028 このお茶の名前、知っとるよな?
ステラたちが用意したお茶が、伯爵家でも手に入りにくい茶葉だと言うルキウスの言葉に動揺するステラたち。
アウラは、その動揺を見逃さず、冷ややかな目を向け、質問をする。
「あんたがた――これをどうやって、手に入れなさった?」
「あっ、えっ。これはぁ、その……。し、食材を仕入れているお店から、です」
歯切れの悪い返答をするグレタ。
「食材を? それはどこかね?」
さらに問うアウラ。
「マルティーニ商会です。ご存知ですよね? 昨日はフィリッポさんも一緒だったと聞いていますから」
マルティーニ商会は、セイバーズのメンバーであるフィリッポの実家で、ビタロス王国一の大商会である。
「あっ、そうなんだ? うちと同じですね。手に入れるの大変だってエンリコじぃちゃん言ってたけど、たくさん仕入れられたのかな?」
ルキウスが呑気に入れた横槍に、息を呑むグレタたち。
「あの、ま、間違えました……えっとぉ……」
「このお茶の名前、知っとるよな?」
言葉に詰まるグレタを遮り、アウラが訊く。
「……ハギオスダイヤモンド……です」
「そうじゃの。確かもう一つ呼び名があったのぉ。知っとるか?」
「…………ゴールデンリーフ……」
問うアウラに答えるグレタ。
ステラや後ろのジョルジョたちは下を向いている。
「ダイヤモンドにゴールドとは大袈裟な名前じゃのぉ。じゃがこのお茶は、半世界北部最大の王国、ハギオスドラコーンの王室御用達になっとるブレンド茶じゃ。大仰な名前がつくのも納得じゃて」
そう言ってアウラはお茶を一口飲み、うんうん、と頷く。
「ところで、なんでゴールデンリーフって呼ばれとるか知っとるか? 正式な名前はハギオスダイヤモンドじゃからの。まっ、あだ名みたいなもんじゃな」
アウラは、グレタとステラを順に見るが、二人は口を開かない。
「ルキ、知っとるか?」
「あっ、うん。一匙の茶葉を買うのに一匙の金が必要、だったと思うけど。違ったっけ?」
「おうとる。まっ、実際はそんなにせんがな。まぁ、それぐらい高いってことじゃ」
アウラはお茶を含み満足そうな顔をする。だが、ステラたちにそんな余裕は見られない。
「あんたら、どこから来なさった?」とアウラが訊く。
「……えっ……あっ、あの、ヒスペリア王国、です……」とグレタが答える。
「ほおほお、ヒスペリア王国かい。ビタロスよりは、ちぃとじゃがハギオスドラコーンに近いのぉ。で、ヒスペリアで何をなさっとった?」
「あー、の。い、今と同じ、料理店を……」と答えるグレタ。
「ばあちゃん。さっきから何を訊いてるのさ。何か問い詰めてるみたいで失礼だよ」
「あほか。初対面だからこそ、互いを理解するために色々訊いとるんじゃ。お前は黙っとれ」
アウラはグレタに向き直る。
「ならもしかして、そこにおりなさるときもこの茶葉を扱われとったんかい?」
「えっ、ええ。そうです。……あっ、そうそう、お茶は、こ、こちらに越してくるときに……一緒に持って……きました……」
「ほーぉ。なるほどのぉ。いや、失礼した、納得したわ。しかし、こんな高級なお茶を出す料理店をしなさってたかぁ。大したもんじゃ。――それなのにビタロスに来て大衆食堂をなさっているとは、何かよっぽどのご事情がお有りのようじゃのぉ」
「止めなよ、ばあちゃん。ほんと失礼だよ。皆さん、祖母が失礼なことばかりお訊きして申し訳ありません」
ルキウスが椅子から立ち上がって詫びる。
「あっ、いえ、あのぉ。お気になさらずに……」力なくステラが応える。
「ティアマト家」
ルキウスたちのやり取りを無視して、アウラが呟いた。




