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082 心配で……



 「お嬢さま、あれほど一人で出かけないようにと言っておいたのに、どうして一人で出かけたんですか?」厳しい顔でステラに詰問をするグレタ。



 「あ、あの、ルキウスさんをびっくりさせようと思って、毎日頑張ってらっしゃるし、お腹も空いているだろうから……」しゅん、としながら答えるステラ。



 「そんなの一人で行く理由にはなりません!」グレタの目が、そんな理由ごときで、と怒っている。



 「ただいま戻りました。ん?」あからさまに不穏な空気に、怖気づくルキウス。



 「いいところに帰ってきましたルキウスくん。あなたも、お腹が空くとわかっているなら、お嬢さまに届けさせないで最初から持っていきなさい!」



 「……えっ?」ステラが届けてくれたカゴを手に持って呆然とするルキウス。



 「違います。お弁当はわたしが勝手に持っていったんです。ルキウスさんは悪くありません」



 「だったら、朝ルキウスくんがでかける前にお渡しなさい!」



 「グレタ、もうそのへんでいいじゃないか。お嬢も反省しているみたいだし」見かねたジョルジョが間に入る。



 「ジョル! あなたは黙ってて! だいたいあなた、昨日お嬢さまに料理を頼まれたとき、おかしいと思わなかったの? 何で気づかないの? 何をしてるのよ!」グレタの怒りがジョルジョに飛び火をした。



 グレタはジーノの一件以来、ステラが一人で外出することに異常に神経質になっていた。



 いつどこで他の竜眼主と出会(でくわ)すかわからないのだ。グレタはそのことを考えると、体の震えが止まらなくなるほど恐ろしくなる。



 「あ、あのグレタさん。なんか、そのすいません。僕があんなところで訓練を始めたから、そのステラさんは気を利かせてくたんだとおも」



 「お黙りなさい! 部外者は余計な口を挟まないで! いいですか、お嬢さまの足であの森を往復するのに、どれだけの時間がかかると思っているんです。あなたとは違うんですよ。もし、もし、途中で竜眼主に出会ってたら……ど……どうなっ……」大粒の涙をボロボロと零し、言葉に詰まるグレタ。



 グレタは言うことを聞かなかったことを怒っているのではない。心配なのだ。心配で、心配でたまらないのだ。



 ステラの身になにかあったらどうしよう。そう考えただけで心が引き裂かれそうになる。



 厳しく言い過ぎていることはわかっている。だけど、常に自分が側にいられるわけではない。だからもっと、自分で用心をして欲しいのだ。



 「もう嫌……どうすればいいの、(わたくし)は……」敵に見つからないようにするにはどうすればよいか、どうすればステラを守れるのか、ステラだけではないアリアとアンナもだ。



 毎日毎日そればかりを考えて神経がすり減り、頭がおかしくなりそうなのだ。



 床に座り込み顔を抑えて泣くグレタ。ステラがグレタを抱きしめて「ごめんなさい、ごめんなさい――」と謝りながら涙を流す。そこにアリアとアンナも駆け寄り、一緒に泣き出した。ジョルジョとルキウスも暗い顔で俯く……



 そんなグレタの膝を、ポンポン、と慰めるように叩くものがいた。



 グレタが、ふとそちらを見ると……目が合った……うんうん、とか頷いている白いモコモコのおおねずみ?



 「……ね、ねずみぃー!」




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