表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

第1話 召喚

息抜きに異世界召喚ものも書いてみます。

 ピンポーン。

 家のチャイムがなる。今は朝の7時半。普通なら迷惑になる時間帯だけど、僕の家ではそうじゃない。


 「はーい。」

 「よっ!(しょう)、おはよう。」

 「うん、おはよう、(ゆう)。」


 幼馴染の勇は毎朝迎えに来る。小さい頃、どっちが早く迎えに行けるか勝負しよう、という話になって、それをきっかけに今でも続いている。もっとも、高校2年になった今でも勇に勝てた試しはない。


 「行ってきまーす!」

 「気をつけなさいよー。」

 「わかってるー。」


 今日は月曜日。土日の休日感覚が抜けておらず、眠い上に少し辛い。

 週始めの学校なんかそんなものだ。


 「ふ、ぁ〜。」

 「大欠伸だね、勇。昨日夜遅くまで起きてた?」

 「ああ、ゲームしてた。久しぶりに稽古休みだったからちょっとハッスルしすぎちゃって。」


 勇は物心ついた時には剣道を始めていて、今までにかなりの数の賞を取っている。

 それだけじゃない。僕の幼馴染は成績優秀、運動神経抜群、眉目秀麗と3拍子揃ったすごいやつで、僕の自慢の大親友だ。なんで学力は平均程度で筋力・体力が平均以下の僕と一緒にいてくれるかわからないレベルで。

 だけど僕はそのことがたまらなく嬉しい。僕の大親友は、同じように僕のことを大親友だと思ってくれている気がして。

 勇は女子によくモテるから、一番近くにいる僕はよく嫉妬されてる。みんな可愛いから許すって言うけど、僕男なんだけどなあ……。


 「翔?どうした?」

 「え?あ、ああ、何でもないよ!ただ、勇が親友でよかったなって思ってさ。」

 「そんなこと思ってくれてたのか!俺もだよ!翔が親友でよかったなあ。」


 勇は昔から嘘がつけないやつだと知っている。やっぱり勇もそう思ってくれてるのか。


 「なあ翔、あの人、道に迷ってんのかな?」


 勇が指差す先には、地図を片手に広げて傍にキャリーバッグを置いた、体格がしっかりした男性がいた。道を確認しているため、きっとそうなのだろう。


 「そうだと思うけど。話しかけるの?」

 「んー……まあ別に時間はあるし、違ったらそれでいいし。先行っててもいいぜ?」

 「いや、いいよ。」


 家を出たのが7時半、8時10分には学校に着いていなければならないが、そもそも20分で着くため時間には余裕がある。地図を見ながらの道案内くらいならば影響はないだろう。


 「どうしましたか?」

 「ん?ああ、 道に迷ってしまいまして。……この住所に行きたいのですが、地図を読むのが下手でして。」


 男性はスマホの画面に住所を映し出し、聞いた。


 「地図に線を描きますが大丈夫ですか?」

 「ええ、大丈夫です。」

 「その住所なら地図のこの辺りですね。こう……いう……風に行けば着くと思います。だから……あっちの道です。」

 「すみません、助かりました。ありがとうございます。」

 「いいえ、お気になさらず。それでは……。」


 地面が突然光りだす。あまり詳しくはないけど、この形はよくいう魔法陣というものではないだろうか?この世に生を受けて17年、こんなものは見たことがない。


 「勇!誰かのイタズラかな!?」

 「だといいけどほら、空間にもなんか帯見ないなのが出てきてるって!これ普通じゃないよ!」

 「なんだこれ!っ……!外に出られない!どうなってるんだ!」


 三者三様に焦りだす。そういえばクラスメイトが言ってたっけ。異世界召喚とかなんとかの話があるって。1冊だけ借りて読んだけど、その始まり方がこんな感じだった。緊急事態にこんなことしか考えられないとか、我ながらなんて楽観的な……。

 だんだん空間が揺れていって、景色が歪んでいく。


 気付いた時には神殿のような場所にいた。

 大理石でできたような床に赤いカーペットが敷かれている。周りには大勢の人がいて、日本では見かけないような服を着ている。一段上がった場所にある祭壇には胸にナイフを突き立てられた女性が寝そべっており、その顔は穏やかだったが、目から涙が流れた跡があった。僕たちは壁の上部、丸いステンドグラスから溢れる光を浴びていた。


 「おお!召喚の儀式は成功だ!」


 祭壇の前にいる一際偉そうな人がそう言ったのを皮切りに、周りの人が悲鳴にも近い歓声をあげた。


 「ここはどこよ!」


 そして、この状況に遭ったのは僕たち3人だけではないらしかった。

 僕たちと同じように、飲み込めていない人たちがほかに2グループある。僕たちが声をかけた男性と、もう一人の男性以外はみんな制服を着ていて、1つのグループは男女、もう1つのグループは女子が2人だった。今の声は男女グループの女子だ。


