番外編~ミストが誘拐された日
いつもより長くて、文章がいつもと違います。
ラビットマウスの群生地を抜け湖の畔へたどり着いた一行は少し休憩を取る事にした
白銀と白夜は先ほどまで狭い馬車の中にいたため、広い湖で2人仲良く遊ぶようだ。
「ミスト、僕達少し湖で遊んでくるね?」
白夜は綺麗な湖の近くに生える花が群生しているあたりに座りこんだ己の主、ミストに声をかけた。
「わかった。楽しんでおいで~」
彼らの主は基本的に契約獣の行動を制限せず、好きなように過ごす事を良しとしている
白夜は予想通りの答えを貰い、小さくだが思わず笑ってしまう。
「ありがとう。行ってくるね」
ミストは白夜の笑みの意味がわからずに首を傾げつつも、微笑んだ
白夜がミストに見送られつつ湖に向かうと、一応許可を得るために待たせていた友人が立っていた。
「許可は貰えたようだな」
白銀にもミストの言葉は聞こえていたようだ
彼らはもとの姿に戻り、身体の大きさを小さくしてから遊び始める。
「彼らは水遊びですか」
湖で遊び始めた彼らを横目で見つつ、地図を広げているクロードは笑みをこぼした
クロードとライオスは森を抜けた後の事を話しあうために地図を確認していたのだ。
「この森を抜けてすぐに小さな村があるね」
ライオスがクロードの持つ地図を横から確認しながら現在いる森の隣に記されている村を指さす
クロードはその村の名前を確認すると、村の情報を記憶の片隅から引っ張り出してきた。
「今日中にもう一つの森を超える事は難しそうですし…その村で一泊しましょうか。」
「そうだね」
彼らは、今日の残りの行程や森を出た後の事を少し話しあった後、ついでと言う事で昼食を取る事にしたようだ
昼食を作るために火の用意を始めると、白銀達が魚を取ったようで、ライオスに渡した。
「ありがとうございます」
クロードはその魚を見て、白銀達にお礼を言う
礼を言われ少し照れたのか、白銀はライオス達の顔を見ないようにしつつ魚をライオスへ渡すとさっさと湖に戻って行く
どうやら彼らはぎりぎりまで湖で遊ぶようだ
ライオスがミストを見てみると、彼女は楽しそうに遊ぶ己の契約獣達を微笑ましそうに見ている。
「少し早いかもしれませんが、お昼にした方が良いですね」
クロードは懐から取り出した懐中時計で時間を確認した。
「そうだね…では僕は枝を集めてくるよ」
「お願いします。私は魚の下処理を済ませてしまいますね」
ライオスとクロードで役割分担をし、手早く昼食を作り上げていく。
「できました。皆に声をかけましょうか」
クロードの言葉に、ライオスがミストへ声をかけようとミストを見た瞬間
「っミスト!!」
黒い鳥…ダークバードがミストを足で掴み、そのまま飛び去ってしまった
ライオスが慌てて追いかけようとするが、白銀達に止められてしまった。
「少しは落ち着きなよ。やみくもに追いかけても巣の場所なんてわからないでしょ?」
白夜はライオスの襟をつかんでいる。
「ですが…」
クロードが困ったように意見を述べようとすると、白銀が楽しそうに笑った。
「お前たちは、俺らの主があの程度の奴にやられるとでも思ってんの?」
「言ったよね?《このあたりでミストの言う事を聞かない生物はいない》って」
白夜と白銀は顔に笑みを浮かべているが、クロードはわかってしまった
この2人が一番怒っているのだという事に…
少し考えてみれば誰でもわかるはずである。彼らはミストの契約獣である
自分たちの主が、己が近くにいたにも関わらず攫われたのだ。怒らぬはずがない。
「…危険はないのですよね?」
クロードは少しためらいつつ2人に問う。
「アレは大丈夫。場所も分かってるから」
白夜は少し落ち着いたのか、ライオスで遊んでいる
白銀と白夜の言葉で、4人は追いかける前に昼食を取る事にした
手早く昼食を食べた4人は白夜を先頭に、道をどんどん進んでいく
暫く歩いた先に会ったのは、先ほどまでいた湖よりも大きな湖だった。
どうやらこの森には大きな湖が二つ存在しているらしい。
「ミストは、あそこにいるはずだよ」
白夜が指さした先は、湖の真ん中に一本だけ立っている大きな木だった。
「あの木には、この森の鳥類をまとめている爺さんが住んでいるんだ。」
どうやら2人が言うには、あの木の上に鳥の居住空間があり、そこに連れてこられたのだという
クロードがどうやってあの木まで行こうか悩んでいると、白銀が行動を起こした
「ミスト~!!」
白銀の声が聞こえたのか、窓のようなところからミストが顔をだした。
「お~い。いまそっちいっくわ~」
ミストはそう叫び返すと、肩にとまっている鳥を見る
鳥はミストの肩から下りると、クロード達の場所からでもわかるくらいに大きくなった。
「ただいま~」
ミストが黒い鳥…ダークバードの背に乗り白銀達のもとへ戻ると、白銀と白夜は笑顔でミストを迎えた。
「おかえり。爺さんの家で茶でも飲んでいたのか?」
「この子は…新しい仲間ってことでいいのかな?」
白銀と白夜がミストに笑顔で質問をすると、ミストはニコニコと答えた。
「うん、御茶美味しかったよ。…で、新しい仲間の玄玻。mixだよ~。」
ミストは嬉しそうに玄玻を紹介すると、馬車へとさっさと乗り込んだ
ミストがいなくなるとクロードとライオスが渋い顔をしているのをみて、白銀達が一言二言2人に囁く
2人はその言葉に納得したようで、馬車へと向かっていった。
「そういえば…今日はずっと何を言っていたんだ?」
白銀が白夜…僕に首を傾げつつ聞いてきたが、僕は適当にあしらって馬車へ向かった
たまにはまともなナレーションを入れて遊びたいじゃない?
今度はミストも誘ってみようかな?
白夜の遊びの一つでした。
彼は勝手にナレーションを入れたり、聞こえない会話に勝手にアテレコしたり…
そんな感じの遊びがしたかったようです
白夜の遊びに付き合っていただきありがとうございました




