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024 お詫びにまいりました



 着替え終えたルキウスはアウラと共に馬車に乗りステラの店に向かった。



 レオーネ家の屋敷は上級貴族たちが住まう王宮付近からは少し外れた王都北東の下町よりにある。



 ステラの店は王都の南東にあるので、レオーネ家の屋敷とはそれほど離れてはいない。



「ここかい?」

「え? いや、わかんないよ」



 店の前付近に馬車を停めて降り、アウラがルキウスに確認をするが、ルキウスは目隠しをしているのでわからない。



 「ま、そらそうか。えーと、『タヴェルナ・ピッツェリア・バール ヒリュウの鱗亭』って書いてあるぞ」



「ああ、そうそう。そうだよ」



 御者をしていた老紳士が扉を開けようとするが、いやいい、とアウラが首を振る。



 アウラは自分で扉を開けると店の中に入り、「ちょっとごめんなさい」と声をかけた。






 店の中ではグレタとアリアが掃除をしていた。



 時間はリュウゼン(午前十一時)を少し過ぎた頃だが、店の修繕が終わったばかりなので昼の営業は休みである。



 店の扉には『本日は夜の営業のみになります』と書かれた札をかけておいたので、いきなり扉を開けて入ってきた老婆に二人とも驚いた。



 「あの、どちら様でしょうか?」



 会った記憶が全くない訪問者にグレタが訝しげな面持ちで訊ねる。



 「突然お邪魔してすまんのぉ。わたし」

 「あー、ルキウスお兄ちゃん! 今日も来たの? ちょっと待ってて――ウグっ」



 アウラの言葉を遮って調理場に向かおうとするアリアをグレタが後ろ襟を掴まえて止めた。



 「いったーい。グぅちゃん何するのぉ」

 可愛らしく頬を膨らませて抗議をするアリア。



 グレタは、めっ、と軽くアリアを睨むと「失礼いたしました」とアウラに頭を下げる。



 「あーあー、ええんじゃ。気にせんといて下さい。わたしはアウラ・レオーネと申します。昨日孫のルキウスがこちらの店主さんに大変無礼な振る舞いをしたと聞きまして、本日はお詫びにまいりました」



 そう言ってアウラは頭を下げた。後ろに控える老紳士もルキウスの頭を押し下げながら一緒に頭を下げる。



 「えーと、あなたが店主さんでよろしいのかな?」と尋ねるアウラ。



 「いえ、私はここの」

 「あっ、ルキウスお兄ちゃんだ! ちょっと待ってて」



 調理場から顔を出したアンナが、ルキウスを見つけると、グレタの言葉を遮って奥へと消えた。



 「あ、あぁあっ……」

 グレタが止めようと、体を前に傾けて手を伸ばしたが届くはずがない。



 すぐに調理場の方から「あー、ちょっと待っててもらって下さい」という若い女性の声と、タッタッタッタッタ、という階段を急いで駆け上がる音が聞こえてきた。



 タッタッタッタッタ、という音がまた聞こえたすぐあとに、「まぁルキウスさん。いらっしゃいませ。本日はどうなさいましたか?」と、くぐもってはいるものの声をはずませたお面の娘が調理場から現れた。




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