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風魔忍者に転生して親孝行する。  作者: 風猫(ふーにゃん)
第三章 勅命民衆蜂起編
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第21話 関東土一揆『錦の御旗』

永禄10(1566)年1月 伊豆国下田城

風魔小太郎



 永禄10年正月三日、この日父上と関白殿下を三宅島に連れて行き、帝に拝謁してもらった


 公卿達が帝の無事を知りたがったし、父上も拝謁して置かなくては失礼にあたるしね。

 三宅島では、帝の洋館は特定の必要な者達だけ出入りさせている。島民は取次ぎの者らに物資を届けたりするだけだ。

 洋館は高い塀で囲まれ、海からしか侵入できないが、海からの侵入には人感照明や警報、警備兵で護られている。


「おお主上、ご尊顔を拝し安堵致しましておじゃる。ご不便はございませぬか。」


「関白、朕は健やかなるぞ。はははっ。

 おお、そちが駿河守か。小太郎にはようしてもらっておる。礼を言うぞ。」


「 · · · · 。」


「なんじゃ、直答せい、構わぬぞ。この敷地の中は無礼講じゃ。それに小太郎が許可した者しか入れておらぬ。」


「僭越ながら申し上げます。小太郎の父風間孫左衛門にございます。主上にはご不便をお掛けしますが、できる限りのお世話をさせていただきまする。なんなりと思うしつけください。」


「そうか、いずれ忍びで下田を見て見たい。小太郎を説得してくれぬか。こ奴は後宮の者どもを味方に付けおってな。儂より権勢を振るっておるのじゃ。」


「主上、お止めください。関白殿の前で、まるで俺が主上を虐めているみたいな。俺は主上の身を護る責任があるのですから、危ないことはさせられませぬ。

 それに、お局様方は俺の味方などではありませぬ。俺に嫁を押しつけようと、あれこれ企んでいるのです。それで仕方なく貢物で許してもらっているのです。

 父上、おかげで俺のへそくりが残り少ないのです。何か手立てを考えてください。」


「ふ〜む、観念して嫁を貰うたらどうじゃ。下田の大奥でも、気にしとるぞ。」


 はぁ、父上だけは味方だと思っていたのに。ぐれてやる、ぐれてやるからな〜。



「ところで小太郎殿、主上をここに匿われて、これからどうするのでおじゃる。」


「関白様、主上と将軍には話しておりますが、これまで九州で我が水軍が南蛮の海賊に扮して暴れ回りました。

 それは外敵の脅威を知らしめ煽る為でございます。

 そしてこれから次に行うことは、大名達の内の敵、すなわち民達の蜂起を帝の命で起こし支援することであります。」


「なんと、帝が土一揆を煽り支援するのでおじゃるかっ。」


「土一揆を起こす民達には『錦の御旗』を与え支援致します。されば敵対する者は朝敵、これまで権威を翳していた者達には大義も理もありませぬ。

 ただし、それには準備が要りまする。

 帝が行う治世が、平和で豊かで民に得難いものであることを、民達に知らしめねばなりませぬ。

 それを今始めるところでございます。公家衆にも一役買っていただかねばなりませぬ。 

 ただ傍観し待つだけでは、世は変えられませぬ故に。」


「 · · 儂らは何をすればよいのじゃ。」




 民衆の一揆、蜂起は、日本では越中加賀の一向一揆ぐらいしか成功を見ていない。

 それは民達だけでは統治ができず、宗教の力などを必要としたことを示している。

 フランスで起こった市民革命は、国家財政が破綻し、支払うべき財政資金が枯渇した際に、権力を握る宮廷貴族が減免税特権を温存し、ブルジョアジー以下の国民各層に対して負担をかぶせようとしたことに起因する。「権力を取らないと自分達が破滅する」と感じた商工業者,金融業者が、国民の様々な階層を反乱に駆り立て、領主の組織する権力を打ち破った。

 さらにパリ駐屯のフランス衛兵が反乱を起こし、国王軍と群衆の衝突の中で、国王軍を敗北させた。この軍の反乱には下士官を構成する下級貴族の力があった。この革命によって家柄万能の時代は終わり、フランスの近代化が始まったのだ。


 市民革命と並ぶ植民地の独立戦争は、アメリカにおいて、イギリスが植民地防衛の替わりに、その費用負担をすべきと一連の税金を課したが、植民地から自分達の代表がイギリス議会で発言する権利が無く、押しつけられた法律は無効だと主張。その抗議行動にイギリスが軍隊で封じようとし、植民地側は民兵を結集して独立戦争に至った。


