第二話 愛華の小さな苦悩
短い?
気にしないでねぇ。
一章20.30話くらいで締めれるようにはする。
出来ると思うよ。
2500文字くらいで2週間に一度とか?
頑張りゃいけるさ。
うん。
うん。
「ふぅぅぅ・・・」
ふらふらと座り込んでしまう。
思ったよりも神力を使い過ぎたようだ。
(疲れた。
大技過ぎるよ。
これ、死に際にやるレベルなんですけど。
普通こんなの打ったら動けないし。
まぁ、倒せたかなぁ。
あー、探知して、確認しないとかぁ・・・)
札を一枚だし、ポイっと投げる。
10秒ほどで札に赤文字が入る。
「んんーとぉ、これってぇ・・・」
東京スカイツリー。
先刻愛華の探知にひっかかった場所。
紫色の美しい着物を着て、黒いロングの髪。
赤い切れ目はパッチリとしていて、ゆらゆらと揺れる龍の髪飾りが音を立てる。
「っへへ、強そぉ」
風に翻った着物の下には足が一本無かった。
もう血は止まっているようでゆっくりと再生している。
「あんなのよく打てるよねぇ、普通用意で1時間はかかるのにね。」
少し伏せ気味の目が鋭く光る。
(この傷も治りにくい、確実に殺す気だった。
殺さなくても大怪我で動けなくする気だったのか。最悪逃げられても大丈夫なように、確実に、だ)
ヌルリと音を立てて足が元に戻った。
「恐ろしい子」
感情のない目でそう言ってふっと消えた。
「取り逃しちゃったかぁ。」
もう初歩的な飛行も出来ないくらい神力がない。
確実に殺すためにここまでやった攻撃は逃げられ、
ふらふらする。
巫女に相応しくないスマホを取り出す。
「あ、沙夜香?
迎えに来て」
スマホの反対側の沙夜香は
「は?」
とだけ言って迎えに来てくれた。
帰りの電車の中。
何人かチラホラと人はいるが、音遮断くらい沙夜香がささっとやってしまった。
並んでシートに座る。
「ふぅん、強そー。」
あの取り逃した妖怪の話をする。
「つまり相手は相当なスピードと探知能力の持ち主やねぇ。愛華よりも朱莉の方が相性がいいよ、間合いに入れればだけど。」
人差し指を立ててゆらゆらと揺れながら話す沙夜香。
「逆にいえば間合いに入らないくらいなら私が戦った方がいいの?」
「それは違うねぇらなんだか愛華じゃ勝てなさそう、でもね・・・」
なんだか哀しそうな目で俯く沙夜香。
「倒したくないようなそんな感じやねぇ
私も妖力探知だとねなんか分かるというねぇ、ずっと昔、ずっと近くにいた人の感じ。」
伏せた目からは感情は読み取れない。
ただ透き通った声が、懐かしそうで。
愛華はただ聞くことだけしか、出来なかった。
心に、引っかかるだけだった。
私ってさ、薄情なのかなぁ・・・優しくないのかな?
あの日からなんかずーっと何かが抜け落ちた気がして。
何だろう?
何だろうなぁ・・・
沙夜香に寄り添ってあげようとしてた時に。
でも、何だろう?
何かしようとすると、すっと何かが抜け落ちる。
何でだろう?
沙夜香が何だか、一瞬羨ましかった。
何で沙夜香が羨ましかったんだろ?
本能が分かって、頭じゃ分かんないことなのかな?
もう、もういいや。
分かんないや。
「ねぇ、沙夜香。」
沙夜香は微妙な顔で微笑んでいた。
「沙夜香はさ、昔の事って覚えてる?」
ハッとした顔でこちらを見る。
多分私の目はグルグル回ってる思考のせいで不自然だ。
また少し目を伏せて、絞り出すようにいった。
「分かんない、10才までの記憶はないし。」
複雑な声だ。
「でも何だかいい予感がするんよ」
明るい声でにっこり笑う。
「そうだね、沙夜香妖力探知は世界一だもん。」
また少し複雑そうに優しく笑っていた。
『まもなく〜奥多摩〜終点〜奥多摩〜』
やけに間延びしたアナウンスが流れ、電車を降りる。
駅構内をささっと抜け、外に出る。
愛華は押し寄せてきている疲れを頑張って無視して、瞬間移動する。
いつもの里が視界を覆った。
仄かな光の家々が眩しい。
暫く沙夜香と並んで歩く。
すぐに沙夜香の家に着き、愛華はまたねとだけ言いそそくさと帰る。
田んぼと小さな小屋ばかりの場所に出る。
その中で一番大きな家が愛華の家だ。
あの日のように、暗い暗い夜をかけていった。
やっぱできないかも