098 真実
ルカは、フルーミニス市場で男たちに襲われたことを話す前に「あのね、ルキウス兄ちゃん。信じられないかもしれないけど……ちゃんと聞いてくれる」と、前置きをした。
「? あぁ、もちろんだよ。約束する」信じられないかも、ってどういうことだ? と思いながらもルキウスは約束した。だが、ルカの話が進むほど、その内容はルキウスにとって信じ難いものになっていった……
「待ってルカ、ミアは本当に『りゅうがんのあるじ』と言ったのかい?」強い口調で聞き返すルキウス。
「あ、うん……た、たしかそう言ったと、思う……」ルキウスに詰め寄られると自信をなくしたのか、声が小さくなる。
「ねぇ、ルカ。さっき、ミアが突然目が痛いって泣き出したことがある、って言ってたよね。もしかして……もしかしてミアの目、金色になってなかったかい?」ミアに聞こえないように声を潜めてルキウスが訊くと、「……なんで兄ちゃん知ってるの? ミアなんの病気なの? なんでそうなるの? ミアは治るの?」と、大きな声を上げてルキウスに掴みかかるルカ。
「お兄ちゃん、どうしたの?」コロと遊んでいたミアが、ルカの声に驚いたようで心配そうに二人を見つめてきた。
「ミアちゃん、大丈夫よ。お兄ちゃんたちはちょぅっと難しいお話をしているの。もうすぐご飯ができるけど、ミアちゃんがお手伝いをしてくれたらもおっと早くできるんだけどぉ、どうかなぁ?」と、すかさずフェリシアがミアに言葉をかける。「する!」パッ、とミアの顔が明るくなり、フェリシアの手を取って「なにすればいいの?」と聞き始めた。
「ルカ、ちょっと外に出ようか?」ルキウスがそう言うとルカは無言で頷いた。
「ルカ、驚かせてごめんよ。だけど、大事なことなんだ。ミアの目は金色だったんだね」
涙をこらえながら無言で強く頷くルカ。
「ルカ、頑張って思い出してくれないか。ルカが、れいけん? を開放しろと言ったときに、ミアが言った言葉を」
ルカはまた無言で頷いたあと、下を向いて難しい顔をし始めた。そして、しばらくブツブツと呟いたあと、「あの、ちゃんとかどうか自信ないけど……確か、りゅうがんのあるじ……えと、めじろ? りゅうきし、れいけんかいほう、だったと思う」
ルキウスは愕然とした。(竜眼主と竜騎士……こんな小さな子たちが……)
酷い目眩に襲われながらもルキウスは、「ありがとう……あの……ねぇ、もしかして僕たちと会うちょっと前にもミア、目が痛くならなかったかい?」
「……なんで兄ちゃん知ってるの……」あり得ない、そうルカの顔に出ていた。
(この子たちなのか……ステラさんたちが探してるのは……)
護る! ルキウスはそう誓った。
そのあとすぐ、ミアが「ご飯できたよぉ」とコロを抱っこしながら嬉しそうに二人を呼びに来たので、話を切り上げて家に入った。
ミアは終始ご機嫌だった。どの料理も美味しい美味しいと、ニコニコしながらいっぱい食べた。ルキウスと話をして元気がなかったルカも、そんなミアの姿を見ているうちに元気がでてきたのか、こんなに美味しいものは食べたことがない、っと目をキラキラさせてたくさん食べ始めた。その横ではコロが、バクバクバクバクゥ、と誰よりも一番がっついていた。
食事を終えてみんなで後片付けをしたあと、ミアが「フェリシアお姉ちゃん、ルキウスお兄ちゃん、今日はありがとう。あのね、ミアね、いいことできるの」とフェリシアに、ギュッ、と抱きつき「じっとしててね」と言って目を閉じた。
(えっ?)信じられなかった。体の中から疲れが、スゥーッ、と抜けていくのだ。それも、肉体的にというよりも心が軽く朗らかになる感じのほうが強い。心が癒やされ、穏やかでありながら、前向きな気持ちが湧いてくる。
「ふぅーっ。どう? フェリシアお姉ちゃん?」とニコニコしながらミアが訊いてくる。「わぁ、ミアちゃんありがとうぉ。とおっても気持ちよくなったわぁ」と、フェリシアがミアを優しく抱きしめる。「えへへぇ、あのね、お母さんがね、疲れたなって言うときにね、してあげると喜んでくれたの」と自慢げに話すミア。
「ミアちゃん、ルキウスお兄ちゃんにもしてあげてくれる?」とフェリシアが言うと「うん」と元気よく返事をして、フェリシアにしたのと同じようにルキウスに、ギュッ、と抱きついた。
(凄い……)思わずフェリシアの顔を見た。目があったフェリシアが大きく頷く。(この娘のリュウオンシは、治癒系なんだ……でも、四歳でこの力は凄い。ミアには才能がある。この力を伸ばしたあげたい)ルキウスは、ミアに癒やされながらそう強く思った。




