第十ニ話 文化祭(3日目 文化祭再開)
崎原...先生...と呟いてみた。
懐かしい響きが口の中で広がる。
崎原先生は昨日...亡くなった。
やはり...信じ切れな...い
「綾音!ボーっとしないで早く厨房手伝ってよね!」
そうやって心菜が声をかけてきた。綾音と呼ぶのはあまりいないので、反射的には振り返れなかったが、急いで振り返って「ごめん」と一言言って厨房へと向かった。空音との約束は良いのか?と訊かれるとそちらも大事だが文化祭の方を取ったというのは紛れもない事実だ。
...どうやって黄泉の森に行くかを私が忘れただけである。
本当に今までどうやっていっていたのだろう。
...まぁ、いいか。
申し訳ないが本当に忘れたことには変わりないので仕方ないということにした。
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私は口の中を強く噛んだ。
血の味がする。
噛み切ったのか...このことはどうでもいい。
「何時までたっても綾音は来ないじゃないか!」
そうやって言葉を吐き捨てた。来るように約束したのに来ない。黄泉の森に来ない。というか私が森自体から出れないようになっているし、綾音は来ない。
―――もしかしたら綾音が来たら出れるかもしれない。そう思って綾音へ話しかけた。
約束した。
それなのに、何時まで経っても来ない。
さっきから話かけようとするがノイズに阻まれて話しかけれない。
「クソッ...」
そうやってまた言葉を吐き捨てる。
記憶も覗き見れないからわざと来ないのか、綾音が来れないのかがよく分からない。憶測になるが、どうせ今も藤井 優とかいう名前の男と一緒にいるのだろう。
「クソッ!!!!!!!!!!」
叫びながら頭...髪の毛をかきむしる。隣でサタンが背中を撫でてくれている。
「――、少し落ち着きなよ。綾音が来なくて苛立っているのかもしれないけど...さ」
「黙れ!サタンには私の心情が分からないだろ!?」
日に日に口調が優しくなるサタンに対してよく八つ当たりをしてしまうが今日もしてしまった。
はぁ...
何時になったら綾音が来るのだろうか...
それからまた現実世界より引き伸ばされに引き延ばされている黄泉の森で――とサタンは綾音が来るのを待つこととなった。
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「綾音!あの...何だっけ、なんとかパンケーキ一個」
「えっ?あぁ、分かった、あれね、ふんわり仕立てのパンケーキ...というか、朱実。商品名ちゃんと覚えて?」
「無理無理、あんな長ったらしいの覚えれないよ」
覚えてください、朱実さん。あの...朱実さん、何時の間にそんなに記憶力が悪くなったんですか?
...すみません、心の中で悪口言って...反省してるので...その、その顔やめて...怖い...から
後、その...手離して...?
「朱実さん...その服の襟掴むのやめっ...てもらっても?」
「綾音が凄い悪口言ってる顔してたから悪いんじゃん」
ごめんなさいぃ...
「というかこういう時にだけさん付け辞めてよね?逆に怒るポイント増えるから...」
えぇ...終わった。
「朱実さん、綾音さんが困ってる...店全体が回らなくなるので、離してあげるとかそういう配慮無いんですか?因みに1-2の料理綾音さんが何割担ってると思います?1人で6割担ってるので本当にやめてください。」
「智...晶?」
あの、その、朱実さん?私に怒ってたよね?今まで、え?何で佐久良君をにらんでる訳?え?え?え?何で襟掴むの?襟掴むのはやってるの?
「綾音ぇ?少しは黙りなよ?」
ひぃ...こわ
「黙れって言ったよな?」
はい、すみませんでした。
え?ちょっと佐久良君どこに連れてくの?え?朱実もどっか行くの?え?店どうするの?え?え?え?
「ちょっと私等話あるから少し店出るけど、冬弥...?代わりに二人分やってくれるよねぇ?」
「ひ...朱実、分かったからなるべく早く戻って来てね...?」
「冬弥ァ、感謝する」
そう言ってもう一度佐久良君の襟をつかみなおして引きずるように出て行った。
流石に店の入り口からは出て行ってないのでご安心を(?)
...ごめん佐久良君。私のセイでまた犠牲に...?あ、またではないか。一回目か。
「心陽!ごめん、私のセイで二人出て行っちゃって...」
「綾音、爆速でご飯作ってね?」
「わ、分かりましたぁ...」
心陽の無言の圧と言葉を受けて私は厨房へと全力で向かった。
「はぁ...綾音はどうしてもっと朱実に優しくしないのかなぁ...?」
と心陽がつぶやいているのが聞こえた。
...してるつもりだよ。
...あれでも努力してるんだけど、さ。あまりにもひどいから言っちゃうんだよね。そのセイで回りを巻き込んでしまうのが私の悪い癖なんだよね...
