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第3話 死亡

 テスト期間です。私はアホですね。

 世の中はセンター試験だったそうです。私、何やってんでしょう

 王様は城下町に、と言ってたけど、叶うことならこの世界を見て回りたいな。まあその前に今夜どこで寝るかって問題があるんだけど……。


 「まあとりあえずは服だよね。」


 当たり前だけど周りを見ても現代日本のような服を着ている人はいない。そんな中に学ランを着た男子がいれば目立ってしょうがない。幸いにも、夜中ではあるが活気がすごいため、少し服屋を探してみることにした。

 ちなみに全てが露店で、商品が無造作に置かれている。スラム街に近い商店街とかこんなイメージがあるかな。まあ元の世界の外国事情とかよく知らないから本当にイメージだけの話なんだけど。


 「えーっと服屋は……っとここは……全体的にピンク色だ……。女性服しか売ってないかな?一応見てみようかな。」

 「いらっしゃい、見て行ってね。」


 店主と思わしき年配の女性に声をかけられた。んー、服を選ぶのって苦手なんだよなあ。自分に合う服がどういう系統のやつかよくわかんないし。ていうか正直どうでもいいし。見栄え悪くなければ。


 「君は……男の子?」

 「あ、はい。そうですけど……。」

 「ごめんねぇ、あまりに可愛いもんだから、ちょっと分からなくなっちゃって。」


 かわっ……まあ元の世界にいた時からずっとそう言われてはいたけど……。男なのに。


 「じゃあ、こんな服なんかどう?」


 そういって差し出されたのは裾からわき腹辺りまでが開いていて、ひもで調節できる薄緑のTシャツだった。だけど……。


 「これ、僕の身長に合わないような……。少し大きくないですか?」

 「大丈夫大丈夫!袖は曲げればいいし、裾は少しでも長くてもいいから!」

 「ま、まあ、それはそうですけど。」

 「ほら、持っていきなさい!」

 「ちょっと相場がわからないんですけど……どれくらい払えばいいですか?」


 もらった皮袋を見るが、すべてが似たような金貨だった。これ、もしかしたら財布に1万円しか入ってないような感じなんじゃ……。


 「銀貨2枚ってところだね!」

 「これで払えます?」

 「うわっ!あんた大金持ちじゃないか!あんまり人前で出すんじゃないよ!でもそれじゃあおつりが渡せないねえ。」


 金貨はあまりにも価値が大きいようで、露店ではおつりの用意がないのだろう。おばさんには申し訳ないことするなあ。


 「おつりはいりません。」

 「いいのかい?じゃあお言葉に甘えようかねえ!でもそうなるとこれだけじゃあ悪いから、これも付けたげるよ!」


 差し出されたのは革で作られた折り畳み式の財布だった。


 「えぇっ!い、いいんですか?ありがとうございます!」

 「その金貨、バレないようにね!」


 優しい人だなぁ。いやまあそもそも大きい金額を出しだのは僕なんだけど。それでも嬉しいものは嬉しい。財布をもらえるのはありがたい。人前でこの革袋はあんまり出したくないからな。


 「そうだ、もしおつりをいただけるなら、銀貨で何枚になるんですか?」

 「銀貨2枚の物を金貨で買うから……。おつりは銀貨48になるねぇ。うちにそんな量はないから出せないけど……。ごめんねぇ。」


 これで金貨と銀貨の関係はわかった。銀貨50枚が金貨1枚相当ってことが。でも振れ幅大きいなあ。銀貨十枚分の貨幣とかなかったのかな。


 「ああいや、いいんです。それよりも財布、ありがとうございます。大切に使わせていただきます。」

 「よく使ってくれるならその財布も本望だろうさ!じゃあこれ、商品ね!それじゃあね!」

 「はい!ありがとうございました!」


 服屋を離れて混雑した道を進む。

 いい収穫だった。服は手に入れたし、財布ももらえた。これで目立たなくなるはずだ。早速着替えたいところだけどどこで着替えようか。やっぱり宿とか取らなきゃダメだよなあ。さっきの人にこの辺の宿も聞いておけばよかった……。

 野宿しようにもできそうな場所は見当たらないし……。もしそうするなら一回王都出なきゃまずいよなあ。


 「ん~、どうしよ。」


 考えながら歩いても答えは出ない。他人に声をかける勇気はないし、いっそのこと王都から出よう。で、野宿するんだ。路地裏で寝るのは何があるか分からないから、まだ人が少ないだろう野外で寝たほうがマシだ。さて、じゃあ王都の外を目指すことにしよう!


