071 グレタとアリアとアンナ
とどめを刺したジーノを、睨みつけたまま仁王立ちするグレタ。
ドン! (えっ?)グレタの腰に誰かが強く抱きついた。
グレタが振り向くと、アリアが背中に顔を押しつけるようにして抱きついている。
グレタはそっとアリアの腕をほどき、膝をついてアリアと目線を合わせる。
顔の傷は治っていた。ステラが既に治療してくれたようだ。それでも、額にかかった髪を上げ、顔の左右、首、肩、腕と、順に足まで、ケガがないかを丹念に確かめるグレタ。
「痛いところはない?」優しく尋ねるグレタ。
「……うん」目からポロポロと涙を零しながら頷くアリア。
「……よかった」そう言うとグレタは、腕を伸ばし、アリアを優しく包み込む。そして、しっかりと抱きしめ、「よかった……無事で……よかった……」と嗚咽を漏らす。
「……ご、ごめんなさぁーい!」アリアは大きな声で叫ぶと、グレタに力いっぱい抱きつき、わんわんと泣き出した。
きつく抱き合いながら泣く二人。堪らずアンナも駆け寄り、二人に抱きついて一緒に大声で泣き始めた。
三人は、互いに強く抱きしめ合いながら激しく泣き続ける。少し離れたところでそれを見ているステラとジョルジョ。二人も、静かに涙を流していた。
「わたしの娘か……」ぽつりとジョルジョが呟く。
「……二人が母親であるあなたのお姉様を亡くして、わたしの家に来たのは三歳のときでした。それ以来ずっと二人の母親代わりとして、世話をしてきたのはグレタさんですから……思わず出てしまったのでしょう。フフッ、どうしました? 羨ましいのですか?」
悪戯っぽく微笑みながらジョルジョを見るステラ。
「あっ、いやぁ……」と口ごもるジョルジョ。本音は、(まだまだ俺は入れないな……)であった。
アリアとアンナ。姉と義兄の忘れ形見。二人を守り通して亡くなった義兄に代わり、守らねば、そう決意して二人の親代わりになった。だが、やはり自分はまだまだだ。そう思い知らされて、正直淋しかった。
「えーっと……と、ところでお嬢、ルキウス君とフェリシアさんはどうでしたか?」と話題を変えるジョルジョ。
「大丈夫でした。二人とも無事です。さっき触れて確認しました。薬で眠っているだけです。恐らくあと二、三カイ(二、三時間)もすれば目が覚めると思います」
安心したのであろういつもの明るいステラの笑顔だ。
「どうします? 起こしますか?」とジョルジョ。
「いえ、先にジーノさんたちの始末をつけます。その……あまり、見られたくも、ないので……」と、言ったステラの顔に翳りが浮かぶ。
「……ですね。わかりました。では、網から下ろして寝かせておきます」
「お願いします」
そう返すとステラは、瞼を下ろして深く息を吸い込む――幾瞬間のあとゆっくりと上げた瞼の奥には、揺るぎない覚悟、が宿っていた。
「皆さん、継嗣戦はまだ終わっていません。最後の仕事をしましょう」
力を込め、厳かに、ステラは告げた。




