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03話 旅の始まり

 シアナが生きている事を聞いたその日の晩にソルカはディルアに今日のことを話した。

「なあ父さん、母さんの話聞いたか? 波打ち際の岩の上にいたって話」

「ああ、耳に入っているよ。是非とも一目見たいものだ」

「明日辺り会えねえかなー」


そんなことをつぶやきながらソルカは横になった。

そんな短いキャッチボールだけして会話は終わる。

次の日からディルアは一週間ほど島を渡り歩いて商売をしに、家を出ていった。

そしてソルカはシアナを探しに海に通い始めた。

しかし、鱗を頼りに海を眺めるも、母、シアナの姿を見ることは出来なかった。



一週間が経った頃にディルアが有力な情報を手に入れて仕事から帰ってきた。

「ソルカ、今日渡ってきた二つ隣の島でシアナに似ている人魚を見た」

「それって、母さんのことか!」

ソルカは勢いよく聞き返した。

それに対してディルアは冷静に応える。


「まだどうかはわからない。けど、人魚にしては珍しく瑠璃色の鱗をした綺麗な姿だったから少なくともほかの人魚とは違うのだろう」


それを聞いてソルカはディルアにまだ鱗を見せていないことを思い出す。

「父さん、見せるの忘れてたんだけど、これ母さんがいたっていう場所に落ちてた鱗なんだ。母さんに近づくと光るらしい。父さんの見た人魚と同じ色じゃねえか?」


それを聞きながら鱗を見たディルアは少し考え込んである仮説を立てた。

「確かにそうだな。もし、シアナが俺たちの前に姿を見せられない理由があるとしたら、俺たちに探してほしいってことだったりしないか?」


ソルカはすぐに聞き返す

「でも姿を見せられない理由ってなんだよ。人魚だからか?」

「ああ、それもあるかもしれない。人魚になっている可能性はとても高いと思う。ソルカはこの世界の地図をみたことはあるか?」


「地図っつってもこの世界は島が点々としてるだけじゃねえか」

その一言を聞いてディルアは地図を取り出しながら話し始める


「ソルカ、俺は仕事柄よく違う島に行くだろ。いろんな所を渡り歩いているといろんな話を耳にする。この地図を見ろ」

地図に指をさしながら続けてディルアが口を開く。


「俺たちが住んでいるのはこの島だろ。この島は恐らく一番東の島だ。そしてこの島も含むほとんどの島が列になるように並んだ配置になっている。この島々はすべて世界の外側に位置するらしい。中心には大陸があるって話だ」


その話を聞いたソルカはぽかんと口を開けていた。

「大陸ってなんだ?」


ディルアは説明する

「大陸っていうのはこの島が百個集まるくらい大きい陸地のことらしい。とはいっても誰も見たことがないから本当にあるかはわからないけどな。この世界はまだわかっていない事が多い。恐らくシアナはこの世界について何かを知ったのだろう。だから導ているんだよ、大陸に俺たちを。そこに全ての秘密があるんだ」


ソルカは目を輝かせながら口を開く

「じゃあ母さんは世界の秘密を知ってるってことだな!探しに行こう。きっと行先は母さんが導いてくれる。これは、行くしか、なー―――い!!」


「なんだそのテンションは初めて見たぞ、お前のそんな姿」


ソルカは少し冷静になり恥ずかしくなった。

そしてディルアが仕切りなおす。

「とりあえず島伝いに南西に向かう。行く先々で情報があるはずだ。ただし、命を懸けることになるぞ。島を渡り、海に出るってのはそういうことだ。


ソルカはゆっくりと息を吐きながら応える

「ああ、わかってる」

こうして親子の決意が固まった。




それから更に一週間後。旅立つ朝が来た。

ソルカは玄関で準備をしていた。

「ここ数日は母さんを見たって聞かないな。全然違う所にいるんじゃないだろうなー。だとしたら行先わからんぞ」


そんな独り言を言っているとディルアが話しかける

「それでも行くんだろ? 戸締りと持ち物は大丈夫か?」

「ああ、問題ないよ、と言いたいところだが心配なんだよな」

「何がだ?」


ソルカは目尻を掻きながら応えた

「メルグに掴まって大陸に渡るんだろ?落ちないかな?」

「この子ももう大人だ。よっぽどのことがない限り落ちることはないだろう。大丈夫だ心配するな。父さんは旅慣れているから翼竜の健康状態もある程度直感でわかるバッチリダ!」


笑顔で親指を立てる仕草をするディルアに対してソルカは疑った目をして見る。

「変なところでふざけたしゃべり方するんだよな…… このオヤジ」


気を取り直してディルアが喋る

「まあとにかく当分はジップラインの移動だからな。翼竜の出番はジップラインで繋がっていない広い海を渡るときになるだろう。そこまでには覚悟決めとけよ」

「それならまだ心の準備をする時間はあるか……」


それを聞いて心がほっとするするソルカ。


「武器を作る道具も持ったし、出発だな」

ディルアが家の扉に鍵を掛けながら話していると、顔馴染みの顔が通りかかった。ガルアだ。


「おいおい。親子揃ってお出かけかい?」


ディルアは顔をあげて事情を話す。

「おお、ガルアじゃないか。すまないが暫く家を空ける。シアナを探しに行くんでね」


それを聞いたガルアは険しい顔で右手を顎に当てた。

「そりゃ厳しく長い旅になるんじゃないか。目途は立っているのか?」


ジップラインへとゆっくりと向かいながら三人は話始める。そしてソルカが応える

「とりあえずは鱗が頼りかな。行く先々で情報を集めるよ」

「そうか。一時期姿を見せていたシアナも最近は見なくなった。どこかに移動しているのかもな」


 少し間を開けてガルアは心の底からの言葉を放った。

 「シアナだけじゃねえ。漁師や村のやつを含めて多くの友を十年前のあの日に無くしちまった。だから、海にだけは吞まれるなよ。これ以上友を失いたくねえ」



 その言葉を聞いたディルアはガルアの手を握り口を開く。

 「そうならないように十分気を付けるよ。ありがとう」


 ジップラインに着いた三人。

 ソルカはジップラインに手を掛けながら元気よく応える。

 「それじゃあいってくるぜ、ガルア。急な話で悪かったな。あ、そうそう、母さん見かけたらちゃんと引き止めといてくれよ?」


 ガルアは胸を叩きながら応える。

 「ああ、任せておけ。しっかり海を見とくよ。村のことも心配すんな。心行くまで母親探しに励んで来い!」


 ソルカとディルアはジップラインに掴まって地面から足を放して滑り出した。

 後ろの方からガルアの叫ぶ声が聞こえる。


 「必ずシアナを見つけ出せよ! あとは生きて帰ってこい!! じゃあな!!!!」


 こうして親子の旅は始まった。何処かの海にいるシアナを探しに。





思い返すと十年か、大きくなったな、無種のソルカ…… と、そろそろ彼らのことを見るのは止めにしよう。

 あまり覗き見をするのはよくないし、私も準備をしないとね。


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