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第6ラウンド~見える妹~

「……もう一回聞く、すみれは和樹が見えるのか?」


俺のベッドでぼよんぼよんとジャンプをするすみれに、マーカーで顔を書いた紙袋を被る和樹を指さして聞く。

すみれは飛び跳ねるのを一旦やめ、顔に当たり前だと書いているかの様な口調で。


「そーだよ、かーくん以外にもいるけどね。」


かーくん……もとい和樹以外の幽霊が見えない俺には、実妹がバリバリ霊感があると知るだけで、天井からステンレス製のたらいを落とされたくらいの衝撃がくる。


「すみれ、それで危ない目にあったりしてないよな?」


おっと、俺はシスコンじゃないぞ。

これは下手すれば死ぬレベルの不運をぶちかまされた兄が、躊躇なく聞いても当然な質問だ。


「えーとね、変なおじさんに声をかけられた……。」


「ひぁっ!? なななななんで言わないんだよ!」


「……ら、ハゲじいがおじさんを交番につれてってくれたりしたよ。」


情報量が……俺の脳内で『実はバリバリ見える妹』『変なおじさん』『ハゲじい』という、世にも奇妙かつ理解できない登場人物がごちゃごちゃに……。


『おー、ハゲじいなら俺も知ってるよ。この町からくる不運な風に誘われて来てみて、一番最初にあった幽霊だ。』


不運な風に誘われて……俺の不運は風に乗るのか。

そして、ハゲじいの知名度が地味に気になるぞ。


「でね、変なおじさんが捕まったって、ニュースにもなったんだよ。」


ほう、変なおじさんの知名度も高い……ってそうじゃねぇ!


「その変なおじさんのニュース、いつやってたんだ!? それに、ハゲじいって誰!!」


『お兄ちゃん夜はしーっ、だよ。』


「兄ちゃん呼ぶな!」


こめかみに怒りマークを浮かべながらツッコむと、和樹は人差し指を口元に当てて目をパチパチ……こいつを構えばいつまで経っても話は進まない。

そうだ、俺が習得しようと頑張っている無視(スルースキル)の出番が今じゃないか!


「すみれ、話に戻るが……最初にまず、変なおじさんとは誰だ?」


「んーっとね、1年くらい前からこの町の周辺に出没し、幼女の後をつけまわる事だけを繰り返す男。最初の半年間は不審な動きをしているだけだったが、次第に声をかけられる幼女が増えた。声をかけられた幼女の母親に聞くと『娘が言うには……尊いっ、ああ天使ちゃん! ワタクシの女神(ミューズ)としてこれからも元気にお過ごしくださいませぇぇぇ!!……と、土下座をしながら言われたそうです。頭を外履き(泥付き)で蹴り飛ばして逃げてきました、犯人が捕まって良かったです。』と答えたようだ。」


「……どこ情報?」


「インターネットに書いてたの、暗記しちゃった。」


……そうか、うん。


「すみれ、その事は父さんと母さんに言ったのか?」


「んーん、ハゲじいの事は秘密だから言わなかった。」


……あ、ああ。


「分かった、だけど次からは俺には言えよ? 幽霊がらみの事は。」


「やったぁ! お母さんに幽霊のことを言ったときは、空想の友達だって頭をなでられたの。お兄ちゃんはしんじてくれるんだね!!」


ドンッと勢い良く膝の上へ突進されて、なんだか申し訳ない気持ちで一杯になった。

俺だって和樹と出会う前……二日前に幽霊の話をされたら、絶対に信じていなかっただろう。

空想ではないのに、現実なのに否定される事は辛いはずだ。


「すみれ、お兄ちゃんは信じる。すみれの言う事、信じるから……今日はもう遅い。母さんに見つかる前に寝な。」


「うん! あっ、しゅうくんちの最後のスイーツ、勝手に食べたのは妹じゃないからねっ。」


「信じるよー!」


食べたのはすみれじゃない……たとえ今日、学校から帰って来た時にすみれの口元にフィナンシェのカスみたいな物が付いていたとしても、俺は信じよう。


『俺は散歩してくる~。』


窓をすり抜けて外へ行ったが、未成年者が夜に出歩くのは……いや、享年が17歳だとしてもいつ死んだのかは分からないからツッコミはよそう。




今日は早めに布団に入り、電気を消した。

いい夢見れるといいな……。


「スースーフゴガッ……スースーフェックショォッイ……スー。」


夢……なんか、腹の上が重い……。


『ハゲじいじゃよ、ヒッヒッヒ。』


「ぎゃぁぁあっ!!?」


俺はせっかく寝付けたというのに、ハゲじいが夢に出てたせいで起きてしまった。


「……あ、ハゲじいの事、聞くの忘れた。」


『ワシならここにおるぞ。』


……俺の未熟な無視(スルースキル)は、真夜中に現れたハゲじいへの効果が無かった。


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