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012 駆け出し冒険者、喧嘩をする(その7)



 プグナに勝ったときの要求を確認したルキウスは、外に出るために入り口へと歩き出した。



 二歩三歩と無防備に歩みを進めるルキウス。



 ジーノはアグリコラの仲間の顔を順番に見回し、チロのところで止めると、小さく顎でルキウスを指した。



 「うぁっ」



 突然ルキウスが声を上げた。

 左腿の後ろに激しい痛みが走り、体が左に傾く。



 (やられた!)



 そう思った瞬間にルキウスは、自らのリュウオンシを発動させた。



 リュウオンシ。それは、この日ミツル半世界を統べるヒリュウ霊が、庇護の子に一つずつ与える特別な力のことである。



 ルキウスに与えられたのは〈速さ〉という運動能力系のリュウオンシで、体の全ての動きを速くすることができる。



 「ボケがぁ、プグナってのは受けるって言ったときから始まってんだよ!」



 ジーノが喜悦まじりのわめき声を上げると同時に、ルキウスの右斜め後ろにいたフランコがルキウスの頭をめがけてウォーハンマーを振り下ろす。



 ドサッ

 床に倒れる音。



 (やった!)

 誰もがそう思った、ジーノもそう確信した。そのとき――



 「うわぁ、やめろ!」チロの(わめ)く声が響いた。



 「いやぁ参りましたね。あなたたちとの接近戦で一番警戒すべきはチロさんなのに、油断をしました」



 ルキウスは笑顔を浮かべながら、ジーノの右隣にいるチロの目の前に立っていた。



 しかも、チロの両の拳を上からしっかりと握りしめ、手の動きを完全に封じている。



 (なんでルキウスはあそこにいる?)セイバーズのメンバー以外は皆そう思ったであろう。



 床に倒れているのは、ウォーハンマーを握ったままのフランコだ。



 さっきまでルキウスがいた場所と今いる場所は二トゥカ(二メートル四十センチ)も離れていない。なのですぐに移動できる距離ではある。



 だが、誰もルキウスが動いたところを見ていないのだ。



 しかも、フランコが倒れる音とチロが呻く声はほぼ同時に聞こえた。



 まるでルキウスが消えたか、瞬間移動をしたとしか思えなかった。



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