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073 仲間の気持ち、刺さる言葉



 本音を爆発させてステラを睨みつけるジーノ。



 そんなジーノに、悲しい顔でステラが問う。



 「自分のために生きたあなたは、思い残すことはないかもしれませんが、あなたと一緒に命を落とすお仲間のことはなんとも思わないのですか?」



 「はぁ、そんなこと知るか! あいつらが勝手について来たんだ。嫌なら逃げりゃあよかったんだよ!」



 ステラの目を避けるジーノ。



 「お前が知らない間に衛士にしたんだろうが! 俺たちが寝てる間に勝手にしたんだろうが! 逃げたくても逃げられなくしたのはお前だろうが!」



 リザイアがジーノに怒りを叩きつける。



 「呑気にぐうたら寝てたお前らがワリイんだよ! 何でもかんでも俺任せにしてたおめえらが、俺抜きで生きてけんのか? 竜眼主になった俺様が、お前らを衛士にして面倒をみてやろうと、いい思いをさせてやろうとしたんだろうが! 文句言ってねえで感謝しろ、このクソ野郎どもが!」



 「ああ、お前の言う通りだよ」突然チロが割って入った。



 「俺たちはジーノがいなきゃ今まで生きてこれなかった。ガキばっか四人で、あのクソッタレの村から逃げて、今日まで生きてこられたのは……ジーノ、お前のおかげだ。まあ、酷えこともされたがよ。……だけど、お前はいつも俺たちのことを考えてくれてた。それはよくわかってる。だから俺は、お前に……感謝してる」



 言葉を区切り、ジーノをしっかりと見つめ直す。



 「……だけどな、竜眼主になってからのお前は嫌いだ。今のお前はお前じゃねえ。どうしたんだよ? 竜眼ってのに乗っ取られちまったのか? ……残念だぜ……。だけど、俺はお前と一緒に生きたことを後悔してねえ。死ねばお前も元に戻るんだろ? ……また一緒にバカやろうぜ。……ありがとよ、ジーノ」



 「兄貴、おれ兄貴のこと好き、大好き。兄貴おれ助けてくれた。地主の坊っちゃんにおれ殺される、思った。こわかった。兄貴助けてくれた。うれしかった。ずっと兄貴おれにやさしかった。いつもご飯くれた。色んなことおしえてくれた。動物たちもみんな兄貴好き……兄貴、おれ死ぬのこわい。だけど、だけど……兄貴といっしょならがまんする。兄貴、死んでもまたおれの兄貴になってね。おれいい子にするから。……兄貴、兄貴、大好きだよ、兄貴……」



 めそめそと泣きながら話すフランコ。



 「……あっ、あのぉ、それと……あの、あの、アリア、ごめんね。痛いおもいさせて、ごめんね。お、怒ってるよね。ほんとにごめんね。でも、あの、あの、あのね、おねがいしていい。おれ死んだら動物逃してほしいの。けが治ってないのもいるけど、ご飯あげないと死ぬから。おねがい……。ごめんね、痛いおもいさせて、ほんとうにごめんね……」涙を流しながら一生懸命にアリアに謝るフランコ。そんなフランコを、アリアは哀しそうな瞳で見つめる。



 「俺は嫌だ! 俺は嫌だ! 俺は死にたくねえ! もっといい女を抱きてえ、いい酒も飲みてえ、うまい飯が食いてえ、金だって欲しい、やりてえことがいっぱいあんだよ! だから……だから、死にたくねえ……ステラ、いやステラ様、なんでも言うことを聞く、許して、お願いだから、俺だけでも許してくれよお」おいおいと泣き言を言うだけのリザイア。



 「…………」ジーノは意外だった。三人とも自分のことを嫌っている、恨みが募っている、そう思っていたのだ。でも、チロは感謝してる、と言ってくれた。フランコに大好きと言われたのは、正直嬉しかった。ずっと面倒をみてきた。何度も鬱陶しいと思った。だが、放っておけなかった。恥ずかしくて一度も言えなかったが、弟のように思っていた。リザイアは、あんなもんだろう。あいつに期待はしていない。



 だが、もう一つ衝撃的だったのは、チロに言われた言葉だ。『竜眼に乗っ取られたのか?』、確かにそうかもしれない。



 竜眼が覚醒したとき自分の中で何かが弾けた。万能感や支配欲ではない、これまでため込んでいた何かの塊が、心の奥で弾けた。そして、弾けた塊の中からドロドロとした憎しみが溢れ出した。次から次へと、尽きることなく溢れ出した。だから思った、壊してやる! そう強く思った。全部壊して作り直してやる。俺が全てを変えてやる。そんな思いがいつも頭の中を占めていた。そしてそれに沿って俺は行動をした……



 沈黙を続けるジーノにステラは、「もう宜しいのですか?」と尋ねる。



 「……」答えずにステラを見るジーノ。



 「どうされました?」と問うステラ。



 「……なあステラ、お前は竜眼主になったときこの半世界を変えてやろうと思ったか?」



 「いいえ、思いませんでした。わたしは……とても悲しかった。人の命を奪わねば変えられない世界など、悲しくないですか? たくさんの人を(あや)め、それで得た力で変えた世界は、本当に幸せな世界だと言えるのですか? ……わたしはそうは思えない。人の命を犠牲にして得られる安寧などありません。わたしは……人の命を食らって育つ力など、欲しくなかった。……だからわたしは……悲しかった」



 「……そうか……悲しかったか……」そう言ったきり、何かを考えこむように目を瞑るジーノ。



 二人の間に沈黙が流れる。ステラはじっとジーノの顔を見ていた。まるで、ジーノの中に起こっている微細な変化を何一つ見逃さないようにするかのごとく、じっと見ていた。



 「……あの、スぅ姉さま」アリアがおずおずと声をかける。言うべきかどうか迷っているようで、言いかけてはやめてを繰り返す。



 アンナがアリアの背中をポンポンと軽く叩き、優しく微笑みかけた。腹が決まった。



 「あのね、スぅ姉さま。フランコさんとチロさんは、アリアが殴られるのを庇ってくれたの。そ、その、さらわれたのは頭にくるけど、庇ってくれたのはちょっと、嬉しかった……」



 「そうだったのですか」と言ってステラは、フランコとチロのほうを見る。



 チロはバツが悪そうな感じでそっぽを向いている。フランコは、ごめんね、とまた小さな声で謝った。



 ステラはジーノに視線を戻すと、ジーノの心を見透かそうとするかのようにしっかりと、顔を見つめた。そして――



 「ジーノさん。わたしと取引をしませんか?」




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