091 残念です
「あの、お嬢さま……ほんとうなんですか?」ステラの話が信じられない、という顔で問うグレタ。
「はい、間違いありません」断言するステラ。
「ジョル、あなたは見たの?」今度はジョルジョに訊くグレタ。
「いや、残念ながら……」申し訳なさそうに答えるジョルジョ。
「なら、その……お嬢さまのみまち」
「いえ、絶対に見間違いではありません。幼い男の子と女の子です……先程も言いましたが、間違いなくアリアたちよりも歳下です。……そして、男の子は……竜騎士です」ステラは、グレタの目を見、それからアリアとアンナを見て、はっきりと告げた。そして、
「しかも、その男の子には『竜咒』の刻印が、出ていました」と続けた。
「竜咒……」グレタが息を呑む。
ルキウスには、先程からグレタが無理やりステラの言葉を否定しようと試みている意味がわからなった。正直ルキウスには、ステラが話していることの重要性が今一つわかっていない。
アリアたちより幼い子度が竜眼主であるという事実には、ルキウスもショックを受けている。だが、竜騎士の件については、なぜそこまでステラやグレタが深刻になっているのかがわからない。
もちろん、竜騎士が何かは知っている。衛士と同じ竜眼主と契約でつながれた戦士だ。竜騎士は、衛士よりも強いというか、格上だとルキウスは理解をしていた。だが、その程度のことがなぜこれほど問題になるのか? それと、『竜咒』とはいったい何なのか? 全く見当がつかない。
「竜咒が出ているということは、既に霊験を開放したことがある、ということです。とにかく、一刻も早く対処をせねばなりません」強い口調で言い切るステラ。
(えっ? 対処?)「あの、ステラさん、対処とは?」ルキウスが恐る恐る尋ねる。
ステラはルキウスのほうに顔を向け、「もちろん力を奪うことです」と、強い意志を込めて答えた。
「ちょっ、ちょっと待ってください。ステラさん、先程アリアたちよりも小さい子供だと言いましたよね。そんな子供から力を奪うんですか? そんな必要あるんですか?」ルキウスも強い口調で問いただす。
「あります。手遅れになる前にやらねばなりません」考えを変える気はない、ステラはそうはっきりと伝える。
「いや、そんな必要ないでしょ! そんな小さな子供たちに何ができるんです? むしろ僕らで保護すべきでしょ。確かに、放っておけばその子らは竜眼狩りの連中に見つかって命を奪われるでしょう。ならば、竜眼主のことを知っている僕らが、竜眼狩りなどと無縁の僕らが、その子たちを竜眼狩りから守るべきじゃないんですか? そして、ステラさんが竜眼主の子供に力の使い方を教えてあげればいいじゃないですか。なぜ、奪うほうにいくんです。子供だから、簡単に倒せるからですか? そんな卑怯な考え方をするんですか、あなたは!」
ルキウスはステラの目を直接見ないように少し下を向いているが、その瞳は怒りに満ちていた。
「あの、ルキウスお兄ちゃん、違うの。スぅ姉さまはそんな酷いこと考えてないの」見かねたアリアが、ルキウスを説得しようと試みる。「あのね、お兄ちゃん、スぅ姉さまの力はね」
「違わない! 今のステラさんは、ジーノたちと変わらない。なぜ、すぐに殺し合うことを選ぶんです。そんなにリュウ継嗣になりたいんですか? ……あなたはそんな人じゃないと思ってた……残念です」
そう告げるとルキウスは、皆に背中を向けて歩き出した。
「ルキウスお兄ちゃん、どこ行くの!」アリアがルキウスに取りすがる。
ルキウスは、アリアの手を優しく離すと「僕がその子たちを護る」と告げ、リュウオンシを発動させ、その場から消えた。




