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第9章 エッチなしたぎとかいう防御力にどれほどの貢献があるのか分からないなにか

<や、や、やめてあそばせ! もうあげるっ! あげちゃうっ! 『癒やしの杖』でもなんでもさしあげますから、勘弁してくださいませ!!>


 ローザ・ディヨルドは幽霊のくせに涙目になって叫んだ。

 なんだか、あっさりと終わっちゃったな。だいたい、なにをそんなに驚いてるんだか。俺、大したことしてないのに。


 ともあれローザ・ディヨルドがくれるというので、俺は墓の前にあった宝箱を開く。




 癒やしの杖を手に入れた!




 樫の木でできた杖の先端に、朱色に染まったこぶし大の石が取り付けられている。

 宝石のようにも輝いているその石は、魔石だ。魔法の力が込められている石なのだ。


「確かに癒やしの杖のようだな。魔法の力を感じるぜ」


<あ、当たり前ですわ。わたくし、嘘はつきません。し、しかし、なんという力ですか、あなたは……>


「ご先祖様、エルド様の本気はあんなものではありません。その気になればあの何十倍もの威力を出せるでしょう」


<そ、そんな。……なんというパワー……。エルド、あなたは天才としか言いようがありません>


 ディヨルド王家の女性たちは、ふたりでなにやら会話を交わしていたが……

 そんなことより、アイネスを気絶から回復させてやろう。

 それ、回復魔法ポアルっと。


「……ん、あン……」


 アイネスが、ピク、と体を弾ませる。

 いいぞ、回復してきているらしい。


<――にしてもさすがですわねー、我が子孫。こんな強い男を仲間にしてしまうなんて。……で、実際のところはどこまでいっているの? もう付き合っていますの? あるいはもう婚約とかしちゃったりして>


「な、な、なにをおっしゃいますか、ご先祖様! わたしとエルド様は、そんな、そんな、そういう仲じゃありませんっ! プラトニックです! 清純派ですっ! だってだって、わたしたち、交換日記さえしたことないですし……!!」


<な~にカマトトぶっちゃっていますのこの子孫! このこのっ。服の下にそれほどくっきりしっかりしたエロ下着装備しておいてっ!!>


「え。……あ、あああっ! ち、ち、違います、これは、これはっ!」


 なんかえらく騒いでるな、ルティナ姫とローザ・ディヨルド。

 アイネスの治療に専念していた俺だったが、後ろがあまりに騒がしいのでちらりと振り返った。

 ルティナ姫が、耳まで真っ赤になっている。そしてその服装は、俺が買った例の皮のドレスなのだが――


 先ほど、ローザ・ディヨルドから水魔法の攻撃を食らったせいだろう。ドレスはびちゃびちゃに濡れていた。そしてその下に彼女が装備している『エッチなしたぎ』がモロに透けて見えている。赤を基調とした妖艶な雰囲気の漂うその上下の下着は、ふくよかなルティナ姫の胸部とむっちりとした下半身をいたわるように覆っていて――


「こ、こ、これは、違うのです。実はその、下着を買おうとしたらそのときたまたまサイズの合う下着が売っていなくてっ。だから仕方なくこの下着をですね!」


<な~るほど、確かにそれだけおっぱいがでかかったらなかなか合う下着はないでしょうねえ。……でもでも、我が子孫。本当にそれだけ? サイズだけが理由でそんなエッロい下着を買っちゃったのかな? かなかな?>


「……それは………………ちょっとだけ、その……期待を……」


<ほ~らご覧なさい、内心しっかりムッツリじゃございませんか、このエロ姫様!!>


 なんかえらく盛り上がっているようだが、とりあえずアイネスが「う~ん」なんて言いながら、目覚めの兆しを見せたので、俺は彼女の治癒作業にいっそう専念した。――しかし、ルティナ姫たちの会話はうっすら聞こえてきている。期待? 期待ってなんだ? ……そういえばあの山奥の村に泊まったとき、夜中にギンギラギンな眼差しで、俺を見つめているルティナ姫の姿があった。あれは夢だと思っていたが、もしかして、


「なーんて、夢に決まってるよなあ。あれが本当ならルティナ姫、とんだエロ姫じゃん。……ほらアイネス、そろそろ起きろ。洞窟を出るぞ」


 独りごちながら、アイネスのほっぺたをつんつんとつつく。

 案外ぷにぷにだな、この子のほっぺ。


『……エロ姫じゃろ、その娘は……。……まさか初代勇者の王宮の者が、エロ姫様にチョロ騎士とは……』


 また時の宝玉が雑音を発したが、俺にはまったく聞こえなかった。

 リプリカ様、なんで言ってんのかなー。




 というわけで【王家の墓】で杖を手に入れた俺たちは、洞窟を出て外に出た。


<また来てくださいませ~。きっとですわよ~>


 帰り際、ローザ・ディヨルドはそんなことを言って手を振っていたが、まあたぶん、しばらく来ることはないだろうな。


「いくら王家の方といえ、いきなり水魔法で攻撃されるとは思わなかったぞ。まったく全身がぐちょぐちょだ」


 墓を出て、青空が見えるなり、アイネスはそんなことを言った。

 ドレスを着ていたルティナ姫と違って、皮の鎧を装備しているアイネスは下着が透けるみたいなことにはなっていない。その分、鎧の下が濡れまくっていて、気持ち悪いみたいだが。


「早く王宮に戻りたいものだ。王様の容態も気がかりだからな」


「もっともだ。それじゃ【ローベ】でさっさと帰るか」


「【ローベ】? ああ、お前が使える瞬間移動の魔法のことか」


「そうよ、アイネス。一瞬で知っている場所に移動できてしまうの。便利よね」


 言いながら、ルティナ姫は俺の右手をそっと手に取り、自分の肩に載せる。

 ぽっと、彼女は、顔を赤くした。


「あ、あの、これは……魔法のためですからね? みんなで瞬間移動するためには、身体のどこかに触っていないといけないと、以前に教わりましたか」


「そ、そうなのですか!? ということは私も、エルドと手をつなぐとか、肩に手を置くとかしないと……!? ……あ、あの、優しくしてくれよ……初めて、だから……」


「【ローベ】に優しくもくそもないぞ」


 てか、ルティナ姫もアイネスも、なんでやけに顔を赤くしてもじもじさせてんだ?

 まあいいや。とにかくディヨルド王宮に戻ろう。俺はふたりの肩に手を置いたまま、精神を集中させて魔法力を高め、そして移動魔法を使った。


「【ローベ】!」




「さ、着いたぞ」


 光に包まれた俺たち3人だったが、しかしすぐに光は霧散。

 そして目の前には、これまでとは違う景色が広がっていたのだ。

 目の前には、ディヨルド城下町の街並み。左右を見れば、山や森や草原が広がっている。そして振り返れば、そこにはディヨルド王宮がある。


「すごい……。本当に一瞬で移動できてしまった。エルド、お前の魔法はいったいどうなっているのだ?」


「だから、なんでそんなに驚いてるんだよ。別に大したことじゃねえんだって。それより王様に会いにいこうぜ」


 というわけで俺たちは王宮に入った。

 そこでは――

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