015 駆け出し冒険者、町娘と出会う
騒動のあとに残ったのはルキウス、マルクス、フェリシア、ヒヨリ=ツキノだけで、ジーノたちの姿も消えていた。
ルキウスのところに、マルクスたちが駆け寄ってくる。
ルキウスがぐちゃぐちゃになった店内を見回し、大変なことになったなぁ、どうしよう、と困惑していると後ろから「ルキウス兄ちゃん」とフィリッポが声をかけてきた。
ルキウスが振り向くとフィリッポの横で若い女性が深々と頭を下げていた。
「先ほどは、従業員を助けてくださり誠にありがとうございます」
(この女性が店主なの、かな?)
そう思いながらルキウスは、「いや、そんなの全然。大したことはしてないんで。それよりも、あの女の子はけがとかしてませんでしたか?」と気恥ずかしさを紛らわせるように訊いてみた。
「お気遣いありがとうございます。少し腫れていましたが、もう治しました。気持ちを落ち着かせるために今は部屋に下がらせておりますが、ご心配には及びませんので、ご安心ください」
(治した? もう?)
「あっ、それなら良かったです。あっ、あの、店主さんですか? もう頭を、頭を上げて下さい」
いつまでも深々と頭を下げ続けている女性に、どう接していいかわからずどぎまぎとするルキウス。
「はい、店主のステラ・アクアフィリアと申します。せっかくお越しくださったお客様にご迷惑をおかけして……その、本当に申し訳ありません」
そう言って更に深く頭を下げるステラに、いよいよどうしていいかわからなくなり「いや、あのぉ、そんな。こっ、こちらこそ、こちらこそごめんなさい。お店めちくちゃにして、ほんとごめんなさい」とルキウスもステラに向かって頭を下げた。
「いやいや、二人して頭下げまくっててもしょうがないだろ。まずはお互い顔を上げて話をしようぜ」
深々と頭を下げあっている二人に呆れたマルクスに言われて、確かに、と思ったルキウスが「じゃ、僕から上げるので、店主さんもお願いしますね」と告げた。
ステラが「はい」と返事をしたので、それを合図にルキウスが頭を上げると、ルキウスが動く気配を感じたのかステラもゆっくりと頭を上げ始めた。
顔を上げて目を閉じ、ルキウスの前に佇むステラの姿は、自分と同じぐらいの歳に思えた。しかし、まとう雰囲気が全く違う。
厳かで美しい……
肩にかかる豊かなプラチナブロンドの髪。天の采配で整えられたような鼻梁と唇。小さめの顎先と華奢な肩をつなぐしなやかな首。まったく日焼けをしていない乳白色の肌。
それら全てが、造形的な美を超えた何か、に思えた。
(綺麗だ……)素直に心が呟いた。
目尻が少し下がった目を縁どる長く美しい睫毛がゆっくりと持ち上がるのを、ルキウスはぼんやりと眺めていた。
だが、突然目の前から光が遠のき、体が崩れる――
(……あれっ?!)
――ルキウスの意識が……途切れた




