003 セイバーズ(その1)
◆千年暦九九七年
フミの月二日
早朝
ビタロス王国の王都カプトムディアから少し離れたパルコイデスの森を、五人の男女が馬で駆けていた。
この五人はセイバーズという冒険者パーティーで、今はクエストの帰りである。
いつもは陽気な五人だが、疲れているのか陰鬱なムードを漂わせ、会話もほとんど交わしていない。
「はあ辛え、ほんと辛いわ」
精悍な顔立ちをした筋骨たくましい若者が、背中を丸め、肩をがっくりと落としながらこぼす。
「マルクス様! いい加減にして下さい。そういうことを言わないでって、何度言えばわかるんですか」
苛立たしげな物言いは、燃え上がる炎のような赤髪をした長身の娘フェリシア。
「わあってるよ。でも、ついでちまうんだからしょうがねえじゃねえか」
「しょうがなくはありません。マルクス様は辛抱が足らないんです。辛抱が! 少しはルキウス様を見習って欲しいものです」
「はぁー? ルキは関係ねえだろ。だいだいフェリスは、ルキウス、ルキウスって贔屓が過ぎんだよ」
「当然です。たかがこのていどの臭いで、ぶちぶちぶちぶち。もうほんとうるさい! マルクス様は人間が小さいんです」
「おい、ちょっと待てよ! そこまで言うことないだろ! 人間が小さいってどういうことだよ!」
ぐぬぬぬぬっ、と睨み合う二人の間に入ったのは、明るい茶色の髪に黒い瞳をしたリーダーのルキウス。
「二人ともいい加減にしなよ。辛いのはみんな同じなんだし、もうちょっとだから我慢しようよ」
「あーくそっ! イライラする。なぁルキ。ほんとに持って帰んなきゃだめなのか?」
「マルクス、わかってるだろ? グールヒポダイルは危険度Aの討伐必須害魔獣なんだ。討伐したら冒険者ギルドに渡さないと」
「だけどよぉ。飯も食ってねえし、寝てねえし、もう限界だぜ」
「食事がとれなくなったのはマルクス様のせいですけどね」
まだ機嫌が悪いのか、そっぽを向きながらフェリシアがまた混ぜ返す。
「あれはしょうがないだろ。だいたい、食い物で気をそらせって言ったのはフェリスじゃねえか」
「だからって全部投げることないじゃないですか!」
「あーあーはいはい。俺が悪うございました!」
「二人とも! ほんといい加」
「ああーうっせえー!」
ルキウスの話に割って入ったのは、竜ショウ国の馬乗り袴に胴鎧を着けた、冷たく輝く銀髪のヒヨリ=ツキノである。
「さあっきから聞いてりゃ、ぐちぐちぐちぐち、うっせえ! こっちゃあ、昨日の夜から寝ずに魔法かけてんだ。マナもかっすかすで意識も飛びかけてんだよ! ちったあ静かにしろや!」
爆発するヒヨリ=ツキノに
「……ごめんなさい」
と、三人は揃って頭を下げた。