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風魔忍者に転生して親孝行する。  作者: 風猫(ふーにゃん)
第一章 伊豆転地編
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第1話 弥勒菩薩様の『お告げ』

天文23(1554)年3月 相模国足柄郡 水之尾村

大木小太郎



 俺は、大木小太郎8才。水之尾村の村長むらおさの一人息子だ。

 父の名は大木孫左衛門。母は咲耶という。二人にはなかなか子ができず、なんども箱根大権現に詣でて、やっと生まれたのが、俺だそうだ。

 俺はそんな話を聞かされて、幼い頃から、『一人っ子の俺が両親に親孝行するんだ。』と想いを秘めている。

 水之尾村は領主北条家の居城がある小田原の西にある山王川を挟んだ山間やまあいにある村だ。


 大木家のご先祖は、鎌倉幕府の第8代執権北条時宗様に仕えた風祭出羽守様で、初めは隣村の風祭村に住んでいたが、何代かあとにここ水之尾村に移り住んで、名も大木姓に変えたそうだ。


 今日は俺の乳母兄弟である2才上の金太郎とその弟で同じ年の銀次郎と、猟師の源爺と平次に付き添われて、箱根権現詣に向かっている。

 何故かと言うと、一昨夜に見た夢の中で、弥勒菩薩様と名乗られた方に箱根権現に詣でなさいと言われたからだ。


 俺は幼少から時々不思議な夢を見てきた。 

 それは、馬もいないのに物凄い速さで進む箱馬車だったり、短い鉄の槍から、火を吹く武器で戦ういくさだったり、広大で生地された広場のような場所から、多勢の人を乗せた鉄の大鳥が飛び立つ光景だった。

