033 ここに置いていく
ステラたちを護らせて欲しいと頭を下げるアウラとオスカーに、
「お言葉には感謝いたします。ですが、これはわたしたちに課せられた戦いです。アウラ様たちを巻き込むわけにはいきません」
毅然とした強い言葉で断るステラ。
「……そうか、わかった。意志は固いようじゃの……」
あまりにもあっさりと引き下がるアウラに、拍子抜けするステラたち。しかし――
「では、孫をここに置いていく。ルキ、わしらの代わりにステラちゃんたちをお護りせえ」
(はっ? なんですと?)、「ちょっ、ちょっとお待ち下さい。どういうことですか?」とグレタが慌てて訊き直す。
「だって、あんたらはわしらに護られたくない。じゃがの、わしらはあんたらを護りたい。だから、間を取って孫をここに置いていく。好きに使ってくれてええからね」
「あの、それのどこが間を取っているんですか?」と混乱しながらもグレタがさらに食らいつく。
「そうだよ、ばあちゃん。何を勝手なことを。ステラさんたちの迷惑も考えなよ」
「なんじゃ。お前は嫌なんかい?」
「えっ? い、嫌じゃないよ。こんな話を聞いたら……僕だってステラさんたちを護りたい、けど……」
「なら、ええじゃろ」
「いや、僕が良くても、ステラさんたちが良くないでしょう! だいたい住み込みなんて……やっ、やっぱり、まずいでしょぉ……」
「何がまずいんじゃ? ――ほぉ、お前、ステラちゃんに惚れとるのか?」
「なっ、ななななっ、何を言ってんの!」
「ルキウスさん! あなた、お嬢さまに懸想をされてるんですか? お嬢様、一体どういうことなんです?」とグレタが母親モードに突入した。
当のステラは、恥ずかしのか、嬉しいのか、はたまたルキウスに気があるのか、顔を真っ赤にして俯きながらモジモジとしている。
「お嬢さまぁー! いったい昨日何があったんです。いけません! 許しませんよ! お嬢さまにはまだ早過ぎます」
「えー、グぅちゃん、ひどーい。スぅ姉さまだってお年頃なんだよぉ。恋の一つや二つぐらい、いいじゃなぁい」とアリアとアンナが抗議をする。
「くっ、こんなに早くお嬢が婿を取るなんて……」とジョルジョが薄っすらと涙を浮かべる。
「婿? 婿じゃなーい! 婿など取りません。まだダメ! いけません!」と、どんどんエキサイトするグレタ。
「ステラちゃん、どうじゃ。わしの孫と暮らすのは嫌か?」
「えっ? い、嫌、では……ありません……」と、ますます顔を赤くするステラ。
「なら決まりじゃな。あっ、部屋なんぞいらんからね。店の端っこに藁でも敷いてくれれば十分じゃから」とアウラ。
「ダメー! ダメー! 勝手に決めないで下さい」
「藁は可哀想です。どこか使えるお部屋がありましたっけ?」
「あっ、僕なら藁でも平気ですよ」
「アーたちの部屋でもいいよぉ。ねえっ、ルキウスお兄ちゃん」
「片付ければ屋根裏が使えますよ、お嬢」とグレタを無視して話が進む。
「みんな止めなさい! なんですか、既にルキウスさんが一緒に住むことになっているじゃありませんか!」
(そう言えば⁉)と気づくステラたち。
「いつの間にかそうなっていましたね」と言ってニコニコと笑うステラ。
いやぁ本当にぃ、とルキウス、アリア、アンナ、ジョルジョも笑う。
ステラは、初めは絶対に断ろうと思っていた。だが、話しているうちになんだか楽しくなり、単純かもしれないが、そういうのもいいかなっ、と思うようになっていた。
それに、なぜかルキウスには惹かれるものがあった。いや、離れ難かった……というほうが本音、なのかもしれない。
「ふふっ。何だか楽しそうですね。ちょうどお店のほうも人手が欲しいと思っていましたから。ルキウスさん……もし、ご迷惑でなければ……いかがですか?」
「迷惑なんて、とんでもない。よ、よろしくお願いします!」
いやぁ、まとまったねえ、よかったぁ、と和気あいあいとした雰囲気のなか、……なんでそうなる……、と一人愕然とする、グレタであった。




