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魔力が少なすぎると追放された僕、最強の妖刀を拾ったので最強を目指してみようと思います。  作者: umino


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3/3

第3幕 試される大地

住宅街の夜は、異様なほど静かだった。

神代迅斗はフードを深く被り、路地裏から自宅のアパートへと滑り込む。

腕には、布で何重にも包んだ長い何か。

――妖刀【阿紫花】。

鍵を開け、ドアを閉めた瞬間。


「……ふぅ」


息を吐いた途端、膝から力が抜けた。

ベッドに腰を下ろし、包みをほどく。

月光を受けて、鈍く紫がかった刃が光った。


「……本当に、とんでもないの拾ったな俺」

『今さらですね』


脳の奥に直接響く、落ち着いた女の声。

迅斗は肩をすくめる。


「もうバレてんのかな?管理局に。」

『ほぼ確実に。』


 阿紫花は淡々と告げた。


『私の封印は強固でした。解除された瞬間、魔力の残滓が周囲にばら撒かれた。異戒師管理局の観測網なら、遅くとも数時間で特定されます』

「……最悪だな」

『私は歴史書に載るくらいには有名な妖刀ですから……“国家案件”になるかもしれませんね。』


さらっと言われて、迅斗は頭を抱えた。


「なんでこんなの拾ったんだ俺……」


だが、文句を言っても仕方ない。


「で。どうする?」

『逃げます。』

「即答かよ。」


阿紫花は声のトーンを少し落とす。


『捕まれば、あなたは解体――』

「待て待て待て待て。」

『――いえ、研究対象にされる可能性が高い。』


 訂正になっていない。


『そもそもあなた、魔力ほとんどありませんよね?』

「……ああ。」

『その身体能力に加え、私を起動させた前例など存在しません。過去の一回を除いて。興味を持たれない理由がない』


迅斗は無言で天井を見た。

人生詰みかけてないか、これ。


『ですが――』


阿紫花の声が、わずかに低くなる。


『私が魔獣を吸収した際、あなたの肉体にも微量ながら還元されています』

「……は?」

『筋繊維、神経伝達速度、骨密度。すでに初期値から数%上昇しています』


迅斗は自分の手を見る。

確かに、ダンジョンから出たあと――

疲労が異様に少なかった。


「……つまり?」

『私を使えば、あなた自身も強くなる』

「……悪魔の勧誘だろそれ。」

『妖刀ですから。』


即答だった。


『ですので提案です。都市部を離れましょう。管理局の包囲網が完成する前に』

「……どこ行くんだよ」


少し考えたあと、刃がかすかに鳴った。


『魔獣密度が高く、監視網が薄く、地形が広い……』

「……」

『蝦夷地です。』

「蝦夷……北海道か。急だな。」


 だが、迅斗はスマホを取り出す。

 ニュース速報。


――《市内高校ダンジョン化事件により、市内全校休校》

――《夏季休暇を前倒し》


「……確かに、長めの夏休みみたいなもんだな。」

『言い方が軽いですね。』

「逃亡旅行だろ?」


 苦笑しながらも、迅斗は立ち上がった。


「それに……一族に見返すには、強くなるしかねぇからな。」


 視線を刃に落とす。


「お前に利用されてるの、分かってるからな。」

『それはお互い様でしょう。』


 阿紫花は微笑む気配すら感じさせる声で言った。


『あなたは私の刃。私はあなたの力』

「……嫌な関係だな」

『私は素敵だと思いますよ?』



 数時間後。

新千歳空港にて、

僕は窓の外の街並みを眺めていた。

 その時――


『……大きいのがいますね。』


阿紫花の声が鋭くなる。


「管理局か?」

『いいえ。今はいません。』


一拍。


『――魔獣』


迅斗は眉をひそめた。


「ダンジョン外だぞ?」

『しかも、』


 刃が、微かに震える。


『知性を感じます』

「……は?」


北海道の大地。

本来、結界で隔離されているはずのエリア、その中に。


『……厄介ですね。ですが面白い。』


 阿紫花が囁く。


『今日からあなたは“狩られる側”ではありません』


 迅斗は息を吸い、布の中の柄に手を掛けた。


「……じゃあ?」


『私がいるのですから。』


 刃が愉悦を帯びる。


『狩る側です。』



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