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027 仲良うしてくれんかのぉ……



 「驚きました。ルキウスさ、あっ、えールキウス様が伯爵家のご子息とは……。数々の非礼をお詫びいたします」



 席についたら今度はステラが詫びをし始めた。



 「あっ、ちょっとステラさん。あの、貴族の息子とか全然関係ないんで。様とかなしにして下さい。僕はただの駆け出し冒険者です。そ、それに、非礼をしたのは……僕の、ほうですから……」



 貴族の息子ということで余計な気まで使わせることになり、二重に申し訳ない気持ちになるルキウス。



 「うーん。わしらはな、なんてぇのかぁ……成り上がりでな。爵位は、うちのジジィが戦争で活躍した褒美なんじゃが、正直分不相応じゃと思っとる。わしもうちのジジィも、そらもう貧乏な村の出身でな。子供んときは、腹が減ったらそのへんの草をむしって食っとったぐらいじゃ。それに息子が生まれるまでは半世界中をずっと放浪しとってのぉ。いきなり貴族にされてもピンとこんのじゃ」



 そう言ってアウラがチラリと後ろの老紳士を見ると、老紳士も小さく頷いていた。



 「それに孫はの、事情があってわしらジジババが育てたから、この子も貴族なんてものに、なぁんの値打ちも感じとらん。なっ、お願いじゃから普通に仲ようしてくれんかのぉ」



 そう言ってアウラは、ステラたちに優しく微笑む。



 ステラは、アウラの言葉を聞いているうちに、自然とそれを受け入れる気になっていた。



 だがそれは、アウラの話に納得したからではない。



 なぜかステラは、アウラを知っているような気がしたのだ。



 それも、つい最近ではなく、ずっと昔から知っている、そう思えてならない。



 何よりも、こうしてアウラと向き合っていると、とても懐かしく、心が穏やかになる。



 「わかりました。あの、では……ルキウスさん。昨日のことは本当に気にしないで下さい。そうでないと、わたしも貴方に失礼なことをしたという気持ちが収まりません。だから……。お互いもう気にしないってことで、どうですか? おあいこです。そして……これから、あの……よろしくお願いします」



 ほんのりと赤く頬を染めたステラが、眩いばかりの笑顔をルキウスに向ける。



 「……はい。わかりました。……あのぉ……ステラさん。こちらこそ、どうかよろしく、おねがいします……」



 目隠しをしているルキウスにステラの笑顔は見えてはいない。だが、そう感じたのであろう、ルキウスも頬を赤く染め、笑顔を返した。



 ステラは少しはにかんだあと、正面のアウラに向き直る。



 「アウラ様。厚かましいかもしれませんが、この度の件を契機に今後親しくお付き合いをいただけると幸甚に存じます」



 その言葉にアウラも「あぁもう、こちらこそよろしくお願いいたします」と笑顔で応えた。






 「うむ。ようやくまとまったようじゃの。いやぁ喋りすぎて喉が渇いた。お茶、いただいてもいいかい?」



 「あっ、申し訳ありません。冷めてしまったので、すぐに淹れ直します」とグレタが立とうとすると、



 「いやぁ、ええんじゃ、ええんじゃ。そんなんもったいないって。さっきからいい匂いがしとるから気になっとっての。そんじゃ、いただきます」



 そう言ってアウラはカップを手に取り、止めようとするグレタに気づかぬふりをしてお茶を飲んだ。



 「おお、これは美味しいのぉ。うーん。ええ茶葉をつこうてなさる。おっ、ルキ。おまえさんもいただけ」



 そう言われても、と目隠しをしているルキウスが戸惑っていると、後ろに控えていた老紳士が「坊っちゃん。失礼いたします」とルキウスの両手に自分の手を添え、ルキウスにカップを持たせる。そして、口もとまで運び「熱いのでお気をつけ下さい」とカップを軽く唇に当てる。



 「あぁっ、ほんとだ。これは美味しい。これって母様が好きなお茶だよね。母様はなかなか手に入らないって言ってたけど、料理店だと入手しやすいのかなぁ」



 ルキウスの言葉を聞いたステラたちの顔に、わずかな動揺が浮ぶ。



 「確かに。これはヘレナが好んどるお茶じゃ。あんたがた――これをどうやって、手に入れなさった?」



 先程まで笑みを湛えていたアウラの目が、獲物を捉えた猛禽類のごとく、鋭く光り、冷ややかに……ステラを見据えた。




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