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016 ルキウスとステラ(その1)



 若い女性の顔が見える。その女性に向かって、誰? 僕か? が一生懸命に話しかけている。



 だが、何を話しているかはよくわからない。



 ただ、感情だけが伝わってくる。



 女性を腕に抱いた僕らしき者が、どれほどその女性(ひと)を愛しているか、そして今どれほど辛く悲しい想いにさいなまれているのか……



 女性が震える手を必死に伸ばし、僕らしき者の頬に触れる。



 「……あなたを……まきこんで……ごめん、なさい」



 彼女は事切れた。



 「待て! 逝くな! 逝かないでくれ! ∅∆∵∌∝∬――」






 ルキウスは自分の叫び声で目を覚ました。



 頬に伝う何かを感じ、指で触れる。



 (……涙……)



 手についた涙の雫をじっと見つめるが、何故かはわからなかった。



 「お目覚めになりましたか」



 ハッとして、ルキウスが声の方に顔を向けた。



 「うわっ?!」



 驚いて後ろに身を反らすルキウス――なんだか、トンデモなく奇妙なものがすぐ目の前にあった。



 「お目覚めになられてよかったです。どこか具合の悪いところなどございませんか?」



 目らしきものが三つ、鼻らしきものが二つ、口らしきものが四つもある極彩色の奇妙なお面を被った娘(?)が胸の前で両手を握り、心配していました、という素振りで迫ってくる。



 「誰? てか、何それ?」



 「えっ、はい? なんのことでしょうか?」



 「い、いや。その、お面? なのかな? それは」



 「ああ、これでこざいますか」娘はお面の頬と思われる部分に両手をあて、



 「これはですね。ウンボロゴロスの仮面と申しまして。ここより東の大河イドゥーシ川中域のほとりの集落に住むウンボロ族に伝わる――」



 「いやいやいや、ちょっと待って下さい。あの、お面の(いわ)れを訊いているんじゃなくて、なぜそんな物を被ってるんですか?」



 「えっ? 違うのですか? そうですか……」



 とても残念そうな素振りをするお面の娘。



 (あれ? そんなに話したかったの?)



 ちょっと可哀想だと思ったが、ルキウスとしてはこの状況はかなり落ち着かない。



 店で店主のステラと話していたはずなのに、気づいたら知らない部屋のベッドの上。



 しかも、脇にはへんてこというか不気味というか、奇妙奇っ怪奇天烈意味不明、というお面を被った娘がいる。



 心配してくれてるようなので、悪い人ではなさそうだが、とにかく、何が起こった、あなたは誰、ここは何処、わからないことだらけなのだ。



 「えっとですね、わたしは」



 「あっ、ルキウス兄ちゃんが目を覚ました」ルキウスの様子を見に来たのであろうフィリッポがドアのところで大きな声を上げた。




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