                 ☆・☆・☆


 あれから結構歩いた。体感にして2時間くらい歩いた。もちろん体感だからそんなに歩いてない可能性の方が高いけど。


 「やっと門まで来たよ……。」


 ここまで遠かった……。一直線に歩いただけだけどさ……。疲れたなあ……。でも現代日本じゃ二時間とかそうそう歩かないし、そもそも僕体力ないし。

 まあここまで来たら出るだけだよね。


 「おい坊主!こんな夜中に子供一人でどこ行く気だ!」

 「ひゃいっ!?ぼ、僕のことですか?」


 へ、兵士さん……。別に城の中にしかいないわけじゃないんだ。……当たり前か。王都を守るためにこの人たちも頑張ってるんだから。

 声をかけてきた兵士さんの右目には縦に斬られたように傷がつけられていて、開けることができないようだった。ヒゲもはえているが整えられている。イケオジってこういう人のことを言うんだなあ。


 「お前以外どこに子供がいるってんだ。家出か?親御さんが心配するから早く帰りな。」

 「いやっ!僕っ!帰れる場所とかなくて!当てのない旅を続けてる……なんていうか!流浪の旅人で!ここでの用も済んだから早めに出ようと思って!子供に見えますけど!そうでもないんで!失礼しますね!」


 とっさのことで嘘をついてしまった。これじゃむしろ怪しさ満々だって……。めちゃめちゃ汗かいてるなあこれ。


 「あー、わかったわかった!嘘でもどうでもいいから行く前にプレート見せろ!」

 「プレートって……ステータスプレート(これ)ですか?でもなんで……。」

 「通行証代わりだ、通行証代わり。……っと、これは……。ステータス(ひっく)いなー、坊主。ここらじゃ見ねえ名前だし、苗字もある。旅人ってのは本当らしいな。しかもスキルも()()()()か。出るのはいいが、どうなっても知らんぞ?」


 ステータスが低いのはわかってるから言うのは勘弁してほしいなあ……。ん?スキルが二つだけ?僕自身見えないのが3つ、後は絆と言語理解の二つ……。てことは僕が見えてないスキルは他の人には見えてない……?


 「あの……5つじゃないんですか?」

 「5つ?何言ってんだ、2つしか映ってねえよ。この親友の絆ってやつと言語理解だな。」


 間違いない、あのわからないスキルはほかの人には見えてないんだ。結局何なんだろあれ。


 「すいません、ありがとうございます。」

 「この時間外は危ねえぞ。それでも行くのか?」

 「大丈夫です。それでは。」

 「忠告はしたからなー!」


 やっと外に出れるよ……。いろいろ言われたけど、まあ大丈夫でしょ!


                 ☆・☆・☆


 門の前には一直線に道が広がっており、その両側に芝生が広がっていた。そして少し左側を見るとちょっとした林が広がっていた。こうなってたんだ。


 「あの林で根っこを枕に寝ようかな。ちょっと痛いだろうけど……。」


 そうだ、僕は寝るために外に出たんだ。……あれ?あの兵士さんに宿の場所聞けばよかったような……。


 「まあもう遅いからいいけど……。」


 林の中に入り、どうにか眠れそうな根っこを探す。あ、そういえば着替えてないや。……疲れたし明日でいいや。


 「ん、これとかちょうどいいかな。」


 よさそうな根っこを見つけ、荷物を置いて、横になろうと腰を下ろした瞬間だった。


 「一人でこんなところに来るとか、どんだけ用心してないんだよあんた。」


 突然男の声が聞こえてきた。


 「誰!?」

 「ん~?俺か?まあ……強盗?お前さ、金持ってんだろ?よこせや。」


 声の主は下卑た笑いを浮かべながら近づいてきた。周囲の暗闇のせいで口元以外は見えない。声質からしてそんなに高齢とは思えないが、正直なところよくわからない。長い棒のようなものを持っているように見える。

 怖い。背中がぞくぞくしてくる。体感温度が低くなった気がする。


 「よ、よこせって言われてあげるわけないじゃん。」

 「そりゃそうだ。じゃ、殺す。」


 一瞬の出来事だった。男が担いでいた棒に……槍に、刺された、のだと思う。左胸に痛みが、遅れてやってくる。


 「……え?」

 「……恨むなよ。生きるにゃ金が必要なんだ。」


 だんだん冷たくなっていく体温。薄れていく意識。むしろ心臓を刺されてここまで意識を保ったのが自分でも驚きだ。

 そうして僕の人生は断たれた。


 ……ごめん、勇。


 ……死にたくないよお……。


                 ☆・☆・☆


 「おや?あなたがここに来るのは久しぶりですね。どうしたのですか?」


 気が付くと僕は白い背景の中にいた。そこには一人、ぽつんと立っているドレスを着た女性がいる。間違いない、僕はここに来たことがるある。()()()のことは、はっきりと覚えている。


