051 ステラだ
日中の情報収集を終えて落ち合ったチロ、リザイア、フランコは、互いの顔を見合ってため息をついた。
最近ジーノの機嫌が悪い。いや、日に日に酷くなっている。しかも、以前より格段にキレやすくなっていた。
ジーノの苛立ちはわからなくはない。毎日毎日一日中歩き回っているのに、竜眼主どころかその手がかりの一端すら掴めないのだ。
だが、竜眼狩りが激しく動き回る王都で、自分が竜眼主だと吹聴しながら暮らしている奴などいるのだろうか。
傭兵を雇って竜眼主を探しているグループだってまだ見つけてはいない。それなのに、始めたばかりの自分たちに見つけられるわけがない。
と、文句を言いたいところではあるが、寝ている間に衛士にされた三人は、ジーノに逆らうことができない。
少し前だがジーノに殴られたときに、チロは殴り返そうとしたことがあった。だが、ジーノの金色の目で睨まれた瞬間、体が固まって動けなくなってしまった。
寝ている間なら、と考えてチロとリザイアは寝込みを襲ったこともあった。だが、棒を振りかぶるところまではできたが、何度やっても振り下ろすことができなかった。
そうやって失敗をするたびに、嫌というほど殴られ、もう反抗する気が失せていた。
ならば逃げようと、チロとリザイアは情報収集の途中で王都を出た。だが、王都を出てしばらくするとなぜか記憶が途切れる。そして、気がつくとジーノの家の前にいる。徒歩だろうが、馬だろうがなぜか戻っている。
チロとリザイアは、バカらしくなって逆らうのを止めた。罵られようとも殴られようとも耐えるしかない、そう悟ったのだ。
フランコだけは最初から、怒鳴られようが殴られようが抵抗することも逃げることもせず、兄貴ごめん、兄貴ごめん、といつも泣いて謝っていた。
今日も一日何の収穫もなかった。また、ジーノに殴られる。三人は重い足を引きずりながらジーノの家へと向かった。
ジーノの家の前まで来た三人は、誰ともなく立ち止まった。
家に入るのを躊躇する三人。収穫なしで帰ると、最初に扉を開けたやつに物が飛んでくる。
リザイアとフランコが、頼む、という目でチロの顔を見る。
(またかよ……)とチロは思ったが、やむを得ない。チロが扉を開けて中に入った。
「ジーノ、すまねえ。今日も何もわからなかった」
チロは、物が飛んできてもすぐに避けられるように、素早く家の中に入り身構えた。
だが、何も飛んでこない。
「おう、ご苦労。まぁ、座って酒でも飲めや。ピッツァもあるぞ」
ジーノの機嫌が悪くない。いや、それどころかかなりいい。テーブルの上に足を乗せ、ピッツァを食べながら酒を飲んでいる。
竜眼主の探索を始めて以来、こんなジーノを見たことがない。
(……ヤケになったのか?)
チロたちは何が起こったのかわからず、安堵よりもむしろ恐怖を感じた。
呆然と見つめる三人の視線に気づいたジーノが、ああっ、という感じで三人に告げる。
「見つけた。見つけたぞ、竜眼主を」
ジーノの言葉がすぐに理解できなかったのか、唖然とした様子の三人。
だが、徐々にその意味がわかり、三人は互いの顔を見合う。
「いぃやったー!」と手を上げ、互いに打ち鳴らして喜ぶ三人。
「マジか、ジーノ。さすがだぜ。で、どこの誰だ?」とチロが訊く。
ジーノはニヤリと笑いながら酒を呷り勿体ぶる。
「ふぅー」満足そうな顔で息を吐くジーノ。
酒が美味かったのか、竜眼主を見つけて気分が良いのか、そのどちらもか。ジーノは三人の顔をゆっくり順番に見ると、口を開いた。
「ステラだ」




