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094 ごめんなさい



 ルカたちを取り囲んでいる男たちを後ろから怒鳴りつけたのは、ルキウスだ。



 「お前たち」

 「ビビビー!」とコロがルキウスをさして怒った(?)。

 「……ご、こめん」思わず謝るルキウス。



 リュウオンシ〈速さ〉を発動させ、転がるコロを追走していたが、シルウェストリス市場に入ったところで、人の多さに思わずコロを見失ってしまった。コロが進んだだいたいの方向はわかっていたので、ルキウスはその辺りを片っ端から覗いて、ようやく見つけたのだ。



 「あー、オホン。あなたたちはその子供たちをどうするつもりなんですか?」コロに叱られて(?)、冷静さを取り戻したルキウスが三人の男たちに訊いた。



 「あ? なんだあんたは? このガキの知り合いか?」親にしては若すぎるルキウスを見て訝しがる男たち。



 「いや、そうではありません。ですが、大の大人三人がそんな小さな子供を取り囲んでるのを見て、放ってはおけないでしょ。何があったんですか?」



 「関係ないならすっこんでろ。にいちゃん、カッコつけてっとケガするぞ」



 「それは絶対にないです」

 「えっ?」男たちが、信じられない、という顔をしている。なぜなら、さっきまで自分たちの後ろ、三トゥカ(3.6メートル)は離れていたルキウスが、いまはルカの前に立っている。そう、男たちには見えなかったのだ、ルキウスの動きが。



 これには、ルカたちも驚いた。さっきまであんなに離れていたルキウスが、いま目の前にいて、自分たちを庇っている。(凄い……)ルカは思わず、ブルっ、と身震いをした。



 「残念ですが、あなたたちでは僕に触れることもできないでしょう。どうしても争いたいなら受けて立ちますが?」



 「あっ、いや……」男たちが顔を見合わせ、そしてパン屋の主人が「そ、そのガキども、俺の店からパンをぬ、盗みやがった」と言った。



 「盗んだ? ほんとに?」ルキウスが聞き返す。「ほんとだ、俺んとこだけじゃねえ。昨日は、このカルロんとこの果物を盗みやがったし、その前はあんたの後ろのピーオんとこからチーズを盗みやがった」パン屋の主人に、カルロ、ピーオと呼ばれた男たちは、ウンウン、と大袈裟に頭を縦に振った。



 ルキウスは、後ろ向いてルカの目の高さに合わせると、「本当に盗んだのかい?」と優しく、だが、嘘はつくな、という響きを込めてルカに尋ねた。



 「いや、あの……」俯いて口ごもるルカ。「ごめんなさい。お兄ちゃんを怒らないで。お兄ちゃん、ミアのためにやったの。悪いことしてごめんなさい。これ、返すから」と、ルカが後ろ手に隠していたパンをミアが掴んで差し出した。



 「見ろ! このガキどもはろくでもねえんだ。あんた、そんなの庇ってないでこっちに渡してくれ。俺たちがしっかり躾をしてやる」パン屋の主人がそう言いながら一歩前に出た。



 「確かに、盗みはよくない。パンも果物もチーズも、みんなこの人たちが心をこめて大事に作ったものなんだ。この人たちはそれを売って生活をしている。君はこの人たちがご飯を食べられなくなってもいいのかい?」ルキウスがルカに問う。



 「……で、でも……俺たちも……食べる物がないんだ……」ルカは目に涙を一杯にためてルキウスに訴えた。



 「自分たちに食べる物がないからって人のものをとっていいのかい。そんなことをしていたら、今度は盗られた人が食べられなくなって、また別の人から盗るよ。それでもいいのかい?」



 「……よくない」消え入りそうな小さな声でルカが答えた。



 「じゃ、どうすればいい?」



 「……おじさん……パンを盗んで、ごめんなさい」ルカの目から大粒の涙が零れた。



 「あんた、ちょっと待てよ。謝ってすむもんじゃねえだろ。あんたも言ったよな、俺たちだって生活がかかってんだ!」さっきカルロと言われた、パン屋の主人の横にいる男が怒鳴った。



 「ですが、だからと言ってこんな子供をリンチしてあなたたちの懐は潤うんですか?」ルキウスがカルロを睨みつける。



 「いや……じゃ、どうすんだよ! 俺たちに泣き寝入りしろってのか!」開き直って怒鳴り返すカルロ。



 「いえ、ここは僕が払います。迷惑料も込みでお支払いしますから、この子たちを許してあげてください」



 「だ、ダメだ! あんた、あんたこいつらと関係ないんだろ。だったら、今日あんたが払ったってまたこいつらはヤル。こんな歳から泥棒をするようなガキは性根が腐ってんだ! 体に躾ねえとならねえ! ガキをよこせ!」カルロの言葉に勢いづいたのか、パン屋の主人が怒鳴りながらさらに一歩でた。



 「お待ちなさい! いい大人が恥ずかしくないの!」




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