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わすれもの  作者: しっど
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11/12

第十一話 空っぽな私には

「冒頭30分くらいお猿さん見せられたんだけど・・・」「はい・・・」





日々。





「冒頭の長回しの臨場感、すさまじかった」「まさに戦場ですよね」





ゆっくり、しかし確実に過ぎていく平坦な日々。





「あの臓物巻き取るシーンきつすぎなんだけど」「うう・・・」





最近、物忘れが多くなってきた。





「CGとか使わずにあの生々しい造形が動きまくるのすごい」「80年代とは思えませんよね」





昼起きて、映画を観て、感想を伝えて、寝る。





「脱走するシーン神々しくて好き」「観てからエレベーター乗るとき上気になるようになりました」





それだけの日々だったから


昨日と一昨日と一週間前、ぜんぶ代わり映えしな過ぎるせいかもしれない。





「撮り方は巧みだけどおじさんたちが廃墟探索するだけの3時間だった・・・」「はい・・・」





でも、それでよかった。





「タコかわいい」「ヘプタポッドいいですよね」





これくらい平坦で薄い毎日も、空っぽな私にはちょうどよかった。





「若いころの姿かっこよすぎ」「知的で冷酷な雰囲気いいですよね」





「あの場所に心を全部置いて帰った、空っぽな私には・・・」





ぼんやりとした諦観に漬かりながらなんとなく声に出した言葉。





「だったら・・・!」





独り言のつもりだった。





「?」





なにか言葉が返ってくるとは思ってなかった。





「だったら、取りに行きましょうよ・・・! その忘れ物!」





だから最初、何を言われたのかまったく理解できなかった。

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