 いずれも、民衆蜂起の中に知的階級が含まれて成功したのである。

 俺は、武家の戦乱の世を憂いている帝と、足利幕府の体制の脆弱さを身に沁みて理解している将軍とともに、日本の民衆一揆を起こすのだ。




✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣



永禄10(1566)年3月 常陸国府中高安寺

山本甚六 



 俺は風魔の東関東の間諜を担っている。

甚六の名にあるとおり、六の組の小頭だ。

 俺が頭の藤原靖国様と風魔忍びとなって6年、配下も50人余名となって、磐城、岩代、下野、常陸に商人、寺男や漁師などとして潜り込ませ、探索や間諜を成している。


 既に関東一円でも、駿河や相模、越後での新政により、民が豊かな暮らしをしていることの噂が広まっており、それを羨む民達の間に領主土豪達への不満が燻ぶっていた。


 そんな中、今年に入り我ら探索組に一斉に我が主君、風間小太郎様から直名が下った。

『戦や飢餓に苦しむ民に、帝が立ち上がれとお命じになったと伝えよ。既に幕府は廃止し、守護大名に民を強いる権限は剥奪した。 

 田植えの頃に公家を遣わす。各々に拠点を作り、蜂起の命を待てと。』


 そして今、ここ府中の高安寺には、公家半家の竹内季治殿が公家衆を率いて来られた。

 竹内家の本姓は源氏。いわゆる堂上源氏で家系は清和源氏の河内源氏傍流の信濃源氏平賀氏の一族である。家業は弓箭と笙と和歌。


「竹内様、遠路大義にございます。某が東関東を差配致します山本甚六にございます。」


「おお、藤原殿に聞いておじゃる。この地は我が竹内家の遥かご先祖の地でおじゃる。

 この地の民を救うために戦うは、我が生涯の使命に他ならぬじゃろう。ほほほっ。」


「そろそろ田植えの時期、それに隠れて民達の拠点を作らねばなりませぬ。公家の皆様のお力添えを賜りますぞ。」


「おお、もとはと言えば、寺社は朝廷を守護する者にごじゃる。我らが民に味方するように説得してみせようぞ。」


 こうして、幾多の組に別れた公家衆と荷駄の隊列が、東関東の数多の寺社へと向った。

 その荷駄には、兵糧と共につるはしやスコップ、長槍や簡易鎧兜、女衆が使うボウガンなどが積み込まれていた。


 田植えを終えた民達は、予め決められた寺社の拠点に立て籠もった。そして槍隊の訓練を行い、蜂起の勅命を待っていた。




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永禄10(1566)年5月5日 伊豆国下田城

風魔小太郎



 この日、下田城に正親町天皇をお迎えして天下新政の詔が発せられた。


『朕、思うに戦乱は国と民を疲弊させるばかり。我が国の行く末を思えば、これを平らげるしかなし。我が子なる民よ、立ちあがり世に憚る民を虐げる者を討て。』


 こうして、各地で民達が蜂起した。自領の民が蜂起したために、農民兵が徴兵できずに

大名土豪は城に籠城したが、関東各地へは、風間家の北条家臣が錦の御旗を掲げて砲兵隊を率いて出陣。籠城する大名土豪を城ごと壊滅して回った。

 

 甲斐、信濃では、長年の忠孝から武田信玄に従う民も少なくなかったが、抗う武田勢を風魔の鉄砲騎馬隊が蹂躙し、また上杉勢が出陣するに至り、武田信玄と一族は躑躅ヶ崎館

にて自害して果てた。


 美濃、尾張においては、織田信長が中濃を制し、西美濃三人衆も味方に付けて、斎藤龍興の美濃を制するところであったが、公家達の説得に呼応した民と、三河、遠江の松平家の軍勢が強大な鉄砲隊を率いて、尾張に攻め入り尾張を制圧。

 織田信長を、美濃加治田城に封止込めた。



「殿、斎藤家と織田家の両方から、使者が来ておりますぞ。追い返しまするか。」


「正信、いまさら申すことでもあるのか、聞いてみようぞ。順に通せ。」


「斎藤家家臣、日根野弘就にござる。三河守殿には此度の尾張制圧、お祝い申しあげまする。主君、斎藤治部大輔より、これよりは呼応して織田信長を討果すべしとの命を受け、来訪した次第にございます。」


「その方の主君とは、いかなる者なるか。

 我らは帝の勅命を受けた官軍なるぞ。その我らに賊徒と迎合せよと申すのか。」


「しかし、織田信長は美濃を不当に略奪せし無法の徒にて、帝が討伐すべき輩、、」


「ああそうだ。斎藤道三も美濃を不当に略奪せし無法の徒である。よって、討伐致すから覚悟しておるが良い。

 正信、使者殿がお帰りだ。お送りせよ。」



「織田家家臣、丹羽長秀にござる。

 此度、家康殿にはいかなる存念にて、尾張に侵攻されたのか受け賜わりたく罷り越した次第にこざる。」


「織田家の者は、帝の詔を知らぬのか。

 我らは、帝の勅命に従い無頼の暴徒どもを征伐に参ったのだ。帝に恭順の気があれば、兵を解散して帝の下に侘びに参られよ。」


「 · · 我らを、帝の軍に加えていただくことはできませぬか。」


「我らの軍勢の主体は、民の一揆勢でござってな。民を兵として虐げてきた大名などは、滅ぼす他に使い道がないのだ。」


「 · · · · · 。」



 その頃、東国の各地でも、公家衆に率いられた農民達が蜂起していた。


「これ喜平次、あまり前に出るでない。矢に当たったらどうするのじゃ。」


「平気ですってば。侍達も鉄砲が恐くて近づいて来ませんだ。おらの役目はこの櫓から皆に敵兵の位置を報せることですだ。

 お公家様こそ、こんなとこまで来ることないんじぁねぇですか。」


「阿呆っ、儂ゃこの砦の指揮官じゃぞっ。皆の前に立たんでどうする。まあ、戦力にはなっとらんがな。はははっ。」


「お〜い、敵兵の何人かが西に回っただ。

近づけるな〜。」



「お公家様よっ、そんなに御旗を振らんでも良いのじゃねぇか。」


「馬鹿もん、景気づけじゃあ景気づけ。奴らめ、この錦の御旗を恐れとるのじゃ。儂のこの姿もじゃ。なにせ、鎌倉以来の朝敵じゃからのぉ〜。うわっはっはっ。」


「どうやら、敵が引いたようですぜ。お疲れでしょうから奥で飯になされてくだせぇ。」


「おおそうじゃの、飯にするか。」


 各地に散った公家達は、農民達の心の支えとなり、公家達もまた、農民達の貧しい暮らしを目にして、我が身と通ずるものがあったのか、ずいぶん打解けていたようである。







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