023 かっこ悪いよ
ここは? 闘技場? 戦ってる? 誰が? 僕か?
大きさは馬ぐらいだが、馬ではない空を飛ぶ生き物に跨り、僕らしき者が戦っている。指揮をしているのはこの間夢にでてきた女性だ。
彼女の指示は的確だ。後方支援も上手い。
彼女が張ってくれた連矢の牽制に敵が怯んだ。
僕らしき者は、空飛ぶ生き物を一気に疾らせ、敵の懐に飛び込み――斬る!
「うぐぅぁぁぁ」呻きながら崩れる敵。
(勝った!)
「∅∆∵∌∝∬」僕らしき者は彼女の名を叫びながら駆け寄り、きつく抱きしめる。
……あれ? この感触? 抱きしめてる?
「うん?」
天井が見える。よく知ってる天井が。そして、腕の中には人が……いる?
「ばあちゃん抱きしめて嬉しいか?」
「おうわぁぁぁ!」
ルキウスは叫びながらベッドから飛び出した。
「ば、ばあちゃん……な、なんで?」
「なんで、じゃないじゃろが。様子を見に来たらお前がいきなり抱きしめたんだろ。わしゃあ年寄りなんじゃから、抱きしめるならもっと優しゅうせえ」
と言いながらルキウスの祖母アウラは、バキッ、とルキウスの頭を杖で打つ。
「いっ、たいたなぁ、もぉー。それ、痛いっていつも言ってるよねぇ」
バキッ、バキッ、二連発。
「喧しいわ。何を偉そうに言うとるんじゃ。そんなんどうでもええから、さっさと服を着替えて、顔をあろうてこい」
「えっ? あれ? 僕なんでここにいるの?」
今更ながらに部屋を見回し、不思議そうな顔をする。
「お前なぁ。まぁた覚えとらんのか? フェリスから全部聞いとるぞ。あぁ情けない」と言ってまた、バキッ、と一発やる。
「おぼ、おぼ、おぼえ……てる」
思い出した。
殴られたせい? かはわからないが。
ルキウスはまたやってしまったのだ。『大丈夫』などと偉そうに言ったのに、またステラの顔を見て気絶したのだ。
「もうやだ……死にたい……」
しゃがみ込んで頭を抱え涙目で落ち込むルキウス。
「死にたきゃ死ね。でもな、それはお前が無礼なことをしたお嬢さんに、ちゃあんと謝ってから死ね」と、バキッ。
「だね。ばあちゃんの言うとおりだよ。僕、明日また謝りに行ってくる」と、殴られた頭をさすりながらボソボソとこぼすルキウス。
バキッ、バキッ、バキッ。三連ちゃん。
「アホ! もうとっくに朝じゃ。お前さんどんだけ寝れば気が済むんじゃ。さっさと着替えぇ」
「えぇー。うそぉ。僕、そんなに……寝てたの? 気絶……してた?」
情けない……それにつきる。
「なら着替えてすぐに行くけど、なんでばあちゃんがそんなに急かすの?」
「わしも行くからじゃ」
「はぁ? なんで? 僕一人で行くよ。お詫びに行くのにばあちゃんが付き添いって、かっこ悪いよ」
バキッ、バキッ、バキッ、バキッ――バキッ。四連発プラスおまけの一発。
「あっほぉー、めが! お前一人で行かせてまた気絶したらどうすんじゃ。むこうさんに家まで送ってもらうんかい!」
(確かにぃ――)
『もう大丈夫だよ!』と見栄でも張りたいところだが、とてもじゃないがそんなこと恥ずかしく言えない、だから言い返せない。
「わかった……」
ルキウスは素直に着替えを始めた。




