069 ヒリュウ継嗣線(その5)
(どうしてこいつが……)
グレタを相手にするはずだったチロだが、いま目の前にいるのはジョルジョだ。
だが、チロは焦ってなどいなかった。チロの戦い方からすると、グレタのほうがやりやすいのは確かだ。
だがそれは、ジョルジョが男で、フランコよりも体が大きいからではない。
間合いの問題だ。
やっかいなのは、ジョルジョが手にしている武器ハルバードだ。二トゥカ(2.4メートル)近くはある。その武器を操るジョルジョと戦うならば、ハルバードの倍近くは離れないと危険だろう。
チロの弾く鉄球の威力は、三トゥカ(3.6メートル)を超えると極端に威力が落ちる。だが、狙い通りに飛ばすだけならば六トゥカ(7.2メートル)は可能。狙いも無視すれば十トゥカ(十二メートル)はいける。
必殺の間合いは三トゥカ(3.6三メートル)以内。だが、どうやってあのハルバードをかい潜るか、それが問題だ。
だが、これまでも長柄武器を使う相手とは戦ったことがある。
これまでの戦いで感じていたのは、長柄を使う連中は体に向かって飛んでくる物を払うのが苦手、しかも散らして撃つとなお効果的、ということだ。
なので、武器が届かぬ距離から鉄球を連打し、相手が避けきれずに隙を見せた瞬間、間合いを詰めて仕留める。これまでもそれで凌いできた。
(ルキウスより速いってことはねえだろ。なら楽勝だ)
チロは、ウラ・リュウオンシを発動させて一瞬で距離を空ける。ジョルジョは動かない。
(へっへっ、ついてこれねえな)チロが停止し、鉄球を弾こうとしたとき、「うぉー!」と雄叫びをあげながらジョルジョが、右腕一本でハルバードを振り回し、チロとの距離を詰めてきた。
(うっ、はえぇ)
〈速さ〉のリュウオンシは使っていないようだ。だが、巨体からは想像できないほどにジョルジョは速かった。
(結構やべえな。動き回るか)
チロは戦術を変え、ルキウスとやり合ったときのように、動き回って鉄球を弾く。
チロとジョルジョの距離は五トゥカ(六メートル)余り。広角な範囲から撃ち出される鉄球を全てハルバードで受けるのは無理だ。
ジョルジョは、左手を広げて顔を覆い、あとは撃たれるに任せる。
(やっぱなりな、こうなるんだよ)
チロの心に余裕が生まれた。右に左に移動をしながら鉄球を浴びせ、徐々に距離を詰めるチロ。
だが、チロは気づいていない。心に余裕が生まれたあたりから、チロの動きが単調になっていることを……
(あともう少し――あっ⁉)二人の距離が三トゥカ半(4.2メートル)を切ろうとしたとき――「あんまり舐めんなぁ!」ジョルジョがハルバードを投げた! ぎりぎりで体を反らしてハルバードを躱すチロ、その肩をジョルジョが「もう逃さねえ!」とがっちり掴む。
「ひっ、どうして?」
「似たようなところでウロウロしてりゃ、誰でもわかるだろうがぁ!」
ジョルジョの右拳がチロの土手っ腹を――打ち抜く!
「ぐうえーっ」
ゲロを吐きながらチロは、失神した。




