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009 駆け出し冒険者、喧嘩をする(その4)



 「おい、ジーノ。そんなぼんぼんに、やられっぱなしでいいのか?」



 「あんた、ついてんだろ。男ならやっちまえよ」



 野次馬たちが口々にジーノたちを煽りだす。



 「おい、お前ら。何勝手なこと言ってんだ!」



 マルクスとフェリシアが、ルキウスに加勢しようと進み出る。しかし、目の前に数人の野次馬が立ち塞がって通そうとしない。



 「おめえらに邪魔ぁさせねえぜ」



 「どきなさい! どかなければあなたたちから先に仕留めます」

 


 フェリシアが槍を構えて威嚇するが、連中は、ルキウスを吊るし上げようとしているのか、ますます壁を厚くして二人を阻む。



 「マルクス、フェリス。僕は大丈夫だから」



 「てめぇ、なに余裕ぶっこいてんだ。ああ、おめえなんぞいつでも殺れんだぞ」



 捻り上げられていた腕を押さえながら、額に汗を浮かべてジーノが吠える。



 「おうおう、やったれやジーノ」

 「横取りの仕返しなら、文句はなしだ」

 「取られたら、取り返せや」



 周囲の野次馬たちの雰囲気は、かなり不穏なものになっていた。野次馬を味方につけたのはジーノで、少女を助けたルキウスのほうが悪者になっていた。



 「へっへっ、プグナだ。プグナをやるぞ! リングを作れ!」とジーノが野次馬たちに号令をかける。



 野次馬たちは、プグナだ、プグナだ、と叫びながらアグリコラの面々とルキウスの周りを、テーブルや椅子で囲み始める。



 プグナとは『冒険者同士の正式な喧嘩』のことである。



 決闘ではなく、喧嘩なのは、このプグナには武器や人数の制限はないし、反則もないからだ。そして、相手が戦闘不能になるか、死ぬまで続けられる。



 唯一のルールは『勝った者が正義』で、プグナを囲む野次馬どもが証人として勝者の言い分を認めるようになっている。



 「おいこら待て! ルキ一人でやらせるか」



 マルクスとフェリシアが強引にリングの中に入ろうとするが、何人もの野次馬たちが二人に取りついて離そうとしない。






 リングが出来上がると、中はルキウスとアグリコラの四人だけになった。その周りで野次馬たちが、「賭けだ、賭けだ」と盛り上がる。



 一対四である。ルキウスにはかなり不利な状況だ。



 しかし、ルキウスが周囲を見回して思ったのは、



 (あー、まずいことになったなぁ。ここ狭いよねぇ)


 であった。



 「ルキウスぅ。わかってるだろうな。もう逃げられねえぞ」



 ジーノがニタリとした嫌らしい笑みを浮かべてルキウスに告げた。




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