008 駆け出し冒険者、喧嘩をする(その3)
「おいおい、何やってんだ」
「誰だ? あのガキは」
いつの間にやらルキウスとジーノたちは、すっかりと野次馬に囲まれており、連中はルキウスたちをネタに好きなことを言い合っていた。
「あいつぁ、ぼんぼんパーティーのルキウスだ」
「ぼんぼんパーティー?」
「知らねえのか? あのガキ、ルキウスは剣聖ウィルフォルティスの孫だ」
「剣聖って、伯爵の?」
「それだけじゃねぇ、あの入口んとこにいる赤い髪の女、あれはマスター・ランス、デリシェット子爵の娘。その隣のゴツいのはチカーナ子爵んとこの次男坊だ」
「なんだよそれ。お貴族様がお遊びで冒険者やってんのか?」
「ふざけやがって。あいつらか? 例の横取りをしたって噂のセイバーズは」
「あたいも聞いたよ。ジーノたちは背中から襲われたって。あいつら金持ちは、うちらみたいな貧乏人には何やってもいいって思ってやがる」
「おいおい、それでお咎めなしか? カリオは何もしねえのか?」
「家の力で握り潰したに決まってんだろ」
野次馬の中に、ルキウスたちのことを知る者がいて素性が語られているのだが、どうにも評判が良くない。
評判が良くないのは、ルキウスたちが貴族の子女だから、というだけではない。野次馬が言っていた『横取り』の話が絡んでいるのだ。
ルキウスたちが冒険者パーティーとしてギルドに登録したのはこの春、三か月前のことである。そして、そのすぐあとにジーノたちアグリコラがルキウスたちをクエスト支援に誘ったのだ。
だが、クエストの獲得アイテムを手に入れると、アグリコラがセイバーズを裏切り、獲得アイテムを全て取り上げようとしたのである。
しかし、戦闘力に勝るセイバーズにジーノたちは返り討ちにされ、「俺たちが悪かった。獲得アイテムは全てやる、報酬も譲る、だから許してくれ。その代わり、このことは誰にも言わないでくれ、黙っていてくれ。頼む」と平身低頭して詫びを入れてきた。
ならいいか、と人のいいセイバーズの面々は許したのだが、それが間違いであった。
「俺たちアグリコラがクエスト支援に誘ってやったのに、帰りに背中から襲われ、セイバーズに獲得アイテムと報酬を全て奪われた」というデマが、いつの間にか冒険者たちの間に広まっていた。
貴族の子女であるルキウスたちは、もともと冒険者たちからいいように思われていなかった。
そのため、ジーノたちが流したデマが、やっぱりあいつら貴族どもは、と冒険者連中に受け入れられ、セイバーズはより肩身が狭い思いをするようになったのである。