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男の聖女はダメですか?  作者: 茉小夜
ドラコニア王国
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第47話 竜王

王城にあるプライベートスペースの部屋に通されると竜王と王妃が既に待っていた。俺たちが部屋に入ると直ぐに人払いがされた。


「〈サイレントルーム〉。これで我らの欺いて聞き耳を立てることはそうそう出来ないだろう。さて、先程謁見の間で見た様だが、改めて名乗ろう。アグニール・フレア・ドラコニア。今代の竜王だ。隣の彼女が王妃のコーネリアだ。宜しく頼むぞ、聖女よ」


鑑定したことがバレていた。


鑑定された事に気付くことは有っても気付かれたのは初めてだな。これもレベル差によるものかな?


「ミヤビです。宜しくお願いします。俺の事情は誰から聞きましたか?」


「話は夢に出てきた創造神ウラノレーヴェから二度に渡り伝えられた。私自身は神託スキルを持っていないから声を聞けず、即位の儀で無いから顕現出来ないからその手段をとった様だぞ」


「よりによってあの人か……。失礼ながら何処まで聞いてますか?」


あの人は結論から言う癖があって、肝心な所をよくすっぽ抜かすんだよな。神界にいた短い期間で何回折檻されている現場に遭遇したことか……。


「そうだ。一通りは聞いたと思う。まずは君が女と間違われて、誘拐されたこと。その流れで聖女になったこと。豊穣神ニュンフェに見染められて伴侶になったこと。それからーー」


話を聞く限りで一通りの説明はしてくれたみたいだ。凄く珍しい。

まぁ、2回に渡って夢に干渉した様だが、天秤神ソフィアがフォローする場面は無かったらしい。やるじゃん。


また、後ろ盾の件は今回功績を上げた事もあって問題ないそうだ。後程、王家のノーブルコインをくれるらしい。


ただし、王家のコインは良い意味でも悪い意味でも使い所が難しいので、普段はシリウスさんたちのコインを使う様に言われた。


「……擦り合わせはこれくらいだな。次は君の話に移ろう」


ここからが本題だと言わんとばかりに真剣な表情になった。


「君はこれから何をする?」


「そうですね……。まずは、神界にいる妻に早く会いたいので、引き続きレベリングに勤しみながら神器作りですかね?」


レベルは上がったが、まだ神度が上がる様子はない。

それは眷属や信仰でも同じだ。ノアが眷属になり、髪関連で信仰が集まりつつあるが、まだまだ上がる気配はない

一人二人所か、十人二十人と集めないと変化は起きないさそうだ。


「レベリングか。私が見るに君の実力は既に上位の者たちと比肩を取らぬと思うが、まだ足りないのか?」


「足りませんね。場所にメルディンを薦めたという事は最高深度で鍛えてLv.70位を目指せという事かと。まぁ、冒険者ランクも上げたいのでクエストとダンジョン攻略の両方を頑張ります」


特にアンデットと相性が良いので何処か良い場所はないかと尋ねると。


「それならちょうど良い所が有る。王家が管轄するダンジョン【霊廟エーデルゼーレ】でアンデットを間引く必要があった。許可書を与えるから、指名依頼を受けないか?」


王家の管理下に置かれている理由は、アンデッドしか現れないので利益が出ず、冒険者がなかなか集まらないからだった。なので、騎士団が訓練も兼ねて定期的に間引きを行っているそうだ。


「アンデット専門ダンジョン!? 受けます受けます!!」


言ってみるものだ。思い掛けない幸運が舞い降りた。


「そうか。なら、ダンジョンの詳細はギルドに渡したおこう。それから神器を作るのなら必要な鉱石を融通する事ができるが?」


「今の所はコレと言った物はなく、形すらも浮かんでないので大丈夫です。あっ、でも、別件で欲しい素材は有りますよ」


「それはどんな物だ?」


「柔軟性のある糸や物ですね。苦しくないコルセットを作りたいので」


そう言うと王妃の目が光った。彼女も痛くないコルセットを待ち望んでいる様だ。


「柔軟性か……そうなるとアラクネ等の蜘蛛糸かくらいしか思い浮かばないな。済まないが助けになれそうに無い。コーネリアは何か心当たりは有るか?」


「いえ、残念ながら私にも有りませんわね。私たちも苦しくないコルセットは助かるのですが……」


竜の知識でも思い当たらないなら一から作る事も検討した方が良いかもしれない。


「私からの話は以上だ。仕事に戻るから、後は好きに話すと良い、コーネリア」


竜王が退出すると従者たちが戻って来て空気が緩み、コーネリアさんはその態度を一変させた。


「ミヤビさん。貴方にはずっと御礼がしたかったの。お話しする機会が出来てとても嬉しいわ。貴方が開発したシャンプー、アレはとても良い物よ! ありがとう!!」


それから口を挟む暇もなく、彼女はシャンプーについて熱く語ってくれた。


「オイルも良かったけど、シャンプーの方が断然いいわ。なんせベタ付きが全くないのだもの。もっと数を増やせないものかしら?」


「材料に使ってるオイルはダンジョン産の魔物素材ですからなかなか……。ダンジョン外で捕まえて養殖出来るなら別ですが」


「魔物素材……キルリーフを捕まえて養殖すれば増産できるのね?」


「ん? はい、そうですよ。安全に種を回収する方法と逃亡防止の対策は見付けましたから」


キルリーフが増えれば色々解決するのだが難しいだろう。なんせギルド情報でも生息域が分からなかったのだ。


「では、それを私が請け負いましょう。既に地上での生息地域は見付けており、何時でも捕まえられますから」


「マジですか!? 王家凄いな!?」


「メイドたちの力もあっての事です。ですが、捕獲はする代わりにミヤビさんの知識と採取方法、それから優先的な販売を望んでも? 秘密にしたいので有れば契約を結んで貰っても構いませんよ」


