031 手相
「しかし、あんたらよう無事にビタロスまで来なさったのぉ。他の国は竜眼狩りやらでえらい荒れとったろぉ」
「……えっ、ええ、まぁ。運がよかったんでしょう、ね」
グレタがぎごちない笑顔を返す。
「なるほどのぉ。運は大事じゃ。運と言えばな、実はわし、リュウオンシの鑑定だけじゃのうて運勢も見れるんじゃよ。特に手相が得意での。ステラちゃん、是非あんたの手相を見させてくれんかの?」
ステラに手を伸ばしてアウラが催促をする。
「あっ、えーっ。では、お願いします」とステラは自分の手をアウラの手のひらに重ねる。
アウラが「ふむ。むむむむむっ」と難しい顔をしながらステラの手をあっちこっちに向けながらいじり回していると、「痛っ」とステラが小さな声を上げた。
「おおこれは申し訳ない。指輪の飾りが引っかかってしもうたか。大丈夫かい?」
アウラの指輪にはステラの血が少し付着していた。
「ええ、大丈夫です。すぐ治せますから」
ステラが、人差し指の先にできた小さな傷を反対の手の親指で撫でると、何もなかったかのように傷は消えてしまった。
「見事なもんじゃのうぉ。リュウオンシは〈治癒〉か。…………そして〈サクセイ〉……ステラちゃん、あんた竜眼主だね」
「⁉」唐突に発せられたアウラの言葉に反応し、グレタとジョルジョが身を乗り出そうとする。
だが、動けない。
圧されているのだ、オスカーの殺気に。一歩でも動けば斬る、という猛烈な圧力に。
「今な、あんたのリュウオンシを鑑定させてもらった。わしは血を使ってリュウオンシを鑑定するんでな。けがをさせて申し訳ない」
「……いっ、いったい、なんの真似です」額にフツフツと汗粒を浮かべ、グレタが問う。
「安心しとくれ。わしらはあんたらの敵ではない。助けたいんじゃ。小狡い手を使ったことは詫びる。じゃがな、こうでもせんと竜眼主だとは打ち明けてくれんかったじゃろ。許しとくれ」
アウラはそう言うとオスカーに軽く手を振る。
とたんにグレタとジョルジョの体はオスカーの呪縛から開放された。




