026 自己紹介
アウラとルキウス、そして付き添いの老紳士は、昨日ルキウスがおかした非礼を詫びにヒリュウの鱗亭を訪れた。
必死に詫びるルキウスに、気にしていませんよ、とウンボロゴロスの仮面を被り、おどけた仕草で言うステラ。
そんなステラが気に入ったのか、お茶でも飲みながら世間話でも、とアウラが提案し、三人はニ階にある居間に通された。
「ところでステラさん。そのお面、もう取ってもええんじゃないか?」
「いや、でもぉ……」
気遣うアウラに、なぜか躊躇するステラ。
「いやいや。孫はほれ、目隠ししとるから。フェリシアから話は聞いとるよ。顔を直接見なんだら大丈夫なんじゃろ。なっ、お面を取って顔を見せておくれ」
「目は大丈夫なのですか?」小首を傾げながらお面の娘が訊く。
「ええ、これは違います。僕の目は平気ですから、どうかお面を外して下さい」
「そ、そうですか? では……」
ちょっと名残惜しそうにしながらもステラがお面を外す。
(ほぉ……なるほどのぉ)アウラがステラの顔をじっと見つめる。
「あっあの、アウラ様。えーと、わたしの顔に何かついていますか……」
アウラがあまりにもじっと見つめてくるので、何かこそばゆくなりステラが訊いた。
「あっ、いやいや。これは失礼した。えー、では改めて自己紹介をさせてもらいます。わたしはアウラ・レオーネ。ルキウスの祖母で仕事は鑑定士をしておる。で、本日お伺いしたのは昨日の孫の件です。行きがかりとはいえお店で暴れて色々と壊した上に、ステラさんに非礼な振る舞いまでして本当に申し訳ありません。それに、脚の傷も綺麗に治してもろうて、ありがとうございます」とアウラ、ルキウスそして老紳士が頭を下げる。
「えっ? 鑑定士の……アウラ? あの……失礼ですが、達人鑑定士のアウラ様ですか?」
グレタが慌てた感じでアウラに尋ねる。
「いやぁ、なに。一応な、鑑定士のレベルとしては達人ってのをいただいておるが、普通の婆さんじゃよ」とアウラは少し照れる。
(やっぱり⁉)グレタは慌ててステラの手を取って立ち上がり、椅子の後ろに控えていたジョルジョたちにも目配せをすると、全員で扉の前に移動した。
「失礼をいたしましたポリエンティア伯爵夫人。この度の非礼、深くお詫びいたします」
グレタは貴族に対するお辞儀をしたあと、謝罪を述べ、深く頭を下げる。
「えっ⁉」グレタの言葉に一瞬戸惑うが、ステラたちもすぐにグレタに倣う。
「ちょ、ちょちょちょ、あんたら、何をしとるの。詫びにきとるのはわしらのほうなんじゃよ。うちのジジィはとうに爵位を息子に譲っとる。わしはもう、ただのばあさんじゃ。いいから座って。なっ」
アウラは立ち上がって懇願するが「いや、しかし……」と逡巡するグレタたち。
そんなやり取りがグレタとアウラの間でしばらく続いたが、「アウラ様がそう仰るのなら、まずは席に戻りましょう」とステラがグレタを説得し、全員が元の位置に戻った。




