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038 即戦力



 「……えーっ、と。フェリスは、調理場にも入ってましたから、ここでもすぐに慣れると思います」フォローに入るルキウス。



 「それはとってもありがたいです。先日のアリアの件もありますし、わたしもできるだけホールに出たいと思っていましたので、本当に助かります」と、ステラが微笑む。



 「あの……ちょっとみんな。待って……」いよいよ悪い予感が現実化しそうで焦るグレタ。



 「お部屋はどうしましょう? 屋根裏はルキウスさんが使われてるしぃ……」



 思案するステラに、間髪入れずに言葉をつなぐグレタ。



 「そ、そうですよ! 部屋がない。子爵家のご令嬢に使っていただくお部屋などうちにはございません」



 「その点はご心配なく。先程も申しましたようにわたしはルキウス様専用フェリシアです。なので、ルキウス様と同じ部屋にして下さい」



 「はぁ? ダメです! あなた何を仰ってるの? 嫁入り前の若い娘が男性と同じ部屋なんて。いけません! うちには小さい子供もいるんです。不許可です!」とフェリシアを叱りつけるグレタ。



 「あなたには関係ないことです。わたしとルキウス様の間を引き裂こうとするならば、あなたを敵として処理しなければなりません」突然槍を構えるフェリシア。



 「フェリス! ふざけるのもいい加減にしなよ! 家に送り返すよ!」



 ルキウスに叱られて、シュン、としながらも「ふざけてないのにぃ……」と小さい声でフェリシアが反論をする。



 「ステラさん、僕は裏の小屋に移りますので、屋根裏にフェリスを置いてやってくれませんか?」



 「よろしいんですか? あの、裏の小屋は食材なんかも置いてるんですけど……」



 「ええ、でも結構広いし、綺麗に掃除もされてるんで僕は平気です。まぁでもぉ、エンリコじぃちゃんに言って一応仕切りぐらいは作ってもらおうかと思うんですけど。いいでしょうか? あっ、その費用は僕とフェリシアを置いていただく必要経費ということで、ばあちゃんに回すのでご心配なく」



 「あのぉ、本当にそれでよろしいのですか? お、お金も……」



 「はい。問題ありません」



 「では、決まりということで。フェリシアさん。早速昼の営業からお願いできますか? ジョルジョさん、フェリシアさんに色々と教えてあげて下さい」とステラ。



 「いやぁ、助かりますよ。フェリシアさん、よろしくお願いします」と喜ぶジョルジョ。



 「フェリシアお姉ちゃん。今晩、この間のお話の続きをしてぇ」とフェリシアの手を取って甘えるアリアとアンナ。



 こうして皆が、フェリシアを囲んで和気あいあいと楽しげに話をしている輪の外で、……なんでまた私だけ……、と一人淋しく涙を流す、グレタであった。






 早速、昼の営業からお店デビューをしたフェリシア。



 最初こそ、勝手の違う調理場や店独特のレシピにまごつくこともあったが、すぐに要領を得てテキパキと仕事をこなせるようになった。



 レオーネ家での家事とエデュカティオ時代の修行の成果が遺憾なく発揮され、夜営業が終わる頃には、作り方をいちいちジョルジョに確認しなくても、ちゃっちゃと自分で作れるようになっていた。



 おかげでいつもより早くお客に料理を提供できるようになり、客がイライラすることもなく、給仕係が叱られることもなく、客も店員もみんな笑顔で営業を終えることができた。



 これはさすがにグレタも認めざるを得ず「今日のところはあなたがいて助かりました……」と、悔しそうな顔をしながらもフェリシアに感謝の言葉を述べたのであった。




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