
たとえこの世の全てが敵になったとしても…
ミスト…君は僕が守るよ…
だからどうか…
僕に…僕だけに笑いかけてほしい…
初の番外編です
なんか王子が病んでる感じがするのは何故だろう…