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020 ルキウスとステラ(その5)



 「なあ、ところで店っていつからできんだ?」



 マルクスがフィリッポを見ながら訊く。



 「うーん。明日の昼は無理っぽい。でも、夜には間に合わせるっていってたよ。親方がさ、ここの料理大好きで、人を集めて突貫でやってくれてるから間違いないよ。まっ、ちょっと料金高めだけど」とフィリッポがこめかみの辺りをポリポリと掻く。



 「ちょっ、ちょっと高め、ですか……」



 お面の娘ステラが、むむむっ、という顔をたぶんしてるのだろうなぁ、という仕草をする。



 「ところでスぅ姉さま、明日の買い出しのお金はあるの?」とアリアとアンナが訊く。



 はっとしたな、とわかる動きをしたお面の娘ステラが、慌てた様子で言う。



 「そ、それは、わたしのお小遣いを貯めたお金で、なんとか」



 (え? 店主なのにお小遣いなの?)セイバーズ全員の心の声である。



 「お嬢、賭けのお金っていつ入ってくるんですか? 職人さんは徹夜で修繕をしてくれるんです。お金はすぐに払わないと申し訳ありません。それに、来週はマルティーニ商会への支払日です。足りますか?」



 忘れてました、とお面に書いてあるがごとくステラが床に膝をつく。



 ステラの危機、と感じたのか、わなわなと震えるお面の娘ステラに双子の少女が抱きつき、



 「スぅ姉さま。お金ないなら、アーたちのお金使って。アーたちもお小遣い貯めてたの出す。それに、それにね、食事も一日一食でいいよ。おやつもいらない」



 「い、いいえ。あなたたちにそんなことはさせられません。……だ、大丈夫。わたしの、わたしの持ち物、持ち物を売れば少しはお金になります!」



 お面の娘ステラが意を決したように握りこぶしを作って立ち上がった。



 「待って下さい。やはり僕が修繕費を払います。それに、こちらのお店で当面必要な分も出します。僕の無礼な振る舞いをお金で帳消しにするつもりはありません。ですが、まずは受け取っていただけないでしょうか。お願いします」



 あまりにも憐れな状況に耐えきれなくなったルキウスが、お面の娘ステラの手を握り真剣にお面を見つめて告げる。



 (あれ? この感触、覚えがあるような?)なぜかルキウスの脳裏に浮かんできた。



 「でも、そんなことは……そんなことは……。やっぱりダメです。これは、うちのお店の問題です。レオーネ様にご迷惑はおかけできません」



 (あれ? わたしこの人の手を知ってるかも?)



 そう思いながらもルキウスの提案を拒否するお面の娘ステラ。



 「いや、それこそダメです。そもそも僕がお店で暴れたのが原因です。それに、店主さんには傷も治していただきました……そうだ――そうですよ。あの傷はかなり深かったはず、それをまるで、けががなかったかのように治してくれてます。なあマルクス、ビタロスの上級治癒師に頼んだら、相当な治療費を請求されるよね?」



 「ああ、ウチが使ってる治癒師にあれだけの傷を『跡も残さず治せ』て言えば小金貨三枚は請求されるぜ」



 「ですね。わたしも傷を見ましたが、完全に肉がえぐれていました。祭祀殿の無料治癒では傷跡を残さずに治すのは無理です」



 マルクスとフェリシアが、ステラの治癒は相当の値打ちがあると肯定した。



 「ね、だから治療費なんですよ。修繕費は壊した僕が払うのが当たり前。それ以外は治療費とご迷惑をおかけした心ばかりのお詫びだと思って下さい。あっ、でも、これであなたへの非礼が赦されるとは思っていません。それについてはまた改めてお話をさせていただきます。だから、今は当面のことを優先しましょう」



 「いや、でもぉ……」



 「お嬢、ここはレオーネ様のご厚意に甘えましょう。レオーネ様、重ね重ね申し訳ございませんが何卒よろしくお願いいたします」



 ジョルジョがまた跪いてルキウスに頭を下げる。



 「ちょ、コスタさん止めて下さい。もうこれは、そのぉ、ね。うーん……まぁとにかくそうしましょう。で、もうお礼とか止めましょう、ね。そういうのは、なんか違うと思うんですよ。ねっ、ね」



 なんだかよくわからなくなってきたのでルキウスが強引にまとめにはいった。




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