「本当ですか? お願いします」


メイドが持ってきた契約書にサインして方法を説明した。


まず、新採取方法。キルリーフを生きたまま、水に沈めると高品質な種をゆっくりと吐き出すのだ。


また、逃亡防止には、キルリーフの周囲を大きな水路で囲うことで逃げられなくできる。栄養は地面から吸うので餌も要らない筈だ。


「分かりました。小規模で実験してみます。うまくいったら連絡しますね」


「お手数お掛けします」


「いえいえ、全ての女性の為です。お気になさらないで下さい」


まさか、王妃が協力してくれるとは思わなかったが、全てを自分たちだけ行わずに良くなったので助かった。





王妃との話し合いが終わった後は、王城を出て教会に向かった。柔軟性のある糸の心当たりを言っていたからだ。


「蜘蛛糸の素材で魔法生物を作ったら柔軟性のある糸を精製出来ないかな?」


ヴィオレは吸収した物を昇華したり、ゼロから生成する事が出来る。それを使って新しい糸を作れないかと思った。


「本来の魔法生物なら出来ないと断言するのですが、ヴィオレを見ると……」


出来そうな気がするとニコラスさんも思っている様だった。


「とりあえず、蜘蛛系の魔物をテイムしてはどうでしょう? その過程で討伐もするでしょうから手に入った素材は魔物生物の作製に回すというのは?」


一発でテイム出来るとは思わないのでこの案を採用した。

まずは蜘蛛の選定する為に冒険者ギルドで聞き込みを行う。


「おうおう、嬢ちゃん。ここは嬢ちゃんの様な人間が来る所じゃねぇぞ。さぁ、帰った帰った」


来る時間を間違えたか?

夕方の良い時間と有って、受付に並ぶ冒険者たちが列をなしていた。

その為か、初めてギルド内で絡まれた。なんか少し感動する。現実で絡まれる事なんて有るんだ……。


「おい、聞いてるのか? おい!!」


こういうのはスルーするに限る。流石にこんな小さい奴に手を出す奴はいないだろう。


「おい、無視するな!!そして、しれっと列に並んでんじゃねぇよ!?」


諦める様子が無いので障壁を展開しておこう。ちょうど、新しい魔法を生み出したばかりだ。

もし襲ってくるなら実験台になって貰おう。


〈スパークプロテクト〉


某ロボを参考に攻撃を受けたらスパークして攻撃を防いでくれる障壁だ。通常障壁に重ねる様に展開しているので、攻防隙がない。


「お前、いい加減にーーぐぎゃあぁぁっ!?」


俺の背後で"バチバチッ"と放電し、男性が転がり痙攣する。


おいおい、マジで掴み掛かってきたよ。このオッサン。


後ろに視線を向けると色々な液を垂れ流していたので後退った。出来れば関わりたくない。引き続きスルーで行こう。


「何の騒ぎですか!! ギルド内での争いは禁止ですよ!!」


騒ぎを聞き付けたギルド職員がやって来た。

今こそ俺の容姿を活かす時だ。


「職員さん……(うるうる)。突然絡まれたので魔法障壁を張って無視したら、掴み掛かられてこんな事に……(上目遣い)」


「うっ……(可愛い……)。おほん、障壁というのは?」


「〈プロテクト〉に雷魔法を加えたもので、障壁に触れた瞬間、自動で雷魔法の反撃をします」


「掴み……周りにいる皆さん。彼女の話は本当ですか? 彼はこんな小さな子に手を出そうと?」


ギルド職員は周囲を見渡し、冒険者たちに尋ねた。


「嬢ちゃんの言う通りだぞ」

「無視され続けて、痺れを切らしたソイツは嬢ちゃんに触れようとしてそうなった」

「突然、放電してビックリしたよ」


彼らは白目を向いてビクビクと痙攣している冒険者を冷めた目で見ながら事実を報告してくれた。


「どうやら貴方には非がない様ですね。彼はギルドの治療室に連れていった後、地下の牢屋で反省して貰いましょう」


「あっ、回復なら自分がやっときます。当事者なので〈キュア〉〈ハイヒール〉」


ギルド職員がいれば安心なので、襲ってきた冒険者を回復させた。


「てめぇ、良くもやってくれたな! 女だからって調子に乗りやがって!!」


剣に手をかける冒険者。周囲の目も気にしてはいない様だ。


「せい!」


「(狙って……ココだ!)」


タイミングを見計らって、強化した杖で剣を殴る。


"パキンッ"


「へっ?」


「もう一回痺れようか。〈スパーク〉」


「ほげぇりゃあぁぁぁっ!?」


今度はちょっと強めの電流を流した。

いい感じのアフロヘヤーが完成し、冒険者は白目を剥いて倒れた。そんな彼をギルド職員たちが引きづっていく。


野次馬の冒険者たちはそれを見送りながらコソコソと彼に渾名を付けていた。


『自爆男《ボンバー》』


最初に付けた奴は、なかなかに良いセンスをしている。


その後、受付に指名依頼の書類と探索許可証を出して手続きをしながら蜘蛛の情報を集める。


「蜘蛛ですか? それでしたらメルディンのダンジョンの15階にいると聞きましたね」


今すぐにダンジョン都市へと帰りたい。

でも、良いレベリング場所は王都の近郊にしかない。蜘蛛の件は後の楽しみに取っておく事にした。



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