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なろうラジオ大賞応募短編集

異世界ガチャ重課金者の妖怪たちは、賢者の出現を待ち望む

作者: 砂礫零

 巷の噂では、猫又が『もふスタ異世界ガチャ』に重課金しているとか。


「どうしてだ?」妖狐が尋ねた。


「もふもふを全種集めて、もふり返してやりたいのさ」


 飼い猫であった頃に散々もふられた猫又ならではの願望であろう。


「なら」と妖狐。

「スタイリッシュなのが出たら売ってくれ」

「いいぜ」


 かくして妖怪間の取引は成立し、ガチャ重課金はますます加速した。

 同じキャラが何人も出るので仕方がないのだ。


「もふもふの悪役令嬢は良い」と猫又。


 人目がある場ではツンツンしている割に2人きりになるともふられたがるのが可愛いので、何人いてもかまわない。


 だが、と溜め息をつく。


「もふもふのおっさんは困るんだ」


 いわゆるハズレ、である。


 妖狐もまた、言った。


「スタイリッシュなおっさんは良い」


 イロイロな制服が似合う上に、キビキビとした動作も美しければ働きぶりも文句ない。


 だが、と溜め息をつく。


「スタイリッシュな悪役令嬢は困るんだ」


 彼女らの特技は舌鋒鋭く他人の欠点を突くことである。


「もふもふの怪盗はどうだい?」


 猫又の口から、ふぅぅぅ、と重い溜め息が漏れ、割れた尻尾が不機嫌に揺れた。


「可愛いさ。文句なく可愛いとも。あれはもふもふを纏った小悪魔だ」


「いいじゃないか」


「動きが素早すぎて、何人いても、誰も全然もふらせてくれないんだ」


 おかげで溜まるフラストレーション。

 代わりに悪役令嬢をもふりすぎたせいで、彼女らからも若干嫌われ気味である。


「で、スタイリッシュな怪盗の方はどうだい?」


 妖狐の口から、ふぅぅぅ、と重い溜め息が漏れ、九本の尻尾が不機嫌に揺れた。


「美しいさ。文句なく美しいとも。あれは、まさに生ける迦陵頻伽(ハーピィ)だ」


「いいじゃないか」


「スタイリッシュなおっさんたちの金とハートをごっそり盗み取るせいで、人間関係のゴタゴタが絶えないんだ」


 おかげで溜まるフラストレーション。

 代わりに悪役令嬢に仲裁を頼んでみれば、おっさんも怪盗も共に論理正しく責め立てられ、確かに若干仲直りしたようだ。

 しかし何故か、おっさんも怪盗も共にスタイリッシュ度が若干減って、どこかくすんでしまったのだった。


 猫又と妖狐は同時に溜め息を吐いた。


「あとは賢者さえ出れば……」


(きっと、もふもふの賢者なら怪盗をもふる良い手段を知っているに違いない)


(きっと、スタイリッシュな賢者なら彼らのスタイリッシュさを輝かせる良い手段を知っているに違いない)


 重課金は、まだまだ加速しそうである―――


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