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07話 試行錯誤

 朝起きてリビングに向かうと父さんがリビングで朝食を食べていた。


「起きてきたか、ソルカ。おはよう」

「おはよう、父さん」


それだけ言うと僕は洗面所に顔を洗いに行った。

水を溜めて顔を洗っていると1枚のタオルが差し出される。

僕は直感でこんな気の利くことをしてくれるのはリアだと悟った。

目を瞑りながらお礼を言う。


「ありがとう、リア」


顔を拭き終わり目を開けてみるとそこにいたのはネストさんの方だった。


「リアでなくてすまなかったね、ソルカ君。気分はどうかな?」


昨日のハーブティーの気遣いでリアと思い込んでしまっていた。

この親いてあの娘あり、ということをよく理解した。

とりあえず朝の挨拶をして勘違いした言い訳をしておく。


「あ、おはようございます。ネストさん。いやあの、昨日リアにハーブティーを出してもらいまして、そんな気が利くのはリアだけかなと思ってました。すいません」


ネストさんは何やら自慢気な顔をして口を開いた。


「あの子には昔から他人の気持ちを理解出来るようになりなさいと言ってきましたからね。育ての親である私が出来てなければ、それは親失格です」


この一件でネストさんの人間性が垣間見えた気がした。

そんな話をしているとリアが通りかかりこちらと目が合う。

リアが話しかけてきた。


「あ、お父さん、ソルカさん。おはようございます。ソルカさんは昨晩よく眠れましたか?今日1日ゆっくりしていってくださいね!」


そう明るく言ってリアはリビングに歩いて行った。

そんな気の利いた朝を迎えた僕は朝食を食べ、海に向かう準備をする。

人魚を簡単に倒せるようになれば海で母さんを探すこともできるかもしれない。

そう思って人魚との戦い方を模索するために父さんと海に向かう。




海に着くと父さんは漁師が漁をするときに身に着ける両手足のプロテクターを手渡してきた。


「ソルカ、生身では人魚の爪が体に突き刺さったり、引っ掻かれた時に肉がえぐれる。昨日人魚がお前を殺すためにとった手段が窒息させる方法だったのは不幸中の幸いだったのかもしれないだからせめて手足にプロテクターを付けておけ」


確かに今思えば爪で心臓を一突きされていた可能性もあった。

流石に胴にプロテクターを仕込むのは機動力が大幅に落ちるため避けるが、手足くらいは身に着けた方がいいと感じた。

僕は早速身に着けて海へと入る。

しかし予想通り身動きがとりづらくうまく泳げない。

僕はため息をつきながら考える。


「どうすっかなー。これじゃあ格好の的だよ。もっと早く泳ぐっつっても水中じゃあ限界があるしなー。」


そう呟いていると父さんがこの場を離れながら一言言う。


「じゃあ俺は昨日言ってた秘密のやつ取り行ってくるからちょと待ってろー」


その言葉を言い残して張り切りながらどこかに行ってしまった。

よっぽどいい作戦なのだろうか……。

残された僕は一度陸に上がり地面に座った。

ぼーっとしていると逆転の発想を思いつく。


「どうせ人魚は向かってくるんだからあんま動けなくてもいいじゃん!逆に攻守がっちり固めればよくね?そうと決まれば鍛冶屋でこのプロテクター改造すっか」


そういってカスタネッタに一軒だけある鍛冶屋に向かい、金床と炉を貸してもらった。


「僕の本業は鍛冶師だからなー。こういう時に自分がやりたいように装備を作れるのは助かるなー」


そんなこんなでプロテクターを改造した。

海に戻ると父さんが膝を抱えながら一人座っていた。

なんで一人の父さんの後ろ姿ってこんなに哀愁漂うのだろう……そう思いながら話しかける。


「父さん戻ってきてたんだ」


父さんは虚空を見ながら口を開く。


「なあソルカ、帰ってきたときに誰も待ってないって寂しいな」


この親めんどくさいと思った。

そんなことより早く取りに行ったものを出せって言ってやった。

すると父さんはワイヤーと棒を取り出して、ワイヤーと棒を結び始めた。


「これで何するってんだよ」


そう口にすると父さんは口笛を吹く。

すると空からメルグが勢いよくこっちに向かってきて、地面に降り立った。

父さんはワイヤーをメルグの足に引っ掛け、棒を僕に持たせた。

父さんは考えを口に出す。


「水中で機動力を得るのは難しいけど、水面ギリギリなら行けるだろ。メルグに水面に沿って飛んでもらうから、ソルカは水面に滑る感じで立ってみろ。」


そんなことが出来るのだろうか。

メルグの上に父さんが乗り、メルグに命令を出す。

メルグはゆっくりと翼を羽ばたかせ、水面に沿って飛び始める。

僕は渡された棒を握り、手を前に出しながら両手足を伸ばした。

すると僕は水面を滑ることに成功した。

波に乗っている感覚だ。

グルっと周辺を一周し陸へと帰った。

父さんが口を開く。


「やっぱり俺の見立て通り水面を滑れたな。もし棒を放してしまってもすぐにまた戻って棒を垂らせばいい。その間に人魚に襲われたら普通の人間ならまず死ぬが、お前なら少しは持ちこたえられるだろ」


割とあっさり今後の人魚に対する立ち回り方が決定した。

だが足が痛い。

足を水面の圧と人魚から守るために靴が必要だとわかった。

父さんの考えを教えてもらったところで僕が出かけていた理由を見せる。


「プロテクターの側面に刃とおまけ程度に水掻き付けて来たんだよ。鈍らになったら交換出来るように工夫も凝らしてある。水中ならこれと銛があればかなり戦えるかなって」


これを見た父さんは立ち回りを考える。


「基本的には船で人魚を誘いだし、近づいてきた人魚を銛で突けるのが理想だな。でもあいつらは船底に爪で穴を開けたり、船によじ登ってくるから場合によっては船を捨てないといけなくなる。その場合はメルグの上に俺が乗りメルグを操る。ソルカは片手で棒に掴まりながらもう片方の手で銛を持って水面にいる人魚を仕留める。こんな感じか?」


僕は頷いて父さんの立ち回りの案を飲み込んだ。

そんなことをしている所に、情報を集めてくれているネストさんが険しい顔をして歩いているのが海辺から見えた。


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