 「まあまあ、落ち着いて。」

 「これで落ち着いていられるもんですか!むしろなんでお兄ちゃんは平気なの!?」


 男女グループは兄妹なのかな。


 「ここはまさか!異世界!?テンション上がるゥ〜⤴︎」

 「ウゥ……。恥ずかしいからやめてよぉ!」


 こっちの二人は友達同士か。

 僕たちがパニックになって騒ぎだす中、勇が立ち上がった。


 「説明を求めます。私たちはなぜここにいるのでしょう?」

 「そうだな。お主たちには説明せねばならん。あれを持て!」


 偉そうな人が手を2回鳴らすと、鎧を着た騎士っぽい人がスマホくらいの大きさの薄い板を持ってくる。金属製のように見える。


 「触りさえすれば魔力が流れる。自分の今の能力がわかるものとなっておる。便宜上ステータスプレート、と読んでいる。」


 触った途端に板が緑と白が混ざったような色で光り始める。

________________________

古川翔 《愚か者》 Lv.1

HP 100 攻撃 100 防御 50

魔力 0 魔法防御 100 筋力 50

スキル

※※※  :閲覧不可能。

※※※※※:閲覧不可能。

※※※※※:閲覧不可能。

言語理解 :この世のあらゆる言語が理解できる。

親友との絆:遠くにいる親友の生死が判別できる他、

      親友と共に戦うとステータスの実数値に

      2倍の補正がかかる。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ……これはもしかしなくても弱いんじゃないだろうか?魔力の意味はわからないけど0だし。愚か者って何。そもそも閲覧不可能って何だろう。言語理解があるから言葉が通じるわけか。なかったら意味わかってなかったかもしれないな。


 「……勇はどうだった?」

 「これ多分ヤバイ。見せちゃいけないやつ。」


 そう言いつつも僕には見せてくれた。

________________________

八代勇 《勇者》 Lv.1

HP 2000 攻撃 2000 防御 3000

魔力 1250 魔法防御 2500 筋力 1000

スキル

全属性魔法  :この世に存在するすべての魔法が使

        用可能になる。

剣術     :剣による攻撃の際、斬りやすさに補

        正がかかる。

ステータス操作:自分のステータスを、合計値以下に

        なるように振り分けられる。(表示

        中)

勇者の加護  :ステータスの実数値に2倍の補正がか

        かる。

親友との絆  :遠くにいる親友の生死が判別できる

        他、親友と共に戦うとステータスの

        実数値に2倍の補正がかかる。

言語理解   :この世のあらゆる言語が理解できる。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 これは確かにやばいんじゃないかな。数字が全部僕の20倍以上ある……。魔力は倍にできないけど。


 「君たちは私たちが異世界から呼び出した者たちだ。今私たちは魔族から侵攻を受けておる。それを阻止するためには君たちの力が必要だ。どうか力を貸して欲しい。」


 偉そうな人はふんぞりかえったままそう言った。僕は……。


          ☆・☆・☆


 僕たちはとりあえず全員大部屋に移された。詳しい説明は後ほど、ということらしい。


 「えーっと……。自己紹介、しませんか?」


 勇はすごいなあ。こんな時に一番最初に口を開けるなんて。僕にはできないや。

 どうやらみんな賛成なようだ。もちろん僕も。


 「じゃあ、言い出しっぺの俺から時計回りに。コホンッ!俺は八代(やしろ)勇です。よろしくお願いします。」

 「僕は勇の幼馴染の古川(ふるかわ)翔です。よろしくお願いします。」

 「私!は!荒木(あらき)藍那(あいな)です!よろしくぅ⤴︎!」

 「あいなぁ……恥ずかしいからやめなって……はぁ……。私は内藤(ないとう)柊叶(しゅうか)です。」

 「俺は復田(ふくだ)健治けんじ。で、こっちが妹の……。」

 「自分で言うから!もう……!アタシは癒衣(ゆい)!よろしく!」

 「私は(たなうら)(けん)です。よろしくお願いします。」


 一通り自己紹介が終わったあと、それぞれのステータスを見ることになった。

 みんなやっぱり僕より高かった。局所的に勇より高いステータスを持つ人もいた。それでも大体の平均はそれぞれが500を超えるくらいだろう。ここの人たちがどれくらいかはわからないけど、僕はもう嫌な予感がしている。勇はステータス操作のスキルで少なめに見せていた。

 ……帰れるかなあ。

誤字脱字等報告お願いします。

感想・評価・ブックマーク頂ければ喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