 「何で、ここに。」

 「ん?死にかけた、のでしょう?」

 「ぼ、僕は……。いや、死んだはずなのに。」


 覚えている。ここは僕が死にかけた時に、なぜか来る場所だ。何でここに来るのかは、今でもわかっていない。


 「死んだ?ここに来たということは、まだ死んでいないということです。」

 「それはわかってますけど……。でも実際、僕の胸に槍が……。」

 「槍?現代社会でそんなものに貫かれるわけないでしょう?」

 「あ、知らないんですね。」


 女性にこれまでの経緯を説明した。確かに召喚される前に槍に貫かれることなんてない。

 ……この人は僕のことを深く知ってるわけじゃないんだ。


 「なるほど、そのようなことが。それは難儀でしたね。それならば槍で貫かれたというのも嘘ではないのでしょう。しかしあなたがここにいるのもまた事実。あなたはまだ、生きていますよ。」

 「それもそう……ですね。それじゃあ、失礼します。」

 「ええ、貴方とはもう会わないことを、わたしは切に願っています。」


 肉体に意識が浮上するのを感じる。今までの会話が嘘だったように。

 ……そうだ、あの人に名前を聞き損ねた。まあ、今しがたこの世界の過酷さを身をもって体感したところだ。そう遠くないうちに会うことになる気がする。まあ、会わないならそれが一番いいんだけど。


                 ☆・☆・☆


 「ん、んぅ……。」


 目を覚ますと、先程寝ようとしたあの林の中にいた。男はおらず、リュックの口が開いていた。


 「チャックちょっと壊れてるし……。」


 案の定金貨の入った革袋は盗まれており、持ってきた教科書と文房具、それに買った服と財布は残っていた。ただ純粋にお金が欲しかっただけらしい。いや、他の物は売り物にならないとか?

 どっちみち無一文になったことは確かだ。


 「これからどうしよ……。」


 そういえば僕はあの時、確実に死んだはずなのだ。プレートにヒントが何か書かれているかもしれない。

 そう思い見てみたのだが……。

________________________

古川翔 《愚か者》 Lv.0

HP 200 攻撃 200 防御 100

魔力 0 魔法防御 200 筋力 100

スキル

禍成長  :死亡時に閲覧可能。レベルが下がるよう

      になり、下がるほどステータスが成長す

      る。通常よりステータスが上がりやすく

      なる。死に至る時レベルが下がる。

不滅の肉体:死亡時に閲覧可能。望む限り、その肉体

      が壊れることはない。

不屈の精神:死亡時に閲覧可能。望む限り、その精神

      が折れることはない。

言語理解 :この世のあらゆる言語が理解できる。

親友との絆:遠くにいる親友の生死が判別できる他、

      親友と共に戦うとステータスの実数値に

      2倍の補正がかかる。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ステータスがそれぞれ二倍に上がっている。それに見れなかったスキルが見れるようになっている。禍成長、不滅の肉体、不屈の精神か。

 禍成長はつまり……。普通に成長しなくなるってことか……。レベルが下がれば下がるほどステータスが上がって、ステータスの伸びが良くなると。で、死ぬ瞬間にレベルが下がるのか。

 不滅の肉体と不屈の精神は見ての通りだね。精神(こころ)肉体(からだ)が死ぬことはない、と。あれ?でもこれ禍成長でレベル下がらなくなるんじゃ……。いや、この時点でレベルが下がってるから死にかけた時にも適用されるのかな。死ぬ瞬間ってそういうことか。

 これは……。


 「修羅の道が待ってそう……。」


 簡単に言うと、「死ね」ってことだ。殺される感覚は知っている。あの日に一度、そしてさっきの男で2度目だ。レベルとステータスを見るに、さっきは本当に殺されたのだろう。

 ふと気づいた。今まで見ていなかったけど、学生服には左胸に穴が開いていて、べたべたしている。その奥、つまり胸のあたりを確認するが、槍に貫かれたことなどなかったかのようにふさがっていた。体はすべてが元に戻るのか……。望む限り壊れないってことは、死んで治って蘇るってことなのかな?

 ……ん~、考えてもよくわからないから、寝よう!あの男にはいつか仕返しするとして、今日はもう寝るんだ!今日は何も考えたくない!とりあえず明日のことは明日の僕が何とかするさ!

誤字脱字等報告お願いいたします。

面白かったらブクマ、評価、感想お願いします。

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