043 給仕係のルキウス(その1)
ルキウスとフェリシアがヒリュウの鱗亭に住み込みで働くようになってから一週間ほどが経った。
最初から全てを完璧にこなせたフェリシアと違い、色々な失敗を重ねたルキウスも、ようやく仕事に慣れ、給仕をしながら客と会話を楽しむ余裕がでてきた。
「お待たせしました。アナホリウズラのマッケローニ入りチーズたっぷり窯焼きと、あひっ」
「あっらぁーん。あひっ、だって。もぉかわいいん。あぁっ、このプリっとしたお尻、たまんないわぁ」
料理を運んできたルキウスの尻をムニムニと揉みながら舌なめずりをする常連客の冒険者アマンダ。
「ちょ、ちょっと、アマンダさん。止めてください。料理落としちゃいます……」
ルキウスは運んできた三品の料理を落とさないように必死でバランスをとりながら、くねくねと身を捩って抵抗をする。
「あーっ、まったあんたは自分だけいい思いしてぇ。んじゃ、あたいはこっち」とアマンダの向かいの席に座っているドナがルキウスの腿をスリスリと撫で始める。
「ド、ドナさんまで。やっ、やめ、止めてください」
「ずっるーい。うちもルキちゃんモミモミしたぁーい」と、ドナの隣に座っているラーラまでが席を立つ。
「はーい、そこのお姉さまがた。うちの店は給仕へのお触り禁止よ」
アマゾネス系おねえさまたちの蛮行を見兼ねたグレタが、アマンダとドナの手を取ってルキウスの体から離した。
「ちょっとぉ、何すんのよぉ」と不満気な顔をするアマンダ。
「『何すんのよぉ』じゃないでしょ。あんたこの前彼氏ができたって言ってなかった? そんなにお尻が触りたいなら彼氏のを触りなさい」とアマンダを咎めるグレタ。
「あっ、あーあ」ドナとラーラが揃って、言っちゃった知ぃーらない、という目でグレタを見る。
「かれぴ……かれぴなんて……うわーぁん、あーん、あーん」と突然泣き出すアマンダ。
「えっ、なに?」と驚くグレタ。
「はーっ。こいつさぁ、まぁた男に逃げられたの。しかも、金全部盗られて。だぁから、あんな男やめとけって言ったのよ」とラーラ。
「だあ、だっ、だっでぇ、あだじがいじばんがばいいって、がばいいってぇ、あーん、けっこ、けっこんしたいっでぇ、あーん、じあばぜにずるってぇー、ああーん、いっだあー、あー、ぐでだ、ぐでだぁ、ぎいでぇー」とグレタに縋って泣きじゃくるアマンダ。
「はぁー」グレタは、ため息をつくとルキウスに、ここはいいから、と目で合図を送り「わかったわ。一杯おごるから泣かないの」とアマンダの頭を優しく撫でて隣の席に座った。
「あびがど、ぐでだー」とグレタに抱きついて泣くアマンダ。
アマゾネス系おねえさまたちから開放され、ほっ、としたルキウスは、食器を片付けるために空いたテーブルに向かった。




