042 覚醒(その4)
「か、替えてくれた」引きつった顔をしながら、チロがテーブルの上に両替した大銅貨を置く。
「どうだ。信じる気になったか?」
「やったぜ! やった、やったぁー!」
「ジーノ凄えぜ! 大金持ちだ!」
「兄貴、兄貴すごい!」
お金を作り出せるジーノの力に三人は諸手を上げて喜ぶ。
「金貨は、金貨は作れんのか?」とリザイアが勢い込んで訊いてくる。
「いや、金貨は無理だった。金の欠片はできたんだがな。まだまだ力が足りねえのかもしれねえ」
ジーノは三人が寝ている間にどこまで作れるかを試していた。完璧に作れたのは小銀貨以下で。大金貨、小金貨は丸く平たい金の塊にしかならなかった。
大銀貨は、そこそこの形にはなった。だが、偽物くさくて、とてもじゃないが使えるような代物ではなかった。
竜眼主が〈サクセイ〉で作り出せるものの数や大きさ、複雑さなどは、その竜眼主が持つもともとのリュウオンシと、覚醒したウラ・リュウオンシである〈サクセイ〉の両方のレベルに比例する。また、作りたいものをより正確に想像する力も必要である。
そのため、より複雑で規模の大きなものを作るためには、二つのリュウオンシのレベルを上げるのと同時に、想像する能力も鍛えなければならない。
「それでもジーノ、おめえは凄えぜ。昨日、俺たちに女や酒を奢ってくれたのは竜眼主になった祝いか?」と訊くチロ。
「いや、それは違う。あれはおめえらに支払った代金だ」
「はっ、代金? 俺らジーノになんか売ったか?」チロが不思議そうな顔をする。
「あぁ、売って貰ったよ。――おめえらの人生を、命をな! おめえらは俺の衛士だ。わかるか衛士? 衛士ってのはな、竜眼主に生殺与奪を握られた完全な配下だ。もう俺の命令には逆らえねえ。俺が戦えっつったら戦う。俺が死ねっつったら死ぬ。そして、俺が死んだらお前らも死ぬ。おめえらは生涯この俺から逃げられねぇんだよ! ギャアハッハッハァー」
三人が寝ているときにジーノがしていた傷口を合わせる行為は『竜血の契り』と呼ばれる契約の儀式である。
竜眼主との契約は、合わせた傷口を通して互いの血を混ぜ、その混ざった血が互いの体に取り込まれることで成立する。
「生殺与奪を握られた完全な配下ってどういうことだよ!」チロが怒鳴る。
「嫌だ! 俺は嫌だ!」と言ってリザイアがドアのほうへと逃げ出す。
「リザイア戻れ。椅子に座れ」と金色に瞳を炯らせたジーノが命じた。
すると、ドアに手をかけていたリザイアの動きが止まり、振り返ってテーブルの前まで戻ると、椅子を引いて座った。
「見たか? おめえらは俺の命令には逆らえねえ。なんならリザイア、死ねって命じてやろうか?」
青くなって顔を横に思いっきり振るリザイア。
「いいか、俺たちはこれから竜眼主を探し出し、そいつらを殺して力を奪う。そして、俺がこの半世界の支配者になる」
ジーノは金色に炯る瞳で三人の顔をゆっくりと順番に見る。そして……
「まずは、この王都にいる竜眼主どもをぶっ殺す」と告げた……




