040 覚醒(その2)
ジーノは、フランコにおぶられて家に着くと、暖炉から炭を搔き出して底のレンガを外し、中から両の手に余るほどの大きさの革袋を取り出した。
「おめら、これで酒と女と食い物を買ってこい」
そう言ってジーノは、テーブルの上に革袋を置いた。
「あ、開けていいか?」チロが恐る恐る訊く。
「ああ」
チロが革袋を開けると、小金貨や大銀貨がたっぷりと入っていた。
「おっ、おおぅぉ、凄え。ジーノ、凄えじゃねえか」あまりの大金に、チロ、リザイア、フランコの目が輝く。
「これ、これを使って、い、いいのか?」リザイアが興奮して訊く。
「構わねえ。好きなだけ使ってこい」
三人は歓喜の叫びを上げると、なぜ突然ジーノがそんな大金を使えなどと言い出したのか、そんな単純なことを疑うこともなく、我先にとジーノの家を飛び出した。
そんな連中を、口元に小さな笑みを刻んだジーノが冷ややかな目で見送った。
チロたち三人は、二カイ(二時間)ほども時間をかけ、高級店の娼婦と、上等な酒と料理をたっぷりと買いこんで戻ってきた。
それからは乱痴気騒ぎだ。アグリコラの面々は、朝までたっぷりと飲みまくり、食いまくり、ヤりまくり、すべてを存分に堪能しつくしてから眠りに落ちた。
――だがジーノは、一カイ(一時間)もしないうちに目を覚まし、女たちを追い返した。
ジーノは、短剣を取り出すと左手の親指に血が小さく盛り上がる程度の傷を作った。
そしてチロに近づくと、チロの右手の親指にも自分と同程度の傷を作り、その傷に自分の指の傷を押しつけた。
すると、チロの体が麻痺したようにブルブルと震えだした。しかし、その震えはすぐに収まり、チロは何もなかったかのようにまた眠り続ける。
ジーノは、チロにしたのと同じことをリザイアとフランコにも行った。
何をされたかも知らずに眠りこける三人に憐憫の眼差しを向けて笑うジーノ。
その瞳が……一瞬金色に炯った……