 父上と母上にはなんでも話す俺だったので一昨夜に見た夢の話しをすると、『小太郎の見た夢は、弥勒菩薩様のお告げじゃろう。

 これは、行かねばならぬな。』

『まあ、この子の夢は何かしらと思っていたけれど、弥勒菩薩様のお告げだったとは。』

 二人は許可してくれ、伴をしてくれる者のを集めてくれたのだ。




 春三月とはいえ、箱根の峰々には未だ雪が散見された。そんな山道を進んで行った。

 やっと芦ノ湖の湖畔に辿り着き、九頭龍神社と箱根神社をお詣りして、駒ヶ岳の山頂にある箱根元宮を目指した。

 さすがに、子供の俺達三人は山頂の社殿の入口に着くと座り込んでしまった。

 しかし、そこから芦ノ湖を望む大景観には見惚れてしまっていた。


 するとどうことか、急にふもとの方から霧が出て来て、それは瞬く間に山頂の俺達まで覆ってしまったのだ。


「みんな、社殿の鳥居に集まるのじゃ。下手に動き回るのは危険じゃぞ。」


「さっき鳥居の正面に、やしろが見えてましたし、石畳がありますから、やしろの前まで行きませぬか。」


「そうじゃの、そうするか。皆離れずに社殿まで進むのじゃぞ。」


 平次の意見に源爺が同意して、俺を先頭に歩いた。足元しか見えない霧の中のせいか、なんだか遠いような気がしたが、社殿の前に着いた。

 そして俺が、参拝の大鈴の麻縄を引いて、鳴らし一同揃って参拝をしている時だった。

 突然、社殿の扉が開き、そこに見たこともない薄衣を纏い、金の冠を付けた女性らしき人物が、いや、一目で仏様とわかる方がいらしたのだ。俺達は慌てて膝まづいた。



「小太郎、よく来ました。あなたに夢を見させたのは、わたしですよ。

 他の者もよく聞きなさい。この国では戦乱が絶えず、日々多くの者達が亡くなっています。それも罪もない子供や女達が多勢です。

 わたしはそんな者達を救うために、この国へ来ました。

 ですが、わたしが直接手を下すことはできません。そなた達に、わたしの力を授けますから、そなた達がそれを成し遂げなさい。」


 そう言われた次に、俺達5人の体はまばゆい光に包まれ、そして治まると今まで知らなかったことを理解していた。




「小太郎、あなたには未来に生きていた時の記憶や知識を与えます。

 金太郎には武勇の力を。銀次郎には遠目、遠耳の力を。源三郎は鍛冶の技術と寿命を。

 平次には、馬術と医術の知識を授けます。


 そして、この馬達も授けます。可愛がって育てなさい。

 皆で、小太郎を助け、戦乱の世で罪もなく殺される女性や子供達を救いなさい。

 わたしは、いつでもあなた達を見守っていますよ。」


 そう言われて、そのお姿がだんだん薄れていき、最後には消えてしまわれた。

 俺の記憶の中には、昭和から令和まで生きた一人の男の記憶があった。

 歴史が好きで戦国大名になったり、第二次世界大戦の将校になった想像をしたり。

 職業は大手商社マン。農産物から工業製品まで、新商品の開発から発明の手伝いまで、経験していた。海外を飛び歩き、5ヶ国語に堪能で必要から21ヶ国語を片言で話した。



 俺達が呆けていると、あんなに濃かった霧が、いつの間にか消えていた。

 そして社も消え、5頭の大きな馬達が立っていた。


「小太郎よ、これは夢ではないのじゃろか。」


「源爺、夢って5人揃って見るものか。」


「爺さん、だって馬がいるぜっ。」


「兄ちゃん、この馬達、見たこともなくでかいよっ。」


「小太郎様よ、なぜか俺は、この馬のことが分かりますぞ。この馬は、遥か西の国の馬で『ぶらばんと』と地名で呼ばれる馬です。

 おとなしくて馬力のある馬ですよ。」


「若よ、俺なんだか強くなった気がする。」


「おおっ、儂も刀の打ち方が分かるわい。」


「若、これからどうするんです。」


「う〜む、まず帰って、父上に相談しよう。

 それと、この馬達だけど、村に連れて行けば騒ぎになるし、噂が広がれば殿様達に献上とかになりそうから、どかに隠そう。

 そうだ、源爺の山の山羊を飼ってた小屋がいいな。」


「ふむ、今は山羊もおらんし、あんな山の中なら誰も近づかんじゃろ。それに餌の草も、たっぷりじゃ。金太郎と銀次郎で世話をせいよ。」


 そう話していると、馬達が近寄って来て、各々5人に擦り寄った。

 俺には唯一の白馬が、金太郎と銀次郎には栗毛の小柄な二頭が。そして、源爺と平次には灰色に少し白が混じった糟毛かすげの馬だった。


「馬の方でちゃんと主人を決めていたようですね。俺の馬と小太郎様の白馬が雄であとの三頭は雌です。試しに乗っみましょうか。」


 不思議なことに乗馬の知識がある。手綱も革のくらもあり、皆で山小屋まで乗馬で行くことにした。

 それにしても山頂にいたはずなのに、社が消え去った時には、村側のふもとにいたのだから不思議だ。




✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣



「父上、只今帰りました。」


「おおっ、無事帰ったか。してどうじゃった。お告げはあったか。」


 皆で顔を見合せて、源爺が平次に話せと、あごをしゃくった。


「それがおさ、5人で弥勒菩薩様にお会いしました。」


「な、な、なっ、なんじゃとうっ。」


「父上っ、声がっ。」


「すまぬ、続けてくれ。」


「我ら5人、弥勒菩薩様から不思議な力を、授かりました。それと大きな馬を5頭。馬は目立ちますので、山小屋に隠しております。


 小太郎様は、なんですか我らの子孫の知恵だか知識を授かったようでございます。

 某それがしは馬と医術の知識を。金太郎は武威の力を。銀次郎はよく分かりませぬが、遠目とか。源三郎殿は鍛冶師の知識を授かったようにございます。」


「して、なにもお告げなさらんだのか。」


「この戦乱の世で殺される、か弱き女子供達を救えと。我ら4人で小太郎様を助け、成し遂げよとの、お告げでございました。」


「 · · · 何と言うことであろうか。そのようなこと、成せるのであろうか。」


「父上、今すぐできなくても、今からできることやって、成し遂げなければなりません。

 弥勒菩薩様は、いつも見守っていてくださると申されました。」


「そうか、そうじゃの。弥勒菩薩様は小太郎を助けよと、お告げになったのじゃな。

 ならば小太郎、策はあるのか。」


「あります。弥勒菩薩様は、大きな馬を授けてくださいました。これは騎馬武者を作れということです。馬を増やし馬術を磨き、馬での戦いをする軍勢を作りましょう。

 そのためには、銭が必要です。俺には銭を稼ぐ知恵を授かっています。

 それから、源爺が授かった鍛冶師の技は、今までにない、強力な武器を作れとのことと思います。

 明日からはまず銭を稼ぎ、村を、いや一族を豊かにします。豊かさが伝わったあかつきには、我らの使命を打ち明けて、皆の助力を乞いましょう。」


「そんな話ができるとは、本当に知恵と知識を授かったのじゃな。小太郎、この父もできる限りのことをやる。しっかり皆を率いるのじゃぞ。」




 この年、甲相駿三国同盟が結ばれ、暫く平穏な時期が訪れる。そしてその間に俺達は飛躍するための力を蓄えようとしていた。










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