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097 兄妹の暮らし



 ルキウス、フェリシア、ルカ、ミアとコロは、シルウェストリス市場で食材をたくさん買い込み、ルカたちの家に向かった。



 ルカたちの家は、王都南東の最外殻にある貧民街にあった。いまにも崩れそうな家が、互いの家を支え合うようにしてひしめきあい、そこここに散乱したゴミからは異臭がたちこめていた。そして、ゴミの中には、動物の屍骸も混ざっており、そのゴミの中をネズミやゴミ虫が這い回っていた。



 だが、その中でいっそう目を引くのは、死人のような目でただ、じぃっ、と地面だけを見つめて座り込んでいる大人たちだ。それらは、ルキウスやフェリシアを見ても物乞いをするでもなく、目を向けるでもなく、なんの反応もしめさない。もはや、死人とかわらない、まさに生きる屍だ。



 ビタロスは、周辺国の中では群を抜いて豊かだ。仕事もたくさんある。でも、こういう者たちはいる。だが、ここまで酷くなるのは異常だとルキウスとフェリシアは思った。どんなに手を尽くしても全ての人を完全に救うのは難しい。それは、理解している。しかし、祭祀殿はこういう人たちを救うためにあらゆる手を尽くすはずである。いや、尽くさなければならないのだ。それが、ヒリュウ霊に仕えし者の責務である。なのに、この惨状。なぜ? ルキウスとフェリシアは、道々そう訝しく思いながらルカたちの家に向かった。


 

 「ここだよ」ルカたちの家は、農奴たちに与えられる典型的な小屋の間取りと同じであった。入り口を入ってすぐのところの壁際に無蓋のかまどが一つ。その横に薪、そして水瓶、その隣には皿が直接土間の上に置いてあった。その向かいにテーブルがあって、椅子が四脚。そのテーブルの奥には藁を敷き詰めた寝床。寝床の側には木の箱があって、色々な物が放り込まれている。家はとても粗末だが、綺麗に片付けられていた。子供たちが、ちゃんと掃除をしている証拠だ。



 「よし、じゃあお姉ちゃんが美味しい料理を作ってあげるわよぉ」と、フェリシアが買ってきた食材で料理を作り始めた。



 ミアは、コロを相手におままごとを始め、その間にルキウスがルカからこれまでのことを訊いた。



 ルキウスは、ルカの話を訊きながら陰鬱な気持ちになっていった。そして、自分の恵まれた環境が申し訳ないとさえ思った。



 一年前に父親が仕事中の事故で亡くなった。それ以来母親は、朝は農家、昼は針子、夜は酒場で働いていた。毎日毎日朝早くから夜遅くまで、頼る者もいない母親は一人で子供たちを育てた。そして、疲れ切った母親は酒場で知り合った男と出ていった。



 どんな理由があろうとも、子供を捨てるなど許されるはずがない。だが、ルカは悔しい、腹が立つとは言ったが、嫌いだとは一度も言わなかった。子供なりに母親がどれだけ大変な思いをしていたかを、ルカは理解していたのかもしれない。



 「ルカ、お母さんがいなくなったとわかったときに、どうして祭祀殿に行かなかったんだい?」


 ルキウスは、ずっと不思議に思っていたことを訊いた。半世界にある祭祀所(祭祀殿と祭祀舎をまとめた呼び方)には、無料の医療施設と身寄りのない子供たちの面倒をみる施設が絶対にある。なので、半世界の子供たちは、面倒をみてくれる人がいなくなったら祭祀所に行きなさい、と小さい頃から教えられてるはずなのだ。



 「……行ったよ……でも、いまはあずかれないって言われた……」


 

 (嘘だろ……)信じられなかった。祭祀殿が身寄りのないない子供の受け入れを拒むなど聞いたことがない。ここに来るまでにたくさんいた、死んだように座り込んでいる人たちといい、何かがおかしい。



 (祭祀殿で何かあったのか?)すぐにでもアウラたちに報告したいと思ったが、アウラから頼まれたステラたちを護る仕事を投げ出してしまった手前、すぐには顔を出しにくい。(少し様子を見て、僕も調べてみよう)釈然とはしないが、取り敢えずいまはそうするしかない、とルキウスは無理やり自分に言い聞かせた。



 そして、さらにルカから話を訊きていると、フルーミニス市場で四人の男たちに襲われた話になった。





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