第7章 王家の墓突入!
【王家の墓】――
平原のど真ん中に、巨大な、何メートルもある岩石がどんと置かれてある。その石のふもとに、立派な鉄構えの門扉が取り付けられていた。
「この扉の向こうに、我がディヨルド王家の墓。そして『癒やしの杖』が眠っている洞窟があるはずです」
と、ルティナ姫が言った。
移動魔法でここまで来られたら楽だったんだが――
ルティナ姫はここに来たことがなかったので、歩いてくるしかなかったのだ。
「この扉は、どうやったら開くんだ? 鍵でもあるのか?」
「いえ。この扉は王家の者が祈りを捧げることで開くはずです。少々お待ちください。…………」
ルティナ姫は、両手を縦に重ねた。
そして目をつぶって、何事かを唱え始めたのだ。――すると、
ず、ず、ず……ずん……。
重厚な扉が、音を立てて奥のほうへと開いていった。
魔法に近いなにかがかけられていたのか? とにかくこれで中に入れるな。
「しかし中はやっぱり暗いな。炎の魔法を明かりしながら進むか」
「エルド、それには及ばない。ちゃんとたいまつを用意してきている」
「おっ、さすがアイネス。準備がいいな」
「ふふん。洞窟に入ると知っていたのだから当然だ」
「…………」
「ん? ……どうした、ルティナ姫?」
ドヤ顔で、道具袋からたいまつを取り出したアイネスとは対照的に、ルティナ姫はなんだかふくれっ面だ。
「……エルド様。アイネスも。ふたりはいつの間に、そんなに仲良しこよしになったのです?」
「え?」
「な、仲良し? ……い、いいえ! いえいえいえいえ。そ、そんなことは! そんなことはありません! ございませんとも、姫様! 私とエルドがそんなに仲良しだなんて、そんな、そんにゃっ!」
「噛んでるじゃないの! ほら、もう。そういうところが仲良しっていうの! ……油断もスキもないんだから……。わたしのほうがエルド様と先にお会いしたのに、もうっ――(ゴン!)あいたっ!」
「ひ、姫様っ!」
ブツブツ言いながら、ルティナ姫は露骨に不機嫌そう、というかちょっと寂しそうに【王家の墓】に入っていき――ごっつん。
暗闇の中で、いきなり壁にひたいをぶつけてしまった。
「あーあーあー、中は真っ暗なのに、勢いよく入っていくからだぜ」
「そうです、姫様。私が先頭に立って、たいまつで道を照らしますから、あとに続いてください。エルド、お前は最後尾を頼む。ほら、これがお前の分のたいまつだ」
「お、ありがと。よし、じゃあ後ろは任されたぜ」
「~~~~っ、だからなんですか、その息の合い方は! 寂しいですっ! 私もエルド様と力を合わせたいのに! アイネスの馬鹿ぁ!」
「ば、馬鹿って言われた。……馬鹿なんて、ひどぃ……」
ルティナ姫はちょっと泣きそうな感じになり、アイネスは明らかに落ち込む。
魔法戦士ですがパーティーの雰囲気が最悪です。
いや、だけどこういうの、ちょっと冒険って感じじゃね?
仲たがいしながらも進む一行。いいなぁ、こういうの、俺やってみたかったんだ。ケンカや対立を乗り越えてダンジョンをクリアするっていいじゃないか。王道って感じ?
ふふふ、ちょっとワクワクしてきたぜ!
『……アホか、そなたは』
墓の中は、扉がしっかりと閉められていただけあって、人気もなければモンスターもおらず、俺たちはどんどん奥へと進んでいった。
入るときは不機嫌だったルティナ姫も、へこんでいたアイネスも、進むと同時に自然と機嫌を治していき、道が狭いときや暗いときはお互いに手を取り合い、助け合いながら進んでいく。
まあ、元より仲はいいふたりだ。
ケンカしたといっても大したことはない。
そういえばここに来る途中に聞いたが、アイネスはディヨルド王国に代々仕える騎士の娘で、いまは亡き父親と共に王宮にやってきたとき、ルティナ姫と遊んだりしていたらしい。いわゆる幼馴染だな。このふたり、身分は違えど仲良しなのはそういうわけなんだな。
で、洞窟の中をどんどん進んでいくと、
「おお」
「わぁ」
「ほう」
ぼんやりと、蒼白く光る空間に出た。
人間何十人かが入って、球遊びでもできそうなほど広がっているその空間。
中に足を踏み入れると、たいまつなしでも、ルティナ姫たちの顔が見える。この場所全体が光っているのだ。魔法の光だな。わずかだが魔法力を部屋全体から感じるぞ。
「なんつーか、終点って感じだな」
そう言って先に進んでいくと、俺の身長の3倍はある、大きな石碑が建っている。
碑の表面には、字らしきものが掘られていた。かすれていてよく読めないが、墓、の文字がうっすらと見える。
「これが王家の墓かな?」
「おそらくは。わたしのご先祖様の遺体が、この石碑のふもとに埋められているはずです」
そう言ってから、ルティナ姫は石碑に向けて祈りを捧げる。
ご先祖様が眠っているなら、そりゃ子孫としてはあいさつをしたいよな。
ちなみに俺の先祖は由緒正しい農民であり、先祖の名前などじいさんばあさんまでしか分からない。庶民なんて、そんなもんだよ?
「ところで姫様。王様のための【癒やしの杖】はどこにあるか、ご存知ですか?」
「この部屋のどこかにあるはずだけど」
「手分けして探してみるか」
「そうだな。……私のカンでは、この墓の裏手のあたりにありそうな――」
と、アイネスが墓の裏手に回り込もうとした、そのときだ。
<無礼者!!>
「え?」
どこからか、くぐもったような声が聞こえてきた。
かと思うと――ばっしゃーん!!
「あ、っぷ!?」
「「アイネス!!」」
天井から、滝のような勢いの水が流れてきて、アイネスは脳天からまともにその水を喰らってしまった。
水とはいえ、勢いがつけばちょっとした威力だ。アイネスはそのまま気絶したらしく、白目を剥いて、その場に突っ伏してしまった。
「アイネス! しっかりして、アイネスッ!!」
「くそっ、誰だ! 姿をあらわせ!!」
俺は、姿も見えない何者かに向かって怒号をあげた。
ここまでモンスターとまるで出くわさなかったが、ここに来て敵襲か!?