032 竜眼主
ステラを竜眼主だと見抜いたアウラは、ゆっくりとステラたちを見回し、真剣な眼差しで話し始めた。
「竜眼主だということは無闇に話さんほうがええからの。黙っとるのは正解じゃよ。ビタロスは陛下の命で竜眼狩りが禁止されとるが、裏では色々と動いとる奴らがおる。わしらが仕入れた情報では、つい最近突然活発に動き出したグループがあってのぉ、そこはかなり強引な手を使っとるらしい。じゃからわしらは、ステラちゃんたちのことを心配しとったんじゃ」
アウラの言葉に、ステラたちは青くなり、身を固くする。
しかしなぜ、これほどまでに皆は神経質になっているのか? 竜眼主にはいったい何があるというのか?
竜眼主とは、ヒリュウ霊が与えるウラ・リュウオンシ〈サクセイ〉が、後天的に覚醒した者のことである。
竜眼主は、千年紀の終わりに行われるヒリュウ継嗣戦で対戦し、互いの力を奪い合う。
そして、それに勝ち残った者がヒリュウ霊に認められると、ヒリュウ霊の力を補完するために、人を超えたヒリュウの子、リュウ継嗣になる。
リュウ継嗣に選ばれるとヒリュウ霊からウラ・リュウオンシ〈ソウゾウ〉が与えられる。
この〈ソウゾウ〉には、様々なものを改変する力と、新たに創り出す力の両方が備わっている。
強い力を持つリュウ継嗣ならば、日ミツル半世界の殆ど全てを、自分の思いのままに創り変えることさえできる。
すなわち、次の千年紀を自分の思い通りの世界にすることも可能なのだ。
そのため、竜眼主を狙う者は多い。
身内に竜眼が覚醒する(〈サクセイ〉が覚醒し、瞳が金色になること)と、家族の中でも殺し合いが起きるほどなのだ。
なので、他人の「助けたい」などという言葉をそう簡単に信じることはできないし、信じてはならない。
そして、竜眼主を狙う者たちの中で最も厄介なのが竜眼狩りの連中で、その目的は二つある。
一つは自分の言いなりになる竜眼主を確保するため(自らが竜眼主ならばこれはない)。
もう一つは、捕まえた竜眼主を、自分が確保している竜眼主(もしくは自分自身)の〈サクセイ〉を進化させる餌にするためである。
それをよく知っているグレタたちは、アウラの言葉を聞きながらもその真意を測りかねていた。
「実はな、大巫女様からティアマト家の惨劇は継嗣戦絡みではないか、と聞いとったのじゃ。そして、見つかった遺体の中に竜眼主と思われる者がおったとも仰られていた」
ステラたちの顔からよりいっそう血の気が失せる。
「……いったい、何が目的ですか?」警戒を崩さずにグレタが訊く。
そんなグレタに優しい目を向け、アウラは続ける。
「大巫女様に呼び出されたとき、最後にこう仰られての。『ヒリュウの御霊は決してこのような惨劇をお望みではありません。本来継嗣戦とはこうあるべきではないのです』と」
アウラは皆の顔を順に見て、言葉が届いているかを確かめる。
「わしはな、それからずっと考えとった。で、思ったんじゃ。わしらは継嗣戦とは殺し合いだと思うておるが、本当は違うのでは、とな。だってそうじゃろ、殺し合いに長けた者ばかりがリュウ継嗣になっとったら、次の千年紀は半世界中で殺し合う、戦しかない世界になりかねん。じゃから、そうならぬように、ステラちゃんのような戦闘には無縁の者にも竜眼が覚醒するのじゃなかろうかと」
グレタたちは、アウラの言葉を聞きながら、以前オレステスが同じようなことを言っていたのを思い出していた。
「だが、戦闘に無縁の者たちが継嗣戦を生き抜くのは至難の業じゃ。じゃから、戦闘に長けたわしらに、あんたがたを護らせて欲しい。頼む」
アウラとオスカーが懇願するように頭を下げた。