「はぁ...」
溜息を吐いた。すると、何処からともなく「店員が溜息吐くんじゃねーよ」と罵声が飛んできたので、「すみませんでしたぁッ!」と反射的に謝ると、「せ、せ、生徒会長様でしたか...申し訳ございませんッ!」と逆に謝られてしまった。本当にごめんなさい...(泣)
「はぁ...生徒会長って"だけ"なのになぁ...普通に接してくれないと私が嫌なんだけどなぁ...自己満足とただの自己中心的な考え方な"だけ"かなぁ...」
「綾音~?料理の音が全然聴こえてこないけど、サボってないよね?分かると思うけどサボってた時は...ボキッあ"、ん"ん"なんでもナイヨ~」
何かが折れた音にしか聞こえなかった衝撃的な音は何もなかったことにしておこう。私が悪かったからな。と言いながら誇らしげにすんなというのが私の中に住んでいる天使の解答で悪魔はサッサと作ってサボろうぜとの事。直訳するとどちらも早く料理作ろうぜ(キラン)との事である。いつの間にそんな調理師向けの天使と悪魔を中に作ってしまったのか...よく分からないが本当に早く作らないと朱実に怒られそうである。
「綾音~ふわふわパンケーキまだ?」
今盛り付け中...
「言葉で発してくれないと分からないんだけど~?」
「今、持って行きますっ」
「社さん。ボくガ持って行きますよ」
「あ、テクノ君。お願いしてもいいかな?後、別に綾音でいいよ」
「承知致しました。綾音さん、持って行きますねその料理を」
あ~、ありがたやありがたや...まだまだ料理の作成...というか作るものが...ね、あり過ぎて困ってたから本当に嬉しい~
という休息(?)を私は取り1分前に来ていた注文10件を全て同時進行で行うことを決めた。本当は"れあちーずたると"と"ふんわりほいっぷのぱんけーき"だけなのだが二人分私が減らしているのでふわふわパンケーキを受け持つ事となった。
...あれ、じゃぁ朱実が私に最初から言ってたのって...普通に業務押しつけであれだけ怒られたの?私。ただの怒られ損だし、普通に他の人にもただの決めつけと間違えで迷惑かけたの?朱実...後で私からの愛情たっぷりのお仕置きを受けて貰わなきゃね。
「ごめん、綾音~!ふんわりパンケーキとレアチーズタルトを3つずつ作って」
はいはい...っと生地を混ぜて美味しいくなーれみたいな感じで混ぜて混ぜて...いつも失敗しそうになるのが空気を含ませること...料理向いてないのかもしれない。あまりにも初歩的な物のように感じるのでまだまだ修行が必要だなぁ...
タルトだけ先に作るか...
「"れあちーずたると"が10つ"ふんわりほいっぷのパンケーキ"6つ仕上がりました。もう2人ぐらい手伝い願います~」
「「了解」」
朱実、琴葉せんくすっ!
ここでテクノ君が
「二人ジゃ大変デすよね。ボくも手つダいます。」
ありがと、テクノ君。
「綾音、俺も」そうやって声をかけてくるのは優君だ。
近くに優君の友達の...2人がいるので、実質これで6(5人と一台)に手伝ってもらっている。
...私もそろそろ持って行くか。
「そろそろピークを過ぎるのでそれまで頑張りましょう!特に...社さん。貴方が途中で怪我等をした際は今回のうちのクラスは普通に戦力が半分ぐらい削れるので頑張ってください!」
「分かりました...」
...うちはただの労働環境がエグい店だったようだ
値段が安いのに...ねぇ。アルバイトみたいな感じだが給料の分カットだからかもしれないな。
客が減り、昼のピークを前半遊び(?)に出ていたクラスメイト達が戻って来た。
「社さん、お疲れ様~」
「う、うん、まだこれから接客の方に回らないといけないんだけどね?」
「あ、なんかすみません...その。はい。」
私が本当に申し訳なくなりすぎて頭おかしくなるから止めてほしいなぁ...なんて
「いや、大丈夫だからこれから一緒に仕事しよ?」
「は、はい」
...因みに彼が思ったことは『生徒会長様かわよき...そして相手をやる気にさせ、一瞬気があるのかと思わせる悪女!やはり生徒会長様は最強ッ!』
...綾音は知る由もない。
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綾音。君ってヤツは...
優しすぎるんだよ...もう他のヤツが君にメロメロになっちゃうじゃないか...
罪な女...ゲフンゲフン
ところでだが...綾音は
「何時まで経っても来ないじゃないか!」
「先程も同じような事を言われていましたが...」
急に改まった口調で喋るなよ。凄い身構えるじゃないか。...サタン。
「どうしたんだ?」
「いや...先程も同じような事を言われていましたので...」
そうじゃないよ!口調だよ口調!
「...いや、口調がいつもより硬いからサタン、どうしたのかな...って」
「特に...ありませんが硬い方が――様の口調が柔らかくなるので...」
...うん。機嫌取りか。一回死ね。
そう思って掌を向けた瞬間そこに狙ったように雷が落ちここが雲の上では無い事が証明された(?)
「あ、あの――?怒ってるの?」
「そうに決まってるじゃないか...サタン?用意は良いんだろうなァ?」
「...おわった」
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綾音は文化祭の三日目をようやく乗り切り黄泉の森では悪魔と――が出られなくなっている。それは綾音にとっていい事かは分からないが今のうちに文化祭を乗り切るべきである。
因みに綾音はもちろん黄泉の森で行われたこの会話の事も呼ばれていたことも何ももう覚えていない。




