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084 正体は……



 「これはこれは坊ちゃまお帰りなさいませ。皆さんもようこそいらっしゃいました。ちょうどこれから朝食ですので、ご一緒にいかがですか?」とオスカーが笑顔で一行を出迎える。



 「いや、そうではなくて。お父様、実はこれを見ていただきたいのです」とフェリシアが白モコをぶらん、とオスカーの目の前にぶら下げた。



 「……」じぃーっ、と穴があくほど白モコを見つめるオスカー。



 皆が息をひそめてオスカーを見守っていると、むんず、と白モコを掴んでフェリシアからひったくると、バアッー! と屋敷の奥に駆け込んだ。



 「ええっ!」一瞬あっけにとられた面々だが、急いでその後を追う。



 オスカーは自室に飛び込むと、さらにその奥にある部屋に突入をした。



 その部屋はあり得ないぐらいにグッチャグチャに散らかっていて、大量の本がそびえ立つ山脈のようにうず高く積まれていた。オスカーは、その本の山をガーッと崩すと、散らかった本をポンポンと放り投げて何かを探し始めた。



 その鬼気迫る姿に圧倒され、皆は部屋に入ることができず、ドアの外から呆然と中を覗いていた。



 そのうち「あった!」と本の発掘に成功したオスカー。今度は、発掘したその本のページを、ビラビラビラー、と高速でめくりだす。そして、「これだー!」とついに目当てのものを発見し、歓喜の雄叫びを上げたのであった。



 そのあと、いつもの紳士に戻ったオスカーが、右手に白モコ、左手に開いた本を持ち、くるり、と皆のほうに向き直った。



 「オホン。皆さんよくお聞きください。この白いやつは―― ムクゲリュウアルマジロ、でっす」



 「……アルマジロ?」フェリシア以外は皆、ポカン、としている。ちなみにフェリシアは、「やっぱり」と頷いていた。



 「いいですか、皆さん。これは世紀の大発見です。なんと、このムクゲリュウアルマジロ、今から三千年ほど前に絶滅したと言われていたのです。それが生きていた――これを奇跡と言わずしてなんと言いましょう!」なんか演説臭くなってきた面倒なオスカー。



 「アルマジロ、と言っても皆さんはご存知ないでしょうな。この辺にはいませんし。ちなみにこれ、アルマジロではありません。似ているだけです。そもそも野生動物ではありません。ですが、魔獣でもありません」なんだと思います、とオスカーが勿体をつける。



 「博物学的分類はアンノウンとなっております。絶滅種なので研究が進んでいないこともありますが、生存していた時期においても生態に不明な点が多すぎましてな。ですが、随分と過去の文献には、竜の末裔、もしくは近縁種ではないか、という仮説を提唱しているものもあるのですよ。ちなみに、半世界中部ではドラゴネットと呼ばれています。これは旧中部共通語で、『竜の子供』という意味なのです」とここまで話すと、どうだ凄かろう、と胸を張るオスカー。



 だが、わーっ、と言って拍手をしているのはフェリシアだけで、他はやっぱり、ポカン、としている。



 「うん? 皆さん反応が薄いですね。この出会えた奇跡がわからない? ……よろしい! ではこの(わたくし)、王立博物アカデミーの名誉顧問であるオスカーが、皆様がご納得いくまでご教授いたしましょう!」



 そう告げるとオスカーは、右手に握った白いモコモコのおおねずみ、もといムクゲリュウアルマジロの白モコを、ぶんぶんと振り回しながら熱弁を奮った。



 ……のだが、その甲斐も虚しく、フェリシア以外の誰にもその熱意は届かなかった。




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